質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第一一号

使用済み核燃料の直接処分に関するコスト計算隠蔽問題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年二月二日

福島 みずほ   


       参議院議長 平田 健二 殿



   使用済み核燃料の直接処分に関するコスト計算隠蔽問題に関する質問主意書

 二〇〇四年三月十七日の参議院予算委員会において、私は使用済み核燃料を直接処分した場合のコスト試算(以下「直接処分コスト試算」という。)が存在するか質問したのに対して、直接処分コスト試算が存在するにもかかわらず、日下一正資源エネルギー庁長官(当時)は、存在しないとの虚偽答弁を行った。その後の報道によって、直接処分コスト試算が存在することが明らかとなり、中川昭一経済産業大臣(当時)の下で調査が行われ、大臣を含め十四名の処分が行われた。本件は、我が国の核燃料処理方法に関する政策決定に影響する極めて重要な問題である。よって、以下質問する。

一 直接処分コスト試算に関する国会虚偽答弁に関する経済産業省作成の報告書について

1 同報告書は存在するのか。存在するのであれば、これを公開すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 同報告書が存在しないのであれば、それはなぜか。十四名の処分者を出しながら、報告書がないとすれば、それ自体が経済産業省の隠蔽体質を表しているのではないか。政府の見解を示されたい。
3 本件について経済産業省が行った調査において聴取された二十五名全員の名前と当時の肩書を明らかにされたい。

二 直接処分コスト試算に関する国会虚偽答弁に関する事実の確認について

1 安井正也原子力政策課長(当時)は、本件調査時に、経済産業省に対して、直接処分コスト試算の存在をいつ知ったと報告しているか。
2 本年一月一日付毎日新聞の報道で、記者が入手した経済産業省関係者のメモによると、二〇〇四年四月の時点で、部下から直接処分コスト試算の存在を伝えられたところ、同課長(当時)は、部下に「世の中の目に触れさせないように」と厳命したとされる。これは事実か。政府の承知するところを示されたい。
3 これまでの調査報告によると、同課長(当時)は、直接処分コスト試算の存在が報じられた二〇〇四年七月にこれを知ったはずである。前記2が事実であれば、同課長(当時)は、経済産業省の調査に対して虚偽の報告をしていたことになるが、政府の見解を示されたい。
4 同課長(当時)の報告と事実が違うのであれば、改めてこの事実について調査の上、再処分が必要と考えるが、政府の見解を示されたい。

三 使用済み核燃料処理に関する政策について

1 経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の電気事業分科会では、二〇〇四年五月、複数の委員から直接処分コスト試算を求める意見が出ていた。前記二の報道が事実であれば、同課長(当時)は、この時点で既に直接処分コスト試算の存在を認識していたことになる。にもかかわらず、これを故意に隠蔽し、公正な議論を妨害したと考えるが、政府の見解を示されたい。
2 その後、同分科会は、同年六月、約十九兆円もの再処理コストを事業用及び家庭用電気料金に上乗せし、国民に巨額の負担を強いる新しい制度の導入案をまとめた。同課長(当時)の行動は、あらゆる選択肢を示すことなく、国民に大きな負担を強いる政策へと誘導したと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 あらゆる政策決定においては、入手できるすべての選択肢を用意しながら、その是非を検討し、安全性やコストなどの観点から、国民にとって最適なものを決定すべきではないか。本件の事実が明らかにしたのは、国内全量再処理という国策が、十分な政策的検討を経ることなく決められているということである。よって、国内全量再処理という政策は、改めて直接処分コスト試算の結果を明らかにした上で、再検討されるべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 本件の隠蔽を行ってきた同課長(当時)は、現在、原子力安全規制改革担当審議官の任にある。東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、国民が経済産業省に対して、事実に基づき、これまでの原子力政策を真摯に反省し、「改革」を求めている極めて重要な時期に、同氏が、原子力安全規制改革担当審議官の任にあることは、極めて不適格であると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。