質問主意書

第178回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二九号

内閣参質一七八第二九号
  平成二十三年十月七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員加藤修一君提出スマート社会形成に向けた基本的支援施策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出スマート社会形成に向けた基本的支援施策に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「計画停電の混乱」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、スマートメーターが普及していれば、需要家ごとに電力供給の制限が可能となるとともに、電力使用状況の「見える化」等により需要家の節電の取組が促されたのではないかと考えられる。

二及び三について

 現在、沖縄電力株式会社を除く各一般電気事業者において、スマートメーターの本格導入に向けた実証実験が行われているところであり、北海道電力株式会社においては約百二十戸、東北電力株式会社においては約五百戸、東京電力株式会社においては約千二百戸、中部電力株式会社においては約千五百戸、関西電力株式会社においては約九十五万戸、九州電力株式会社においては約九万戸にスマートメーターを導入しており、また、北陸電力株式会社においては、平成二十三年中に約五百戸、中国電力株式会社及び四国電力株式会社においては、平成二十四年度からそれぞれ約千戸にスマートメーターを導入する予定であると承知している。
 米国では、二千八年の連邦エネルギー規制委員会の報告書において、今後五年後から七年後にかけて約五千二百万戸までスマートメーターの導入が進むとの見込みが示されており、二千九年末時点において全需要家の約八・七パーセントに当たる約千二百八十万戸にスマートメーターが導入されているなど、スマートメーター導入に向けた積極的な取組が進められていると承知している。欧州では、二千九年の第三次EU電力自由化指令において、二千二十年までに需要家の少なくとも八十パーセントにスマートメーターを導入するよう規定しているところ、イタリア及びスウェーデンにおいては、ほぼ全戸に導入が完了しており、イギリス及びフランスにおいては、二千二十年までに全戸に導入する目標を掲げていると承知している。また、韓国は二千二十年までに全戸に導入する目標を掲げていると承知している。
 我が国では、「当面のエネルギー需給安定策」(平成二十三年七月二十九日エネルギー・環境会議決定)において、「今後五年以内に総需要の八割をスマートメーター化する。」との目標を掲げている。スマートメーターの普及に当たっては、需要家における節電や省エネルギー行動を促す観点から、スマートメーターとエネルギーマネジメントシステムとの間のインターフェースの標準化が重要であり、関係機関等と連携しながら今後検討を進めてまいりたい。また、その他の普及支援策についても、スマートメーターの導入状況を踏まえ、検討してまいりたい。
 スマートグリッド技術の国際標準化に向けた取組については、「新成長戦略」(平成二十二年六月十八日閣議決定)及び「知的財産推進計画二〇一一」(平成二十三年六月知的財産戦略本部決定)において、特に戦略的に国際標準化を進めていくべき分野の一つとされており、官民一体となって国際標準化活動に取り組んでいるところである。引き続き、我が国が技術的優位性を有する分野を中心に国際標準化活動を進めてまいりたい。

四について

 二及び三についてで述べた「今後五年以内に総需要の八割をスマートメーター化する。」との目標については、各需要家の需要規模等も踏まえ実効性ある形で実現できるよう、ロードマップの作成も含め詳細な検討を行っているところである。

五について

 電力需要のピークカット対策については、「当面のエネルギー需給安定策」に基づき、スマートメーターを普及するとともに、大口需要家に対する需給調整契約の普及、家庭を含む小口需要家に対するスマートメーターの普及を通じたピークカット料金の導入促進等を行うこととしている。

六について

 発送電分離を含む電気事業制度の在り方については、今後、エネルギー・環境会議等の場において検討していくこととしている。

七について

 お尋ねの点については、今後、予算措置と制度改革で重点的に取り組む項目を盛り込んだ「エネルギー需給安定行動計画」を早急に策定することとしている。

八について

 使用電力量に応じて課税等により節電を促す制度については、具体的な制度設計にもよるものの、一定の節電効果を有する場合があると考えられるが、一方で、国民に一定の負担を求める制度であることから、他の節電を促す対策と比較した上で、慎重な検討が必要と認識している。

九について

 政府としては、「「革新的エネルギー・環境戦略」策定に向けた中間的な整理」(平成二十三年七月二十九日エネルギー・環境会議決定)に基づき、省エネルギーや再生可能エネルギーといった重要課題への対策を含む「革新的エネルギー・環境戦略」について、平成二十三年末を目途に基本方針を定め、これを踏まえ平成二十四年のしかるべき時期に策定することとしている。

十について

 御指摘のESCO事業者に対する支援措置については、例えば、省エネルギー設備の導入に対する補助事業において、省エネルギー設備の設置事業者がESCO事業を利用する場合に、設置事業者とESCO事業者が共同で補助金の申請をすることができるようにする措置を講じてきたところである。
 また、御指摘の「節電エコポイント制度」については、旧式の冷蔵庫、エアコンの買換え、LED照明の普及を促進するためのものと承知している。省エネルギー性能の高い冷蔵庫、エアコン及びテレビの普及のためにポイントを付与し、環境対策、景気対策及び地デジ普及を促進する制度として、平成二十三年三月末で購入期限を迎えた家電エコポイント制度を実施したところであり、相応の効果を上げたが、申請件数が多いため事務処理に要する費用がかさむ等の課題があったものと認識している。
 政府においては、これらの状況を踏まえ、家庭、中小企業、公共施設等における節電を推進するための施策を検討してまいりたい。

十一について

 エネルギー消費効率の低い白熱電球や蛍光灯をLED等の高効率照明に置き換えていくことは、省エネルギー及び節電の観点から有効な対策であると認識している。これまで、LEDについては、研究開発や生産ラインの設備投資支援及び省エネルギー設備としての導入補助を実施してきたところである。このうち、省エネルギー設備の導入に対する補助については、設備の設置事業者がリース等を利用する場合に、設置事業者とリース事業者等が共同申請することができるようにしているところである。今後とも、高効率照明の普及をより一層加速させるべく、どのような方策が適切か検討してまいりたい。

十二について

 蓄電池を一般家庭に普及させることにより、電力使用のピークカット効果とともに、太陽光発電等再生可能エネルギーの導入促進により得られる電力の安定的な供給及び災害時による万一の停電時におけるバックアップ電源としての効果が期待できると考えている。
 このため、一般家庭等に設置する蓄電池の普及加速化については、平成二十三年度第三次補正予算の概算要求において、経済産業省から蓄電池導入補助を要求しているところである。

十三について

 経済産業省の研究会報告書「日本経済の新たな成長の実現を考える自動車戦略研究会中間取りまとめ」(平成二十三年六月)において述べられているとおり、大容量蓄電池を搭載した電気自動車やプラグインハイブリッド自動車を、非常用電源や需給調整装置等として活用することへの期待が高まっていると認識しており、内需拡大や電力の負荷平準化の観点からも、電気自動車等の普及拡大が一層重要になっていると考えていることから、電気自動車等の導入補助事業等の積極的な支援策を講じてまいりたい。

十四について

 御提案の取組は、我が国の成長戦略の観点からも重要なものが含まれていると考えており、効果的な施策については、エネルギー基本計画の見直しや原子力政策大綱の見直しにかかわらず、実行可能なものから早期に取り組んでまいりたい。