質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第六五号

原子力規制庁の設置が遅れた場合の予算執行に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年三月十六日

浜田 昌良   


       参議院議長 平田 健二 殿



   原子力規制庁の設置が遅れた場合の予算執行に関する質問主意書

 原子力規制庁の本年四月一日からの発足が危ぶまれている。その背景には、そもそも無理のあるスケジュールであったこととともに、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の黒川清委員長が、本年二月二日、「原子力組織改革法案等の閣議決定に関する国会事故調委員長声明」を発表し、「調査を行っている最中であるにもかかわらず、政府が「組織の在り方」を定めた法案を決定したことは、私には理解できません」と述べたことが挙げられる。同委員会は法律に基づき国会に設置され、今般の事故を踏まえた「行政組織の在り方の見直し」を含め提言を行うことを任務の一つとしており、同委員長の抗議は当然のこととして受け止められるべきである。政府は原子力規制庁の四月発足に固執すべきでない。
 一方、原子力規制庁として計上(ただし、平成二十四年度予算においては「原子力安全庁(仮称)」として計上。以下同じ。)されている予算には原子力被災者健康確保・管理関連交付金等が含まれているが、原子力規制庁の発足の遅れによる、四月からのこれらの予算の執行が危惧されている。原子力規制庁の発足が、例えば秋以降に大きく遅れたとしても、現場の声を踏まえ、これらの緊急性の高い予算については早期に執行できるよう、政府として予算の執行体制の変更に必要な準備を予め検討していくことが、地元の不安を取り除くために重要であると考える。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 平成二十四年度特別会計予算において、原子力被災者健康確保・管理関連交付金(七億円)はエネルギー対策特別会計に計上されている。同特別会計は文部科学省、経済産業省及び環境省の三省共管とされており、環境省の外局としての設置が想定されている原子力規制庁もその中に含まれるものであるが、国会の議決は同特別会計予算における各項について、これら三省のうち特定の組織に執行させることを必ずしも指定するものではない。したがって、仮に予算を執行するための組織として想定される原子力規制庁が設置されない場合であっても、国会としては、これら三省のいずれかに属する組織が、当該予算を執行することを想定する限りにおいては、特別会計予算を修正する必要はないものと考えられるが、このような考え方に誤りがあるか、野田内閣の見解を明らかにされたい。

二 環境省の担当者が福島県に対し、「原子力規制庁の設置が四月から遅れると福島県健康管理基金の積み増しによる新生児の聴覚検査支援等の予算の執行が大幅に遅れる」と地元の不安を煽る発言を行ったと聞いているが、これは事実か。前記一の考え方に誤りがないと野田内閣が考えるのであれば、この発言について野田内閣としてどのように反省するのか。原子力被災者健康確保・管理関連交付金には福島県健康管理基金の積み増し分が含まれており、原子力災害に起因する母体に対するストレスが胎児の健康に与える影響について不安が広がっている中、多くの妊婦等から新生児に対する聴覚検査等について強い要望があり、検査料を国が福島県に補助することになっている。同交付金を通じた国からの検査の実施支援について、予算をまるで「人質」にするかのように原子力規制庁の拙速な設置を誘導しようとした当該職員を処分すべきであると考えるが、野田内閣の見解如何。

三 平成二十四年度一般会計予算において、原子力規制庁の所掌に係る一般事務等に必要な経費は、環境省所管のうち「原子力安全庁」に計上されている。また、同予算総則第十四条には、行政組織に関する法令の改廃等による職務権限の変更等があった場合における予算の移替え等の措置が規定されている。したがって、仮に、原子力規制庁が設置されない場合であっても、同庁の所管として計上されている予算は、同条の規定に基づき、その目的の実質に照らして最も適当な組織に移替え等を行うことにより執行することが可能であると考えられるが、このような考え方に誤りはあるか、野田内閣の見解を明らかにされたい。

四 前記一ないし三を踏まえ、原子力規制庁が仮に四月に発足できなくても同庁計上分の予算の執行が可能であり、そのために予算を修正する必要がないと確認された場合において、原子力被災者健康確保・管理関連交付金を平成二十四年度予算成立後、速やかに執行するためにどのような手続を行うことになるのか。地元の懸念を払拭するために、予算の移替え等から福島県への同交付金の交付に至るまでの具体的な手続について、それぞれの時期の見通しも含めて明らかにされたい。

  右質問する。