質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第八七号

原子力安全委員会による中間とりまとめを踏まえた緊急被ばく医療体制の強化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年四月十七日

秋野 公造   


       参議院議長 平田 健二 殿



   原子力安全委員会による中間とりまとめを踏まえた緊急被ばく医療体制の強化に関する質問主意書

 我が国の緊急被ばく医療体制は、原子力安全委員会が策定した「原子力施設等の防災対策について」に基づき、文部科学省により整備されてきたところである。平成二十三年三月十一日の東京電力福島原発事故への対応について、二次被ばく医療機関である福島県立医大が、当時は不十分な体制ながら懸命に対応し、三次被ばく医療機関も懸命なる支援を行ったものの、結果として一連の対応は十分でなかった。そこで、公明党は昨年四月二十八日に首相官邸に対して、「東京電力福島第一原子力発電所災害に対する緊急提言(第三次)緊急被ばく医療体制の強化について」の申入れを行った。これに対し、本年三月二十二日に原子力安全委員会が、「原子力施設等の防災対策について」の見直しに関する考え方について中間とりまとめを発表したところであるが、この内容は、一年前に行われた公明党の申入れと軌を同じくしたものであり、評価されるべきものである。
 例えば、緊急被ばく医療体制の強化に当たり、指導的役割を果たし、かつ、専門的医療を提供する三次被ばく医療機関の数を増やすべきであるとの公明党の申入れに対して、原子力安全委員会は、まず被ばく医療分科会において、東西ブロックにこだわることなく、国内の原子力施設からの搬送距離等を考慮して更にブロックを細分化するなど、より迅速な対応をとる実効的な体制の検討を政府に求め、さらに、前記の中間とりまとめにおいても、地域性を考慮した指定の在り方を求めている。
 また、私が昨年六月八日に参議院災害対策特別委員会において、ヘリコプターを用いた原発作業員等の搬送体制を求めたことについても、現時点で実現しており、さらに、前記の中間とりまとめにおいても、搬送の優先順位を判断・決定するトリアージ体制及び六十分以内に根治的治療を行うことを可能とする搬送体制を整備すべきであると、具体的な数値目標を示した指摘がなされている。
 なお、この件は、平成二十一年二月十三日に総務省から文部科学省に対して、原子力の防災業務に関する行政評価・監視結果に基づく勧告が発出されていたにもかかわらず、発災時に実施されていなかったことを国は反省すべきである。
 さらに、原子力安全委員会の被ばく医療分科会においては、文部科学省に対して、「緊急被ばく医療対応に関する自身の能力、権能を明らかにした上で自身が対応できないことについては、役割分担を積極的に進めることが望ましい」と厳しい指摘がなされている。これまで緊急被ばく医療体制の整備を担ってきた文部科学省を中心として、国は心して、緊急被ばく医療体制の強化に努めるべきである。
 なお、本年三月二十三日の参議院災害対策特別委員会において、原子力安全委員会が主に文部科学省に対して、こうした考え方を既に示していることが確認されている。すなわち「一点目は、地域性や搬送距離等を考慮した被曝医療機関ブロックの細分化による迅速で実効的な体制の検討と三次被曝医療機関の指定の在り方を見直すこと」、「関係省庁にこの旨を通知するという手続を昨日取りましたので、先生御指摘の文部科学省におかれても緊急被曝体制の見直しを検討されることと思います」と念を押した答弁がなされている。今後、文部科学省を中心に緊急被ばく医療体制の強化が行われることになり、既に検討に着手しているところであると思われるが、一日も早い体制の整備を推進するために、以下質問する。

一 政府は、原子力安全委員会の前記の中間とりまとめを受けて、緊急被ばく医療体制を強化するために、今後、文部科学省に対してどのような場・時間軸の下で検討を進めさせる方針なのか、政府の見解を示されたい。

二 福島県における緊急被ばく医療体制の整備は、原子力安全委員会による平時としての考え方だけでなく、緊急時や現存被ばくを視野に入れた考え方に基づく検討が必要である。特に、福島県内の警戒区域においては、高濃度の放射線量が測定されているなど、今もなお不測の事態が生じる状況が続いている。さらに、今後、除染作業が行われることを考え合わせると、福島県内で完結する緊急被ばく医療体制の整備が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 二次被ばく医療機関である福島県立医大を三次被ばく医療機関に昇格させる、または、災害対策基本法における緊急被ばく医療に対応する指定公共機関に指定することにより、被ばく医療体制の充実・強化を図るべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 原子力安全委員会の前記の中間とりまとめでは、放射線医学総合研究所については、医療機関と支援機関の両機能を十分に果たしうるか懸念されるとともに、同研究所にしかできない支援業務への対応に重点を移すことも含め、文部科学省における検討が望まれている。同研究所は国内随一の専門的支援機関であるが、今後、医療を自己完結できる体制の整備を行っていくのか、または、支援機関としての機能に特化し強化を行っていくのか、政府の見解を示されたい。

五 原子力安全委員会の前記の中間とりまとめにおいて、同研究所の定員を抑制することへの懸念が指摘されている。今回の原発事故を踏まえれば、定員抑制はあり得ない話であるが、政府の今後の方針を示されたい。

六 原子力安全委員会の前記の中間とりまとめにおいて、緊急時応急対策調査委員として総理から任命された職員について他の支援業務が忙しいとの理由で原子力安全委員会への派遣を中止したことが指摘されているが、このようなことは二度と繰り返されてはならない。政府が再発防止策として講じた措置ついて、具体的に明らかにされたい。

  右質問する。