質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第二三二号

内閣参質一七七第二三二号
  平成二十三年七月二十九日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員岩城光英君提出建設現場の足場からの墜落事故に関する第三回質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員岩城光英君提出建設現場の足場からの墜落事故に関する第三回質問に対する答弁書

一の1について

 お尋ねの足場からの墜落防止措置の効果の検証については、足場が設置された状況での墜落・転落災害を対象として実施すべきものであり、その前提を異にする足場が設置されていない状況での墜落・転落災害を当該検証の対象とすることは適当でないと考える。

一の2について

 お尋ねについては、「ビルの窓の清掃作業」、「立木の剪定作業」等、作業の場所、作業に要する時間等からみて、作業床を設置することが現実的ではないと考えられる場合もあることから、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号。以下「規則」という。)第五百十八条第二項に規定する「作業床を設けることが困難なとき」を御指摘の「技術的に作業床を設けることができない場合」のみに限定することは適当ではないと考える。
 なお、御指摘の「本来、足場が設置されていなければならないにもかかわらず足場が設置されていない」建設現場については、事業者に対し、同条に基づき、足場を組み立てるなど、現場の実情に応じた方法による作業床の設置を指導しているところである。

二について

 厚生労働省としては、公共工事においては、発注時の仕様書により、足場の設置が必要な工事について、「手すり先行工法」の使用が指定されることが多いのに対し、民間工事においては、一般に、工法の指定がなされず、施工業者が現場の実態に応じ、工法を選択していることから、公共工事と比較して民間工事における「手すり先行工法」の採用率が低くなっているが、規則に基づく措置の履行確保はもとより、現場の実態に応じたより安全性の高い措置の実施についても指導を行ってきた結果として、民間工事においても、約二十パーセントの現場において、「手すり先行工法」が採用されているものと考える。なお、「手すり先行工法」が採用されていない現場においても、規則第五百六十四条第一項第四号に基づき、現場の実態に応じた墜落防止措置を講じることにより、墜落事故を防止することができると考える。
 また、「手すり先行工法」の義務化については、先の答弁書(平成二十三年五月十三日内閣参質一七七第一三七号)の三及び五についてで述べたとおりである。

三について

 厚生労働省においては、現在、平成二十二年度に発生した足場からの墜落・転落災害について、負傷災害を含めたデータの分析を行っているところであり、その結果も踏まえ、必要に応じ、所要の措置を講ずることとしている。
 なお、御指摘の報告書は、平成二十一年ではなく、平成二十一年度に発生した足場からの墜落・転落災害を対象として評価・検証を行った結果を取りまとめたものである。また、「平成二十二年に墜落・転落災害が急増に転じた」との御指摘については、平成二十二年に墜落・転落による死亡災害が前年と比較して増加した主たる要因は、「手すり先行工法」を採用することができない「つり足場」からの墜落・転落の増加によるものであることから、都道府県労働局及び関係団体に対し、「建設業におけるつり足場等からの墜落・転落による労働災害防止の徹底について」(平成二十二年六月二十九日付け厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室長事務連絡)を発出し、「つり足場」の組立て等の際における規則第五百六十四条第一項第四号に基づく墜落防止措置の遵守徹底等を図っているところである。

四及び六について

 御指摘の「親綱支柱を用いた安全帯取付設備の設置」については、例えば、最上層に上る前に親綱支柱をあらかじめ取り付け、親綱を設置することなどにより、労働者が足場の最上層に上った際に安全帯取付設備がある状態にするという方法を採れば、規則第五百六十四条第一項第四号に定める墜落防止措置に該当すると考える。
 厚生労働省としては、お尋ねの「手すり先行工法」による手すり枠等の設置については、規則第五百六十四条第一項第四号に定める墜落防止措置に含まれるものとして、「「手すり先行工法に関するガイドライン」について」(平成二十一年四月二十四日付け基発第〇四二四〇〇一号厚生労働省労働基準局長通達。以下「ガイドライン」という。)を示し、その普及に努めているところであり、現時点において、「手すり先行工法」による手すり枠等の設置について、同号に明記することは考えていない。
 厚生労働省としては、「手すり先行工法」については、先の答弁書(平成二十三年五月十三日内閣参質一七七第一三七号)の三及び五についてで述べたとおり、本年一月に同省の「足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会」が取りまとめた報告書を踏まえ、現時点においては、その義務化は必要ないと考えているものである。

五について

 厚生労働省としては、ガイドラインにおいて、手すり枠を安全帯取付設備として使用する場合には、「必要な強度を有していることを確認すること」としているところであり、このことが確認された場合には、手すり枠を安全帯取付設備として使用しても差し支えないこととしている。
 なお、御指摘の「報告書に掲載されている「組立・解体時における足場の最上層からの墜落・転落災害のうち、手すり先行工法を使用していた事案」中、安全帯を使用していなかったとして「不安全行動」を墜落原因にしている事案」については、「安全帯」を使用しなかったことに加え、足場から身を乗り出して部材を手渡すという行動があったことから、不安全行動があったと評価されたものである。