質問主意書

第179回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二五号

内閣参質一七九第二五号
  平成二十三年十一月二十五日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 平田 健二 殿

参議院議員糸数慶子君提出在日米軍の米軍属の公務中における犯罪に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出在日米軍の米軍属の公務中における犯罪に関する質問に対する答弁書

一、五及び七について

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号。以下「日米地位協定」という。)第十七条3(a)において、米軍当局は、公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪については、日米地位協定第一条(b)にいう軍属(以下単に「軍属」という。)に対して裁判権を行使する第一次の権利を有するとされているところ、この規定に基づき、米軍当局が米国の法令にのっとって行った処分については、政府としてお答えする立場にない。
 軍属等の在日米軍関係者による犯罪については、公務執行中に発生したか否かにかかわらず遺憾であり、政府としては、当該犯罪が発生した時はもとより、これまで累次にわたり、米側に対し遺憾の意を伝え、米側において、在日米軍の綱紀粛正や再発防止等の所要の措置をとるよう申し入れてきている。
 日米地位協定については、今後とも、日米同盟を更に深化させるよう努めていく中で、普天間飛行場の移設問題など他の喫緊の課題の進展を踏まえつつ、その対応について検討する考えである。政府としては、まずは、米軍関係者による事件・事故の防止、米軍機による騒音の軽減、在日米軍施設・区域における環境問題等の具体的な問題について、地元の方々の御要望を踏まえつつ、最大限の努力を行っていく考えである。

二及び四について

 検察当局においては、米軍当局による懲戒処分の結果を適切に把握するため、軍属による公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪であって、日本国民に対して犯されたものに係る事件のうち、検察当局が平成十八年九月以降に「第一次裁判権なし」を理由に不起訴処分にしたものに関する米軍当局による懲戒処分の結果について、不起訴処分の都度、米軍当局に照会し、回答を得ていると承知しており、法務当局においても、検察当局から報告を受けるなどして、その結果等を把握している。

三について

 御指摘の「六十二件」の罪名別の内訳は、自動車運転過失致死罪に係る事件が一件、自動車運転過失傷害罪に係る事件が四十一件、業務上過失傷害罪に係る事件が十六件、道路交通法違反に係る事件が四件であるが、政府として、不起訴処分とされた個別具体的事件の詳細についてお答えすることは差し控えたい。
 御指摘の「二十七件」については、「米国内での裁判権の行使」の意味が必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難である。また、御指摘の「三十五件」については、懲戒処分の結果を個別具体的に明らかにすることは、米国政府との信頼関係が損なわれる等のおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

六について

 日米地位協定が定める裁判権に関する問題については、日米地位協定第二十五条1の規定に基づき設置された合同委員会の枠組みを通じ、米側と協議してきているが、その協議内容等については、日米両政府の合意なしには公表しないこととされている。当該合意のあるものについては、これを随時外務省のホームページに公表してきているところであり、その内容は、「千九百五十三年の日米行政協定(日米地位協定の前身)第十七条(刑事裁判権)改正交渉に係る外交記録及び関連資料の公表」等の件名により当該ホームページに掲載されているとおりである。