質問主意書

第180回国会(常会)

質問主意書


質問第二号

基礎自治体におけるフェイスブック等のSNS利活用の推進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十四年一月二十四日

秋野 公造   


       参議院議長 平田 健二 殿



   基礎自治体におけるフェイスブック等のSNS利活用の推進に関する質問主意書

 平成十二年の地方分権一括法の施行により、地方自治体の役割の重点は、国や都道府県の包括的な指揮監督に従い確実に事務を処理することから、自らの責任と判断で地域・住民のニーズに主体的に対応していくことへと転換が求められるようになり、財源的にも自律性が高まった結果、住民の受益と負担の関係がより明確となっている。他方、近年は、市町村合併の推進に伴い、基礎自治体の役割が拡大する一方で、地域間格差が増大している。
 また、我が国の総人口は、二〇〇六(平成十八)年にピークに達した後、減少に転じている。さらに、将来推計人口によれば、二〇五〇年代には高齢化率が三十五・七パーセントに達し、三人に一人が六十五歳以上の高齢者となる。少子高齢化が進展する中で、都市部においては住民間の信頼や連帯意識の低下、地方部においては限界集落の発生など、いずれも地域のコミュニティを維持することが困難な時代を迎えている。
 さらに、公共交通機関の集約による廃止地域において買物や通院が困難になっている実態は、人的交流の低下を意味し、さらに若年者や労働者等に見られる労働・生活スタイルの多様化及び価値観の多様化がこれに拍車をかけ、このままの既存の体制だけでは、行政の考え方を周知することも、地域の意思を集約して行政に伝えることも、また、地域における小さな取組を市民全体で共有することも困難になることが予想される。
 地域コミュニティを維持しつつ、基礎自治体に意見を集約するためには、基礎自治体と地域住民の連携を深める体制を整備することが必要であり、こうした課題に対応するため、国は今後積極的に基礎自治体に対して技術支援を行うべきと考える立場から、以下質問する。

一 地方分権の推進により、地方自治体の役割が拡大する一方で、少子高齢化が急速に進展し、財政事情も厳しさを増すなど、地域を取り巻く環境は大きく変化している。
 かつては、子育てや介護の課題などは大家族や地域の中で対応がなされ、道路の除雪も協力して行うなど、地域における相互扶助・コミュニティが機能していた。しかし、高度成長期以降に、都市部に人口が集中し、核家族化が進行したため、家族や地域コミュニティだけでは解決できない状況下で、行政に期待される役割が拡大している一方、厳しい財政事情下においては、従来の行政手法だけでは対応困難な事態になっていると認識する。
 このような状況の下、公共サービスや公益活動の円滑な実施など、地域の直面する課題に対応するためには、地域住民の多様なニーズの集約が行政に求められ、地域住民一人一人が課題の解決プロセスに参画していけるような地域コミュニティを再生することが必要である。
 特に、地域コミュニティと行政によるサービスとの谷間に存在してきた課題については、基礎自治体と地域コミュニティとの関係に加え、新たに基礎自治体と地域住民一人一人がつながることのできる双方向の情報発信機能を高めることが重要である。情報通信技術(ICT)であるフェイスブック等のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を利活用して、「環境」、「福祉」、「安心安全」など、テーマ別のコミュニティを形成することは、地域コミュニティが果たしてきた役割を補完及び強化する可能性を秘める。基礎自治体における地域コミュニティの再生に向けたSNSの利活用の必要性について、政府の認識を示されたい。

二 佐賀県武雄市においては、市のホームページにフェイスブックを用いることにより、ページビュー数が一か月当たり五万件程度から三百三十万件程度に増加し、市民の間だけでなく市外との交流が活発化している。例えば、これまで流通経路が限定的だった武雄市産の農産物が、生産者家族の動画を用いた紹介とともに掲載されたことにより、遠くは岩手県・宮城県・山形県まで販売網が拡がっていると聞く。実名又はそれに近い状況で商品に対する意見交換を含むやりとりが即時に行われる流通スタイルは、インターネットにおける既存の顔の見えない消費者に対する販売よりも、より市場等における相対販売に近いものである。こうした取組は、人と人とのつながりを確保しつつ、自力では販路を拡げることが困難であった領域における新しい仕事・雇用の創出につながる可能性を秘めている。
 また、主に市役所でしか会うことが困難であった市職員がホームページ上の随所に登場し、動画又はコメントのやりとりの主体者となっていることは、市長を始め市役所職員の存在を身近に感じさせるものであり、東日本大震災で再確認された絆の復興にも役立ちうると思われる。
 地方分権の流れを加速させる国においては、多様な民意を基礎自治体に反映させうるツールの技術支援を行う必要がある。武雄市のような例えばSNSを用いた絆の復興及び意見を集約する仕組みづくりを一つの優良事例として、過疎化や高齢化の中で自治体のあり方を模索する基礎自治体に対して情報提供することを検討するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 総務省の発表データによると、我が国におけるSNS利用者数は、二〇〇六年時点で七百十六万人となり、二〇〇五年の百十一万人の約六・五倍に達しており、二〇一二年時点においても急速に認知度が高まっていると考える。
 このように、地方分権を推進しつつ、地域の活性化を図るためには、SNSを一つの社会インフラとして、公共交通機関や電話等の利活用と同様にとらえて、今後の政策を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。