質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一四四号

国際的基準に基づく安全設備がない状況下での原発の再稼働問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月十三日

川田 龍平   


       参議院議長 平田 健二 殿



   国際的基準に基づく安全設備がない状況下での原発の再稼働問題に関する質問主意書

 原発の再稼動問題について、スウェーデンにおいて既に常識とされていた安全設備がない状況下で政府が判断しようとしている点に関して、以下質問する。

一 スウェーデン国防軍研究局が中心となって二〇〇二年にまとめた報告書の翻訳書として、昨年末に合同出版から『スウェーデンは放射能汚染からどう社会を守っているか』が出版された。この本の二十六頁以降には、「スウェーデンの原子力発電所として」、(一)「もし深刻な事故が起き、格納容器内が高圧になった場合は、事故フィルターという防護システムが格納容器の圧力を緩和させ、放出物をろ過します。」、(二)「この防護システムに要求される安全基準は、炉心溶融を含むあらゆる事故の際に、炉心から放出した放射性物質のうち外部に放出される物質を〇・一パーセント以下(希ガスを除く)に低減することとされています」、(三)「放出を抑制する防護システムが機能しなかった場合は、相当大きな被害が予想される。大量の放射性物質が地表を汚染し、食品を通した内部被ばくをもたらす。数百キロ平米の広範囲の地域が大量の放射性セシウムで汚染され十年以上にわたって使用できなくなる可能性がある。」との記述があるが、このような記述があることを政府は認識しているか。

二 前記一の記述を総合すると、この事故フィルターが完備されていれば、東京電力福島第一原発はメルトダウン(炉心溶融)したとしても、これほど甚大な各種損害を我が国にもたらすことはなかったであろうと思料されるが、政府の見解を示されたい。

三 報道によれば(NHK Webニュース、五月三十日)、今回の大飯原発の再稼働問題に関連し、細野国務大臣は、「原発にもはや万全ということはありえない。常に新しい知見に基づいて高いレベルの対策を満たしていくというのが政府の考え方だ」と述べたと伝えられている。一方、前記一の記述にあるシビアアクシデント用の事故フィルター、または、これに類する設備は大飯原発には装備されていないと思料する。また、現在、そもそも我が国においては、シビアアクシデント用の事故フィルターが装備されている原発はないと思料するが、事実関係を明らかにされたい。

四 前記三が事実であれば、大飯原発及びその他の日本の全ての原発には、少なくとも二〇〇二年にはスウェーデンで常識とされていた安全設備が、未だ装備されていないことになる。この点に鑑みれば、前記三の細野国務大臣の発言は、十年前にスウェーデンで装備が常識であった安全設備すら、未だ装備されていないにもかかわらず、大飯原発の再稼働を図るために、安全に対する取組方針として「常に新しい知見」、「高いレベルの対策を満たす」など全く虚偽の事実を述べながら国民を欺く歴史的な発言と考える。国論を二分するような重大な問題において、国民に対してこのような陳述をする議員が担当大臣としてふさわしいのか、野田内閣の見解を示されたい。また、仮に野田内閣が担当大臣としてふさわしいと考えるならば、その合理的な理由を示されたい。

五 そもそもシビアアクシデントを起こした国が、当該シビアアクシデントに対する十年前の国際的基準に基づく安全設備すら装備していない状況下で、国内の電力量が致命的に不足するわけではないにもかかわらず、原発の再稼働を行おうとすることは、今回の事故に対して全く何の反省もないことを世界に対して明らかにするということである。このようなことは断じて許されるべきではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

六 このような状況下で原発の再稼働を行うことは、国民に再び東京電力福島原発事故と同様の災禍をもたらす危険性の甘受を政府が押し付けること以外の何ものでもなく、国民の命よりも原発の再稼働を重視するということを白日の下にする前代未聞の政策と考える。すなわち、原発の再稼働のためには国民の命すらも政府が何ら守る必要がないことを明らかにするものと言わざるを得ないが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。