質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一三六号

脳死下臓器摘出に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年六月七日

川田 龍平   


       参議院議長 平田 健二 殿



   脳死下臓器摘出に関する質問主意書

 改正臓器移植法が施行されて、来月(七月十七日)で丸二年になる。この二十三カ月間に本人の意思はなく家族の承諾のみによる脳死下臓器提供が七十例を超え、十五歳未満の児童も一例の法的脳死判定と脳死下臓器摘出が行われている。
 また、二〇一二年三月二十九日に、「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 一〇二例の検証のまとめ」が厚生労働省のホームページ上に公開された。
 そこで、以下二点について質問する。

一 十五歳未満の少年からの臓器摘出について

1 現在施行されている臓器移植法では虐待を受けた児童からの臓器提供を禁止しており、ドナーとなる児童が虐待を受けていたか否かについて、臓器提供病院は確認することになっている。法的脳死判定百二十九例目の少年の場合、臓器提供病院はどのようにそれを確認したのか、政府の承知するところを示されたい。
2 厚労省の「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」は、昨年十二月十六日に法的脳死判定百二十九例目の事例に関する検証を終え、問題はなかったとマスコミに発表している。法的脳死判定を行う際の除外事項はどのように検証されたのか、具体的に明らかにされたい。
3 児童虐待防止法は第二条で「「児童虐待」とは保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。」として、身体的虐待(生命・健康に危険のある身体的暴行)、性的虐待(性交、性的暴行、性的行為の強要)、心理的虐待(暴言や差別など心理的外傷を与える行為)及びネグレクト(保護の怠慢や拒否により健康状態や安全を損なう行為)を挙げている。また、同法は平成十六年改正により、「保護者以外の同居人による同様の行為」も追加されている。
 保護者と保護者以外の同居人による身体的・性的・心理的虐待とネグレクトの有無の確認方法について、児童相談所への通報がない場合は、どのように確認するのか示されたい。また、本件に関する厚労省の指示(通知)やマニュアルはあるのか示されたい。
4 前記1及び2の少年は、その後、週刊誌で自殺と報道された。十代の少年の自殺は、その原因が、親や同居親族からの虐待、あるいは年長者や友人らによるいじめの可能性が十分に考えられるが、その調査の有無について事実関係を明らかにされたい。
5 遺族の同意がないことを理由として、検証内容はもちろんのこと、自殺に至った経緯も隠ぺいされており、これでは自殺や虐待防止のための対策にもつながらないことを危惧する。検証内容等を公表すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 一〇二例の検証のまとめ」について

 厚労省と日本臓器移植ネットワークは、脳死下臓器提供が行われた場合、提供日、ドナーの年代・性別、原疾患、地域・提供施設名、本人の意思の有無、臓器別移植術の施行施設名、レシピエントの年代・性別等の項目を公表している。
 二〇一二年三月二十九日に厚労省が公開した「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 一〇二例の検証のまとめ」では、原疾患に「クモ膜下出血、頭部外傷、蘇生後脳症、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍」と病名が挙げられている。
1 法的脳死判定八十八例目の事例では検証報告書が公表され、脳死の原因を「本症例は脂肪塞栓症候群を原因とする重度かつびまん性に進行した脳腫脹により急速に脳死の状態に陥った」としている。しかし、当初発表された原疾患は「交通外傷」であった。
 第百七十七回国会衆議院厚生労働委員会(二〇一一年六月一日)で、岡本政務官(当時)はこの問題に関して阿部知子議員の質問に「当初、交通外傷が原疾患だと言われておりましたが、これは交通外傷に起因をする脳塞栓というよりは、その術中の問題があったと。それが不可避かどうかというところは先生御指摘のとおりですけれども。そういう意味で、公表の仕方として、原疾患を交通外傷としたということについての、やはり公表のあり方については少し考える必要があるだろうということは指示をしたところです。」と答弁している。
 先般公表された「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 一〇二例の検証のまとめ」には原疾患が脂肪塞栓症候群の事例はないが、法的脳死判定八十八例目の原疾患はどのように分類されているのか明らかにされたい。
2 「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議 一〇二例の検証のまとめ」中、自殺者からの臓器提供は何例あったのか。
3 米国UNOS(全米臓器配分機関)は「ドナーが生じた理由(児童虐待、交通事故、殺人、自殺、自然要因、交通事故以外の事故等)」、「原疾患(窒息・鈍的外傷・心臓血管・溺水・薬物中毒・感電・頭蓋内出血・鈍傷・発作等)」及び「死因(低酸素脳症・脳卒中・頭部外傷等)」と三項目に分けて整理し、事例数とその割合を公表している。日本でも少なくとも「ドナーが生じた理由」と「脳死の原疾患」に分けて公表できないのか、政府の見解を示されたい。
4 臓器移植は他人の臓器を医療資源として用いる特殊な医療技術で、ドナーとレシピエント双方に重大な人権侵害が起きないようにするとともに、透明性を担保するために公表はきちんと行われなければならないことは法律の精神でもある。
 今後も、提供日、ドナーの年代・性別、地域・提供施設名、本人の意思の有無、臓器別移植術の施行施設名、レシピエントの年代・性別等の項目に加え、ドナーが生じた理由、脳死の原疾患の全ての項目をホームページ上に公表すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。