質問主意書

第179回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四五号

高年齢の期間雇用社員の雇止めと要員不足対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年十二月五日

又市 征治   


       参議院議長 平田 健二 殿



   高年齢の期間雇用社員の雇止めと要員不足対策に関する質問主意書

 本格的な高齢社会の進展に伴い、高年齢者の雇用延長や再雇用・再就職の機会の拡大は、高年齢者世帯の自立した経済・社会生活維持の観点からも、また、経験ある労働力の自然減に悩む企業側からも望まれる社会政策となりつつある。このため、厚生労働省は「雇用政策基本方針」において、七十歳まで働ける企業の普及促進を図るとしている。
 ところが、政府の百パーセント出資会社である日本郵政グループが、去る九月三十日付で六十五歳超の一万四千人の期間雇用社員全員に対して、原則として雇止めを行った。同グループは半数近くの社員を非正規雇用とし基幹的労働力を賄っていたが、一昨年来、担当大臣などの再検討するところとなり、非正規社員の正規社員への登用に門戸を拡大し、昨年十一月には登用有資格者六・五万人のうち八千四百三十八人を正規社員に登用した。しかし、今回の大量の雇止めは、こうした前進を台無しにするものである。
 折しも同グループの現場では、年末の繁忙期を前にして、要員・経験者不足による混乱が予想され、郵政事業に対する利用者・国民の不信を増幅しかねないことを憂慮する。
 よって、郵政三事業の監督官庁及び株主である政府に対して善処を求めるため、以下質問する。

一 高年齢者の雇用を拡大・定着させるためには、政府による就労能力のある高年齢者に対する直接の支援とともに、政府が日本を代表する、あるいは多数の労働者を擁する大企業等に対し、高齢社会に対応するために率先して高年齢者の雇用延長や再雇用、新規採用を拡大するよう求めていく施策が必要と考えるが、政府の取組及び見解を示されたい。また、先進的な取組を行う企業等の事例について、政府の承知するところを示されたい。

二 企業側が高年齢者の雇用延長・再雇用等に際し、身分(正規社員から非正規社員への雇用形態の変更)・賃金・労働時間等の労働条件の引下げを常識としている感があるのは問題なしとしない。少なくとも雇用期間については、期間の定めのない雇用とすることが一般的にも望ましいが、殊に高年齢者の場合、本人の生活設計上も、経験者を雇用することによる職場の安定的運営の観点からも、ある程度長期間であることが望ましく、いたずらな短期雇用は労使双方に損失をもたらすのではないか。この観点から、政府が推奨すべき高年齢者(有期雇用の場合)の一契約当たりの雇用期間として、例えば最低一年という期間を企業に対し提示すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 同グループは政府の百パーセント出資会社であり、人的サービスの比重の大きい労働集約型産業として二十万人以上の雇用を抱える日本有数の大企業である。この会社が去る九月三十日付で六十五歳超の一万四千人の期間雇用社員全員に対して、原則として雇止めを行ったことは、同グループの社会的地位や公共サービス産業としての使命に照らして、極めて遺憾である。本人の意志や能力に関係なく、年齢で一律に雇止めすることは高年齢者の雇用機会を一方的に奪うものであり、高齢者への人権侵害・生活権侵害である。
 政府・厚生労働省は、高年齢者が意欲と能力のある限り、年齢にかかわりなく、社会の支え手として雇用機会を確保することを、雇用政策の柱の一つに掲げている。そうであれば、その一環として、政府の百パーセント出資会社である同グループに対し、大規模な高年齢者の雇止めを中止することはもちろん、六十五歳以降の雇用継続・拡大、就業規則の改正等を通じて同グループが七十歳まで働ける企業となるよう要請すべきではないか。同グループにおける今回の高年齢者の大量雇止めに対する政府の見解を明らかにされたい。
 また、今回雇止めの大半を占めた郵便事業会社において、九月末で雇止めされた六十五歳以上の支社別の期間雇用社員数について、政府が調査し明らかにされたい。

四 期間雇用社員の大量の雇止めにより、同グループの各支店では要員不足となり業務に支障が生じている。これでは、昨年度の経常赤字から脱却した同グループにとって、経営基盤の回復を図る上で最も大切な利用者・国民の信頼・信用も失いかねない。正常な業務環境を確保するためにも、雇止めされた六十五歳以上の期間雇用社員を再雇用することが必要だと考えるが、同グループに対する政府の指導方針を明らかにされたい。
 また、それに関連して、①同グループの運用基準に基づき継続雇用された人数、②一度退職した後に募集を通じて採用された人数及び採用されなかった人数、③六十五歳で雇止めされた後に補充採用された人数及び④十一月末時点での期間雇用社員の募集人数について、政府が調査し支社別に示されたい。

五 郵便事業にとって十二月・一月期は、言うまでもなく最繁忙期であり、同時に同事業への信頼が最も問われる時期でもある。前記三及び四とも関連するが、九月末に八十人の期間雇用社員が雇止めされた千葉県船橋支店は大幅な要員不足により、日常業務が危機に瀕し、年末の業務にも不安が拡大している。全国的に見ても突出した状態にある千葉県船橋支店及び埼玉県越谷支店では、三六協定(十月・十一月の二か月間で八十一時間の条件)における特別条項の適用の可能性も出てきており、正常な業務環境の確保はもとより、社員の健康の保持も懸念されている。
 雇止めに伴う要員不足の象徴的事例として、これら二つの支店の十月期・十一月期の時間外労働時間数、時間外労働時間数と雇止めとの関連、補充などの募集の実態、業務環境の状況について、政府が調査し具体的に明らかにされたい。

  右質問する。