質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一七三号

伝統ある国産麦栽培を守るためのカラスムギによる雑草害対策の強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年七月三日

秋野 公造   


       参議院議長 平田 健二 殿



   伝統ある国産麦栽培を守るためのカラスムギによる雑草害対策の強化に関する質問主意書

 国産麦の栽培は、国民に長く親しまれてきた麦焼酎の製造には欠かせない伝統文化ともいうべきものであり、国としても地域振興のために、そして、文化を守るために引き続き力を入れるべき分野である。
 近年、茨城県や埼玉県等の麦畑においては、カラスムギによる雑草害が局所的に頻発し、カラスムギが発生した麦畑において麦の栽培を行う農家は深刻な被害を受けている。
 私も大分県豊後高田市でカラスムギの雑草害を受けた麦畑を調査したところであるが、収穫時においては機械にカラスムギが混入して機械が損傷を受けるだけでなく、収穫後に行われるカラスムギの混入を避けるための分別作業も極めて困難である。そもそも収穫前にカラスムギを抜去する手作業に農家は一平方メートルあたり一時間程度もかけているとのことであり、高齢化が進む農家にとっては極めて過重な負担となっている。
 カラスムギは麦とライフサイクルが類似しており、発芽後の麦とカラスムギの形態も類似していることから、初期の段階で両者を分別することは困難である。また、カラスムギの種子は地表から十センチメートル以上深層から発芽することができるため、除草剤が浸透できない畑の深層においては、カラスムギの種子に対する除草剤の効果は極めて限定的である。
 同様に、石灰窒素によりカラスムギの発芽を促進させて、畑で早期に発芽したものを刈り込む取組も、深層から遅れて発芽したカラスムギに対する効果は限定的である。
 このようにカラスムギによる雑草害への対応は困難を極め、トラクターを用いた鋤込みを行ったとしても種子を完全に除去できないことを考えると、唯一効果的な手法は一定期間畑に水を張り、種子を死滅させることしかないと思われる。
 さらに、カラスムギの種子が他の畑に混入した場合には、雑草害が拡大する可能性があることから、これまで個別の農家に対策が委ねられてきたことではあるが、集落全体の問題としても捉えていく必要がある。
 我が国の伝統産業ともいうべき国産麦の栽培を守るために、以下質問する。

一 カラスムギの種子が麦の生産ほ場へ侵入する原因について、政府の見解如何。

二 現時点において、カラスムギによる雑草害の拡大を防止する最も根本的かつ有効な手法は、生産ほ場に一定期間水を張ることと考えて良いか、政府の見解如何。

三 カラスムギによる雑草害の被害を受けている生産ほ場において有効な対策が採られない場合、雑草害は更に拡大しうることを想定しているか、政府の見解如何。

四 現状では、カラスムギによる雑草害を受けた生産ほ場でも収穫を行い、麦を分別して出荷することは可能と考える。しかしながら、カラスムギによる雑草害の拡大を防止するためには、個人の取組だけではなく、集落全体としての取組も必要であり、集落で話合い、対策を講じることが重要と考える。政府としても、カラスムギによる雑草害の拡大を防止する手法を検討し、生産現場に広く普及させるべきと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。