質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一六九号

内閣参質一七七第一六九号
  平成二十三年六月七日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員礒崎陽輔君提出東京電力福島第一原子力発電所の原子力災害に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員礒崎陽輔君提出東京電力福島第一原子力発電所の原子力災害に関する再質問に対する答弁書

一の1について

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)の第一号機について、平成二十三年三月十一日午後三時四十二分に全交流電源喪失を理由とする原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号。以下「原災法」という。)第十条第一項に基づく通報が東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)から経済産業省にあってから、同月十二日未明に原災法第十五条第一項第二号の事象である原子炉格納容器内圧力異常上昇に該当するとの通報が東京電力から同省にあるまでの間において、法令に基づいて政府が行った対応については、先の答弁書(平成二十三年五月二十四日内閣参質一七七第一四七号。以下「前回答弁書」という。)一についてでお答えしたとおりである。
 また、御指摘の「それに近接する期間」の範囲が必ずしも明らかではないが、平成二十三年三月十二日午前一時三十分頃には、菅内閣総理大臣が、海江田経済産業大臣とともに、経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)、原子力安全委員会及び東京電力より原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置の実施の必要性について説明を受け、これを了承した。同日午前六時五十分には、同大臣が、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十四条第三項の規定に基づき、東京電力に対し同容器内の圧力を抑制することを命令した。

一の2について

 福島第一原子力発電所第一号機について、平成二十三年三月十一日午後三時四十二分に全交流電源喪失を理由とする原災法第十条第一項に基づく通報が東京電力から経済産業省にあってから、同月十二日未明に原災法第十五条第一項第二号の事象である原子炉格納容器内圧力異常上昇に該当するとの通報が東京電力から同省にあるまでの間における東京電力の対応については、政府において網羅的に把握していない。

二の1について

 お尋ねについては、前回答弁書二の5についてでお答えしたとおりである。

二の2について

 御指摘の「空気操作弁に関する操作に着手した時点」が何を指すのか必ずしも明らかではなく、お尋ねにお答えすることは困難である。

二の3について

 東京電力によれば、お尋ねの「活動に着手した時刻」及び「現地に圧縮空気が到着した時刻」については把握していないとのことである。

二の4について

 平成二十三年五月十六日の東京電力からの報告によれば、同年三月十二日午前九時十五分頃に、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置の一環として電動弁を手動で二十五パーセント開放させたとのことである。それ以前の電動弁及び空気操作弁の開閉実績については、東京電力から報告を受けていない。

二の5について

 前回答弁書二の7についてでお答えしたとおり、御指摘の記者会見において、細野内閣総理大臣補佐官は、原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置が遅れた理由は技術的な問題及び作業現場の放射線量の高さであるとの報告を東京電力より受けた旨の発言をしている。御指摘の同補佐官の発言は、通常時の業務とは全く異なる福島第一原子力発電所の事故への対応に、東京電力が大変苦労しながら尽力しているとの趣旨で述べたものである。

三の1について

 お尋ねについては、前回答弁書三の1についてでお答えしたとおりである。

三の2の(1)について

 前回答弁書三の2についてでお答えしたとおり、東京電力によれば、淡水注入の停止時刻については、政府に連絡していなかったとのことであるが、菅内閣総理大臣、海江田経済産業大臣等は、淡水注入が停止した場合には、原子炉の冷却のために海水注入が必要となるとの認識で一致していた。

三の2の(2)について

 東京電力によれば、平成二十三年三月十二日午後三時二十分頃に、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置の実施状況を記載したファックスを、保安院及び関係機関として内閣官房、内閣府、文部科学省等へ送付したとのことである。同ファックスに、参考情報として「今後、準備が整い次第、消火系にて海水を炉内に注入する予定」と付記されていたことは事実であるが、原子力災害対策本部長である菅内閣総理大臣には当該事実は報告されていなかった。

三の2の(3)について

 東京電力によれば、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器については、平成二十三年三月十二日午後七時四分から継続して海水注入を実施していたとのことであるが、淡水注入の停止及び海水注入の開始については、菅内閣総理大臣及び海江田経済産業大臣は報告を受けていなかった。

三の2の(4)について

 平成二十三年五月二十三日の衆議院東日本大震災復興特別委員会における菅内閣総理大臣の御指摘の答弁は、同内閣総理大臣が、同年三月十二日午後六時から、海江田経済産業大臣、保安院、原子力安全委員会、東京電力等の関係者と共に行った会議の中で、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器への海水注入を実施した場合の再臨界を防ぐ方法等について検討を指示したことを述べたものである。
 また、御指摘の同年五月二日の参議院予算委員会における同大臣の答弁(以下「海江田経済産業大臣の答弁」という。)は、同大臣が、同年三月十二日午後五時五十五分に、東京電力に対して原子炉等規制法に基づく原子炉容器への海水注入等の実施命令を口頭で行い、また、保安院に対して当該命令に係る文書の作成を指示したことを述べたものである。

三の2の(5)について

 菅内閣総理大臣は、平成二十三年三月十二日午後七時四分に福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器内への海水注入が開始されたことについて、その時点では報告を受けていなかった。
 御指摘の海江田経済産業大臣の答弁は、同内閣総理大臣が、同日午後六時から、海江田経済産業大臣、保安院、原子力安全委員会、東京電力等の関係者と共に行った会議の中で、同容器内への海水注入を実施した場合の再臨界を防ぐ方法等について検討を指示し、その検討結果を踏まえて、同日午後七時五十五分に海水注入の指示を行ったことについて述べたものである。

三の2の(6)について

 御指摘の海江田経済産業大臣の答弁は、同大臣がその時点で把握していた情報に基づいたものである。東京電力によれば、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器については、平成二十三年三月十二日午後七時四分から継続して海水注入を実施しているとのことである。

三の2の(7)について

 御指摘の「指示」が何を指すのか必ずしも明らかではないが、海江田経済産業大臣は、平成二十三年三月十二日午後五時五十五分に、東京電力に対して原子炉等規制法に基づく原子炉容器への海水注入等の実施命令を口頭で行った。

三の2の(8)及び(9)について

 東京電力によれば、東京電力が官邸に派遣した者が、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器への海水注入について菅内閣総理大臣の了解が得られていないとの状況判断を東京電力本店原子力緊急時対策本部及び福島第一原子力発電所原子力緊急時対策本部に連絡し、双方が協議した結果、同容器内への海水注入を停止する決定をしたとのことである。

三の2の(10)について

 御指摘の海江田経済産業大臣の答弁は、同大臣がその時点で把握していた情報に基づいたものであるが、平成二十三年五月二十六日に、東京電力から、関係者からの聞き取りの結果実際には福島第一原子力発電所長の判断により福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器への海水注入を継続していたことが判明した旨の報告があったところである。
 東京電力が事実を正確に報告していなかったことは遺憾であり、保安院から東京電力に対して正確な報告を行うこと、また、新たな事実関係が判明した場合には速やかに報告するよう指導を行ったところである。

三の2の(11)について

 三の2の(5)についてでお答えしたとおり、菅内閣総理大臣は、平成二十三年三月十二日午後七時四分に海水注入が開始されたことについて、その時点では報告を受けていなかった。なお、同内閣総理大臣が当該海水注入について承知したのは、同年五月二十日に当該海水注入に関する報道がなされた後である。

三の2の(12)について

 福島第一原子力発電所第一号機における水素爆発と思われる爆発の原因については、現時点では特定できていない。

四の1について

 福島第一原子力発電所第二号機及び第三号機の各原子炉格納容器の圧力を抑制する措置については、それぞれ、その冷却機能の復旧が見込まれない状況でかつ内部の圧力が継続して上昇することが想定されたために行われたものであり、当該措置の実施は適当であったと考えている。御指摘の隔離時冷却系等が作動している段階での海水又は淡水の注入の実施の是非については、現時点において判断することは困難である。

四の2について

 平成二十三年五月二十三日の東京電力からの報告によれば、福島第一原子力発電所第二号機については、同年三月十四日午後零時頃まで隔離時冷却系が作動を継続し、原子炉圧力容器内の水位が維持されていたと考えられるとのことである。

五について

 原子力災害の拡大の防止等に必要な措置の実施については、原子力事業者に一義的な責任があると認識している。このため、お尋ねの「当該災害に係る原子炉に関する措置」の実施についても、一義的には東京電力が責任を負うものであると認識している。
 一方、国は、国土並びに国民の生命、身体及び財産を原子力災害から保護する使命を有することに鑑み、緊急事態応急対策等の実施のために必要な措置を講ずる等、その組織及び機能の全てを挙げて万全の措置を講ずる責務を有するものと認識している。このため、お尋ねの「当該災害に係る原子炉に関する措置」を実施する東京電力に対し、指示、指導その他の適切な措置を講ずることによって、当該責務を遂行しなければならないものと認識している。