質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一五四号

地球深部探査船「ちきゅう」号を用いたメタンハイドレート採掘試験に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月二十日

秋野 公造   


       参議院議長 平田 健二 殿



   地球深部探査船「ちきゅう」号を用いたメタンハイドレート採掘試験に関する質問主意書

 我が国において、天然ガスは基幹エネルギーの一つであり、その長期的な安定供給の確保の重要性が高まっている。その中で、メタンハイドレートは、エネルギー資源に乏しい我が国にとって、エネルギー安全保障の観点からも、新エネルギー源として大きな可能性を秘めている。
 平成二十年三月に策定された「海洋基本計画」において、「いまだ商業化されていないメタンハイドレート及び海底熱水鉱床については、今後十年程度を目途に商業化を実現する」ことが目標として定められている。日本周辺海域のメタンハイドレート資源分布は、排他的経済水域内にあり、商業生産が実現すれば、エネルギーの長期的な安定供給の確保だけでなく、我が国が資源大国になることにより資源外交上優位な立場となる可能性がある。故に、メタンハイドレートの商業生産の実現に向けては、複数回の海洋掘削及び産出試験を集中的に実施して、産業界、大学、関係機関の英知を結集して課題の把握と克服を行える国家戦略上の本格的な体制強化が重要である。
 私は、昨年五月二十三日の決算委員会で、メタンハイドレートや沖縄近郊の熱水鉱床を発見した世界に誇る「ちきゅう」号を、優先的に国内の資源開発に活用すべきと質問し、文部科学大臣から「資源開発、まさに科学の発展のために寄与するために大変重要なものと思っています」との答弁があった。また、昨年七月七日の予算委員会で経済産業大臣は、「委員御指摘の沖縄海域の伊是名海穴等、これが重要な地点として選定をいたしまして、新たに来年の二月になりますと最新鋭の海洋調査船「白嶺」が就航いたしますので、この船を十全に活用してしっかり対応していきたい」との答弁もあった。そして、今回、「ちきゅう」号が愛知県知多半島の南方沖で海底掘削を実施したが、生産技術の研究実証を踏まえた技術整備を図る観点から、以下質問する。

一 次世代のエネルギー源の一つとして期待されるメタンハイドレートの海底掘削を本格的に実施するに当たって、平成二十年にカナダ陸上で行った産出試験で連続生産に成功したとされる減圧法を採用して実施すると聞いているが、水深八百メートルから千メートル下での減圧法による採掘の有用性を、現時点でどのように評価しているのか、政府の見解を示されたい。

二 平成二十年三月に策定された「海洋基本計画」において、「いまだ商業化されていないメタンハイドレート及び海底熱水鉱床については、今後十年程度を目途に商業化を実現する」ことが目標として定められている。その目標を達成するために万全の体制で取り組むべきと考えるが、そのために、今回の海底採掘試験で実施される減圧法以外の方法で採掘することについて、政府の見解を示されたい。

三 海底下のメタンハイドレート層を採掘してメタンをガス化して回収する技術として、①メタンハイドレート層を土砂とともに溶解し、②分離したメタンガスを土砂から分離してメタンガスのみを地上に回収し、③採掘先端を海底下で移動しつつ、①、②のサイクルを海底下で広範囲に渡って繰り返し行うことにより、現在、試行されている減圧法を進化させることを可能とする提案があると聞いている。減圧法以外のこのような方法を加味していくことは有用であり、検討の必要が出てくるのではないか、政府の見解を示されたい。

四 メタンハイドレートの商業生産の実現について、平成三十年度を目標にしているが、複数回の海洋掘削及び産出試験を集中的に実施して、産業界、大学、関係機関の英知を結集して課題の把握と克服を行える体制を早急に強化し、海底資源の確保へ向けた開発を国家戦略として本格的に推進することにより早期実現を目指すことが復興の観点からも重要と考えるが、政府の見解を示されたい。

五 平成二十四年四月二十七日に、政府は、国連の大陸棚限界委員会において、日本の大陸棚を新たに約三十一万平方キロメートル認められたことを発表した。このことにより、太平洋沖の広大な海底が、新たに日本の大陸棚と認定されたので、この機会に海底資源の開発をより一層本格化させることが必要である。そのためには、資源量評価や詳細な分布を把握することが不可欠である。しかしながら、現在の体制では不十分なため、海底下のサンプリングをする地球深部探査船「ちきゅう」号をもう一隻建造することを既に昨年五月の決算委員会で提案しているところであるが、改めて政府の見解を示されたい。
 さらに、船上のセンサー等による概略調査、AUVによる精密調査、ROVによるサンプリング等、海洋資源調査の一連の流れ全体を一隻で実施できる機能を備えた海洋資源調査研究船の建造について、平成二十四年度概算要求段階では日本再生重点化措置に盛り込まれていた。しかしながら、平成二十四年度予算には反映されていなかったが、その理由について政府の見解を示されたい。

六 日本周辺海域のメタンハイドレート資源分布は、排他的経済水域内にあり、商業生産が実現すれば、エネルギーの長期的な安定供給の確保だけでなく、我が国が資源大国になることにより資源外交上優位な立場となる可能性があると考えるが、今後、我が国は資源大国を目指していくのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。