質問主意書

第178回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二三号

内閣参質一七八第二三号
  平成二十三年十月七日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員三原じゅん子君提出「人権教育・啓発に関する基本計画」に新たに加えられた「北朝鮮当局による拉致問題等」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員三原じゅん子君提出「人権教育・啓発に関する基本計画」に新たに加えられた「北朝鮮当局による拉致問題等」に関する質問に対する答弁書

一について

 「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成十四年三月十五日閣議決定。以下「基本計画」という。)における「拉致問題等」とは、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律(平成十八年法律第九十六号)第二条第三項等に規定する「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題」のことをいう。この「その他北朝鮮当局による人権侵害問題」の例としては、過去に朝鮮半島出身者である夫等に随伴して北朝鮮に渡航した日本人配偶者の安否確認及び故郷訪問についての問題がある。

二について

 御指摘の「特定失踪者」とは、民間団体である「特定失踪者問題調査会」が独自に北朝鮮による拉致の可能性の調査の対象としている失踪者のことを意味するものと承知している。政府では、関係府省・関係機関において捜査・調査を進めている事案が、「特定失踪者」の事案に限られないことから、「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者」等の表現を用いている。
 北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律(平成十四年法律第百四十三号)第二条の規定により、これまでに十二件の事案の十七名が北朝鮮当局による拉致被害者と認定されているが、これ以外にも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があり、これまでに警察に対し、「北朝鮮に拉致されたのではないか」などとして、九百件以上の相談・届出がされるなどしている。このように、政府が認定した拉致被害者以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者が存在しているとの認識の下、国民の間に広く拉致問題についての関心と認識を深めるための人権教育・啓発の取組を推進している。

三及び四について

 拉致問題に関する取組においては、従来から、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」等の民間団体と適宜意見交換等を行うとともに、国において予算を確保して実施している啓発行事(地方公共団体等との共催のものを含む。)等においても必要に応じ連携及び協力をしており、今後も同様に取り組んでいくこととしている。
 各地方公共団体に対しては、本年五月二十六日付けで、関係大臣(拉致問題担当大臣、総務大臣、法務大臣及び文部科学大臣)の連名により、各都道府県知事及び各都道府県教育委員会教育長宛てに、「拉致問題に関する理解促進及び人権教育・啓発の推進について」を発し、基本計画を示した上、拉致問題に関する理解促進及び人権教育・啓発の取組の推進等についてお願いしているところである。
 お尋ねの「拉致問題対策推進経費・約十二億円のうち、啓発費・約八千万円」の主な内訳は、海外報道関係者・専門家招聘経費約二千八百万円、広告経費約二千四百万円、ホームページや冊子等を通じた理解促進活動経費約千九百万円等となっている。

五について

 全都道府県教育委員会の人権教育担当者を集めた会議等各種の機会を通じ、各都道府県教育委員会に対し、基本計画の趣旨を説明すること等により、基本計画に定めた学校教育における取組を推進していくこととしている。また、各学校においては、このような趣旨を踏まえた人権教育が適切に行われるものと考えており、御指摘の「指導」の内容を検証することは考えていない。

六及び七について

 人権教育及び人権啓発の推進に関する法律(平成十二年法律第百四十七号)第三条においては、国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて行うものとされており、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第百三十四条第一項に規定する各種学校として都道府県知事により認可を受けている御指摘の「朝鮮学校」も含めた様々な場を通じて、基本計画に基づき、人権教育・啓発の取組の推進を図ることとしている。

八について

 北朝鮮による日本人の拉致は、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる重大な問題であるとの認識の下、国民の間に広く拉致問題についての関心と認識を深めるための取組を積極的に推進している。

九について

 御指摘の「朝鮮学校」については、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則第一条第一項第二号ハの規定に基づく指定に関する規程」(平成二十二年十一月五日文部科学大臣決定)に基づく審査を行った上で、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則(平成二十二年文部科学省令第十三号)第一条第一項第二号ハの規定に基づく指定を行うか否かについて判断することとしている。
 なお、公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律(平成二十二年法律第十八号)においては、高等学校等就学支援金については、私立高等学校等に対して支給するものではなく、私立高等学校等に在学する生徒等に対して支給することとしている。

十について

 政府は、あらゆる外交上の機会を捉え、拉致問題等を提起し、また、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律第二条の規定により北朝鮮当局による拉致被害者と認定された者以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者が存在しているとの認識の下、外交における取組を進めてきている。例えば、本年の国際連合総会における内閣総理大臣の一般討論演説において、拉致問題の解決に向けた政府の決意を改めて表明したほか、米国及び韓国等の諸外国との首脳会談や外相会談を始めとする様々な機会を捉え、拉致問題等に関する我が国の立場を説明し、それに対する理解と支持を得てきている。