質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一一二号

安全で快適な自転車通行空間の整備の推進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年五月十五日

秋野 公造   


       参議院議長 平田 健二 殿



   安全で快適な自転車通行空間の整備の推進に関する質問主意書

 自転車は、主に学生の通学、主婦の日常的な買物や子どもの送迎、通勤等、日常生活における身近な移動手段として定着している。さらに、レジャーや健康増進を図るサイクリングなど、高齢者から子どもまで多くの方に利用されている。全国の自転車の保有台数は平成二十年時点で約六千九百万台と増加傾向にあり、五キロメートル未満の移動の約二割は自転車が利用されているなど、自転車は都市内交通等において重要な移動手段となっている。
 また、自転車は、クリーンかつエネルギー効率の高いエコロジーな移動手段であり、健康志向や節電意識の高まりなどを背景に、利用ニーズは高まる傾向になっている。平成二十四年四月に国土交通省の「安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会」が示した「みんなにやさしい自転車環境」の提言には、自転車通行空間の整備が重要であることがうたわれている。
 さらに、昨年の東京電力福島原発事故による計画停電等に伴う公共交通機関の不通時にも自転車は最速の移動手段として能力を発揮し、防災対策としても自転車の活用は効果があることが示された。
 国においても自転車道の整備については、取組が始まったところであり、北九州市小倉南区田原の国道十号線の歩道内には、幅員三メートルの自転車道が整備されたところであるが、歩道と自転車道の間には柵が設置され、極めて安全に配慮がなされているだけでなく、地元の満足度も高いものとなっている。
 一方、福岡市においても国道三百八十五号線の車道内で自転車レーンの社会実験が実施されたところであり、幅員一・八メートルの自転車専用通行帯が整備されている。なかでもバス停留所と歩道の間に自転車専用通行帯を整備することにより、いずれも道路の左側を通行するバスと自転車の動線を分けた安全対策の先駆例と注目されており、国は好事例の一つとして情報提供に取り組むべきである。
 今後、自転車通行空間の整備を更に普及させる立場から、以下質問する。

一 平成二十三年十月に、警察庁は自転車は「車両」であることを基本的な考え方として、車道を通行する自動車と歩道を通行する歩行者の双方の安全を確保する対策を講じ始めている。自転車の安全かつ快適な通行を可能にして、歩行者の安全性も高めることが重要な課題となっていると考えるが、平成二十二年三月時点で、全国の約百二十万キロメートルの道路のうち、自転車道や自転車専用通行帯等の自転車通行空間の延長は約三千キロメートルと約〇・二五パーセントにすぎない。自転車通行空間の今後の整備計画について、政府の方針を示されたい。

二 自転車通行空間は道路の左側に整備されることを考えると、道路排水溝及びマンホールの存在は極めて危険である。下水道部局との連携により道路排水を機能させつつ自転車利用者の安全確保を行う必要があると思われるが、政府の見解を示すとともに、地方公共団体への指導の方針を示されたい。また、道路部局と下水道部局の連携による今後の路肩整備の在り方を検討する必要性について、政府の見解を示すとともに、地方公共団体への指導の方針を示されたい。

三 自転車専用通行帯内に駐停車する車両を見かけることがあると聞くが、自転車が専用通行帯を通行できず、結果として車道を通行せざるを得ない状況は極めて危険である。米国においては、一般的に自転車を除く車両はバイクレーンを通行できないと認識しているが、自転車専用通行帯を通行して駐停車する車両に対する道路交通法上の解釈について、政府の見解如何。さらに、自転車以外の車両も自転車専用通行帯を通行することが可能との解釈がありうるならば、弱者保護の観点から、交通規則の見直しを検討する必要性について、政府の見解如何。

四 都市内自転車道の整備は地域の実情に依存するところが大きいと思われるものの、都市と都市を結ぶ都市間自転車道の整備は自転車の可能性を更に拡げる可能性がある。国直轄国道又は都道府県・政令都市管理国道の中に自転車道を整備することにより、自転車が自転車道のみの通行で都市間を結ぶことが可能となるような自転車道の整備を検討する必要性について、政府の見解如何。

五 大学生や高校生等にとって通学における自転車の依存度は高く、スクールゾーンの自転車道の整備は重要である。学校近隣の整備を優先して歩行者の安全を確保する必要性について、政府の見解如何。

六 自転車と歩行者との事故により高額の賠償が必要となっている例が見受けられるが、自転車の自賠責保険制度又は対人保険制度の創設を検討する必要性について、政府の見解如何。

  右質問する。