質問主意書

第178回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二〇号

内閣参質一七八第二〇号
  平成二十三年九月三十日
内閣総理大臣 野田 佳彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員川田龍平君提出六ヶ所及び東海再処理工場の高レベル放射性廃液の絶対的な安全管理に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出六ヶ所及び東海再処理工場の高レベル放射性廃液の絶対的な安全管理に関する質問に対する答弁書

一の1について

 各再処理施設における高レベル放射性液体廃棄物(以下「高レベル廃液」という。)については安全に貯蔵されていることを法令に基づき確認している。なお、高レベル廃液のガラス固化については、放射性物質を長期にわたり安定して閉じ込める方法として優れているとされており、今後、再処理事業者が定めた事業の計画に沿って所要の試験等を経て本格運転開始後に行われることが望ましいと認識している。
 また、「廃液貯蔵限度量」の意味するところは必ずしも明らかではないが、各再処理施設における高レベル廃液の貯蔵容量については、安全確保の観点から問題がないことを法令に基づき確認している。

一の2、3、5及び7並びに二の3について

 経済産業省においては、東京電力株式会社の福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、平成二十三年五月一日に、各再処理事業者に対し、再処理施設における緊急安全対策の実施を指示し、当該指示に対する各再処理事業者からの報告を踏まえ、同年六月上旬に立入検査等により確認及び評価し、施設定期検査等の期間中において、福島第一原子力発電所の事故を引き起こしたものと同程度の津波等の事象により、全交流電源の供給機能、放射性物質の崩壊熱除去機能及び水素の滞留防止機能を喪失した場合でも、それらの機能を回復させる手順の整備、電源車等の必要な機器の配備及びその適切な維持管理を行っていること、必要な訓練がなされていること等を確認している。なお、今後、施設定期検査等が終了し本格運転を行う際には改めて緊急安全対策の実施状況について厳格に確認することとしている。
 また、平成二十三年六月十五日に、各再処理事業者に対し、原子力発電所におけるシビアアクシデントへの対応を踏まえ直ちに取り組むべき措置を再処理施設において実施することを指示し、当該指示に対する各再処理事業者からの報告を踏まえ、同月中旬から同年七月上旬にかけて立入検査等により確認及び評価し、周辺環境が放射性物質で汚染された場合の制御室の作業環境の確保、全交流電源喪失時の再処理施設内の確実な通信手段の確保、高線量対応防護服等の資機材の確保、放射線管理のための体制整備及びがれき撤去用の重機の配備が適切にされていること、必要な訓練がなされていること等を確認している。なお、これらの評価及び確認に係る担当部局は原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)であり、その責任者は、原子力安全・保安院長である。
 経済産業省としては、再処理施設のより一層の安全の向上を図る観点から、設計時の想定を超えた事象が万一発生した場合のアクシデントマネジメントの一層の充実について、専門家による検討を進めるなど、今後とも継続的に取り組んでいくこととしている。

一の4について

 各再処理施設については、機器の異常な温度上昇の防止や静電気等の着火源の排除等により、有機溶媒の引火やリン酸トリブチル等の錯体の急激な分解等に起因する火災や爆発を防止する設計となっており、また、警報設備、消火設備等の火災防護設備を設置し、有機溶媒等の万一の火災にも対応する設計となっている。また、各再処理事業者においては、更に規程類の整備や保安教育等により、安全性の向上に努めていると承知している。

一の6について

 お尋ねについては、平成二十一年に発生した日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)の再処理施設における高レベル廃液ガラス固化建屋固化セル内での高レベル廃液の漏えい事象を受けて、同年七月二十三日に総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会核燃料サイクル安全小委員会において、平成二十二年一月二十八日及び同年三月九日に同小委員会再処理ワーキンググループにおいて、また、平成二十一年四月二日、同年七月九日、同年十一月二十六日及び平成二十二年三月十日に同小委員会六ヶ所再処理施設総点検に関する検討会において、それぞれその原因分析及び再発防止策等について審議を行っている。

二の1について

 再処理施設においては、高レベル廃液の貯槽等をセル等に収納することにより重層的に閉じ込めており、万一貯槽等から高レベル廃液が漏えいした場合でも限定された区域に閉じ込めて漏えいの拡大を防止するとともに、その漏えいを検知し、漏えいした高レベル廃液を安全に移送及び処理することができる等、放射性物質が外部に漏えいし難い構造となっていることから、高レベル廃液が一般環境に漏えいした場合の影響についての評価は行っていない。

二の2について

 御指摘の「核燃料サイクル施設批判」の御指摘の部分で述べられている筆者の主張については、その主張の裏付けとなる科学的根拠が示されていないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。

二の4について

 政府としては、日本原燃の再処理施設の敷地近傍における活断層であって、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(平成十八年九月十九日原子力安全委員会決定)等に基づき耐震設計上考慮することとされているものについては、既に同施設の耐震設計上考慮されており、また、御指摘の大陸棚外縁の断層については、少なくとも後期更新世以降の活動はなく、同指針等に基づき耐震設計上考慮する必要がないことを確認している。
 また、保安院においては、平成二十三年六月六日に、原子力事業者に対して、耐震設計上考慮しないと判断している各々の断層に応じて必要な距離の範囲内において、同年三月十一日以降の地震の発生状況及びそれに伴って生じた地殻変動量の調査を実施し、考慮すべき断層に該当する可能性が否定できない場合は、地表踏査等を行い、その結果を保安院に報告することを指示しており、同年八月三十日に、日本原燃から、既往の調査についての評価を変更する必要はないとする報告を受けたところである。今後、保安院において、当該報告内容について厳正に確認し、その結果を原子力安全委員会に報告する予定である。

二の5について

 お尋ねの「避難限度線量値」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、「原子力施設等の防災対策について」(昭和五十五年六月三十日原子力安全委員会決定)においては、屋内退避及び避難等に関する指標として、屋内退避については、外部被ばくによる実効線量を十ミリシーベルトから五十ミリシーベルトまで、避難については同線量を五十ミリシーベルト以上としている。
 また、放射線業務従事者の線量限度については、核燃料物質の加工の事業に関する規則等の規定に基づき、線量限度等を定める告示(平成十二年十二月二十六日科学技術庁告示第十三号)において、通常作業時に関しては五年間につき実効線量を百ミリシーベルト、一年間につき同線量を五十ミリシーベルトとしており、緊急作業時に関しては同線量を百ミリシーベルトとしている。
 なお、福島第一原子力発電所の事故に際し、特にやむを得ない緊急の場合における放射線業務従事者の線量限度については、平成二十三年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応するための電離放射線障害防止規則の特例に関する省令(平成二十三年厚生労働省令第二十三号)等において、実効線量を二百五十ミリシーベルトとしている。

二の6について

 一の1についてで述べたとおり、高レベル廃液のガラス固化については、放射性物質を長期にわたり安定して閉じこめる方法として優れているとされており、今後、再処理事業者が定めた事業の計画に沿って所要の試験等を経て本格運転開始後に行われることが望ましいと認識している。また、核燃料サイクルについては、今後、原子力政策の見直しを議論していく中で、しっかりと議論を行っていく。