質問主意書

第178回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四四号

今般の東日本大震災等の復旧・復興における硬直的な予算要求・執行方式の是正に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年九月三十日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   今般の東日本大震災等の復旧・復興における硬直的な予算要求・執行方式の是正に関する質問主意書

 東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、これまで二度にわたる補正予算が編成され、今後も、補正予算及び本予算の編成が行われることとなるが、このような緊急時でありながらも、あまりにも硬直的な予算要求・執行方式に政府が固執しているとの指摘がある。
 例えば、福島県では第三次補正予算で、「福島復興再生基金」の造成を希望しており、その中の一つの事業として、福島県立医大において「放射線医学県民健康管理センター整備」事業を要望している。当該事業予算は政府から県の一つの基金造成に充てられるにもかかわらず、その予算要求の窓口は、その「所掌事務」に応じて、本部・データセンター及び創薬・治験部門は経済産業省、早期診断部門(放射線関連を除く)は厚生労働省、放射線関連の診断部門及び教育・人材育成部門は文部科学省と、三つに分離されており、地元関係者は災害対応に追われているにもかかわらず、三つの省に要請・説明するという煩雑さを強いられている。
 また、議員立法で成立した「平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律」の第十四条に基づく「原子力被害応急対策基金」についても、当時の野田財務大臣から七月二十五日の衆議院東日本大震災復興特別委員会では第二次補正予算の予備費や第三次補正予算で「適切に予算措置対応させていただきたい」との答弁がなされているにもかかわらず、財務省は縦割りによる硬直的な予算執行・要求を求めているため、いまだその実現が行われていない。
 このような縦割りによる硬直的な方式は、予算要求時だけではなく、執行から会計検査に至るまで影響する問題であり、特に、災害復旧・復興のための基金事業など長期間の詳細な支出計画を、限られた期間で積み上げることが困難であり、予算計上後の柔軟な流用が求められる予算については大きな問題となる。通常の予算要求ではなく、災害復旧・復興という非常時においても硬直的な予算の要求・執行方式に固執している現政権の姿勢は、「政治主導ではなく、財務省主導」との批判が被災地からあがっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 「予備費は使途が明確となったものについてそれぞれの所管省庁の長の要請に基づき、財務大臣が閣議決定を求めるものであり、原子力応急対応として被災自治体が現場の判断で支出できるものとして特定の省庁の一括した要請に基づき、財務大臣が閣議決定を行うことはできない」という財務省から私が聴いた説明は、野田内閣の方針なのか。そうであるならば、七月二十五日の衆議院東日本大震災復興特別委員会における当時の野田財務大臣としての「基金の性格付けが決まるということになれば、(中略)復旧復興の予備費がございます。あるいは、この後、本格的な三次補正の編成も入ります。それらを視野に入れながら、適切に予算措置対応させていただきたい」との答弁との関係如何。また、基金のどのような「性格付け」が決まれば、予備費での対応ができるのか、被災地に寄り添った立場で、野田内閣の見解を明らかにされたい。

二 基金の造成に関する予算要求は、各省(大臣)が設置法に基づく所掌事務の範囲で行うとされているが、設置法の範囲外の事項について予算要求は一切認められないのか。認められないとすれば、その根拠は何か。また、野田内閣には、今般の震災対策においてそのような現状を改善しようとする意思はあるのか。あるのであれば、その改善策の具体的内容を明らかにされたい。

三 内閣府設置法第四条第七号「災害予防、災害応急対策、災害復旧及び災害からの復興(中略)に関する基本的な政策に関する事項」、同条第八号「前号に掲げるもののほか、大規模な災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における当該災害への対処その他の防災に関する事項」及び同条第三項第十四の二号「原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十五条第二項に規定する原子力緊急事態宣言、同条第三項に規定する緊急事態応急対策に関する事項の指示及び同条第四項に規定する原子力緊急事態解除宣言を行うこと並びに同法第十六条第一項に規定する原子力災害対策本部の設置及び運営に関すること」に基づき、第一次補正予算及び第二次補正予算に計上された事業名及び予算額を全て明示されたい。「平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律」の第十四条に基づく「原子力被害応急対策基金」を法律に規定する一定の自由度を担保した形で、これらの所掌事務の範囲で予算要求できないのか。できないのならば、その理由を明らかにされたい。

四 九月二十八日付け福島民報に一面で、「原子力被害対策・県基金創設見送り」という見出しの下、野田内閣が第三次補正予算として「原子力被害応急対策基金」の計上を行わない方針を決定したとあり、「法制化されたのに貴重な財源が失われる」、「県民の苦しみを忘れたか」との地元の嘆きとともに、野田政権が野党提出の法律に冷たく対応したことを、「政争の具」と批判しているが、事実関係を明らかにされたい。また、本議員立法の発議者の一人として、自主避難者への支援、福島全県民が求めている「精神的損害」への対応、幅広い間接被害者への支援など、原子力損害紛争審査会の中間指針では対象となっていない(又はその適用が不明確な)事業であって、早期救済が必要なものとして被災自治体が応急対応しうる基金を、第三次補正予算に計上すべきと考えるが、被災地に寄り添った立場で、前記一の七月二十五日の国会答弁を行った野田内閣総理大臣(当時は財務大臣)の見解を明らかにされたい。

五 複数の省庁が予算要求して造成された基金において、特定省庁が措置した資金を他の事業に使用することは可能か。不可能であるとすれば、その理由は何か。第二次補正予算に計上された原子力被災者・子ども健康基金及び一般的な基金を例にして示されたい。仮に、財務省を含む関連他省庁の同意が得られた場合は他の事業に使用することは可能か。不可能であるならば、法的措置を含めて、どのような対応をすれば可能となるのか明らかにされたい。

六 九月二十六日、国と沖縄県による沖縄政策協議会の部会を開き、より自由度の高い一括交付金の創設を柱とする「新たな沖縄振興策の検討の基本方向」を提示した。どのような「所掌事務」を根拠に一括交付金を計上することとなるのか、その考え方を明らかにされたい。また、「より自由度の高い」一括交付金として、今まで予算計上された実績があれば、その事業名及び予算額を全て明らかにされたい。さらに、今般の東日本大震災及び原発事故の被害を受けた自治体に対しても同様に「より自由度の高い」一括交付金を交付すべきと考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。

七 今後、復興庁が設置されることとなるが、設置された場合、本主意書において例示したような基金事業など、複数省庁に分散計上されている復旧・復興関連予算を一括して移替え、その執行、会計検査など、ワンストップで行えるようにするとともに、基金予算の中の細分化した勘定も統合するなどして、被災地にとって使いやすい予算を実現すべきと考えるが、野田内閣の見解を明らかにされたい。

  右質問する。