質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四七号

内閣参質一七七第一四七号
  平成二十三年五月二十四日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員礒崎陽輔君提出東京電力福島第一原子力発電所の原子力災害に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員礒崎陽輔君提出東京電力福島第一原子力発電所の原子力災害に関する質問に対する答弁書

一について

 東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)の第一号機については、平成二十三年三月十一日午後三時四十二分に、全交流電源喪失を理由とする原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号。以下「原災法」という。)第十条第一項に基づく通報が東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)から経済産業省にあった。同日午後四時四十五分には、原災法第十五条第一項第二号の事象である非常用炉心冷却装置注水不能に該当するとの通報が東京電力から同省にあった。同日午後七時三分には、菅内閣総理大臣が、同条第二項に基づき「原子力緊急事態宣言」を発し、原災法第十六条第一項に基づき原子力災害対策本部を、原災法第十七条第八項に基づき原子力災害現地対策本部を設置し、直ちに、第一回原子力災害対策本部が開催された。同日午後九時二十三分には、原災法第二十条第三項に基づき、菅原子力災害対策本部長から関係地方公共団体の長に対し、福島第一原子力発電所から半径三キロメートル圏内の居住者等の避難のための立退き及び半径十キロメートル圏内の居住者等の屋内への退避について指示をした。同月十二日未明には、原災法第十五条第一項第二号の事象である原子炉格納容器内圧力異常上昇に該当するとの通報が東京電力から同省にあった。なお、「午後十時頃圧力容器内の圧力上昇が確認」されたとの御指摘については、東京電力から聞いておらず承知していない。

二の1について

 枝野内閣官房長官は、御指摘の「記者会見」において、東京電力から原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置を行うとの報告を受けた旨発表しており、同記者会見並びにこれと同時並行で行われた海江田経済産業大臣及び東京電力小森常務取締役の臨時共同記者会見が、同措置の実施に係る国民への事前発表であったと認識している。

二の2について

 菅内閣総理大臣が、ヘリコプターに搭乗する時点までに、福島第一原子力発電所の第一号機において原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置が実施されたとの連絡はなかった。また、福島第一原子力発電所に到着した後、同措置がまだ実施されていないとの報告を受けた。

二の3について

 視察団として線量計を携行し、絶えず放射線量を把握しながら視察を行ったところである。

二の4について

 御指摘の「ヘリコプターに同乗した内閣官房職員」が映像撮影を行ったのは、視察を記録するためである。また、撮影した映像を報道機関に提供したのは、同職員以外に同ヘリコプターに映像撮影を行う者が同乗していなかったことから、報道機関から映像提供を要請されたためである。

二の5について

 平成二十三年三月十二日午前一時三十分頃には、菅内閣総理大臣が、海江田経済産業大臣とともに、経済産業省原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)、原子力安全委員会及び東京電力より原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置の実施の必要性について説明を受け、これを了承した。同日午前六時五十分には、同大臣が、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)第六十四条第三項の規定に基づき、東京電力に対し原子炉格納容器内の圧力を抑制することを命令し、これを受け、同日午前十時十七分には、東京電力が同容器内の圧力を抑制する措置を実施した。
 東京電力からは、同措置を実施するに当たっては、外部電源が喪失し、照明も点灯しない中、作業員が放射線量の高い区域で作業をせざるを得なかったため、一定の時間がかかったと聞いている。

二の6について

 東京電力によれば、原子炉圧力容器内の圧力を抑制するための弁のうち電磁弁は電気がなければ開かないことについてあらかじめ承知しており、全交流電源喪失を理由とする原災法第十条第一項に基づく通報を行った平成二十三年三月十一日午後三時四十二分には、停電のために同弁が開かない可能性があることを認識していたとのことである。
 また、お尋ねの「手動弁」とは空気操作弁のことを指すと考えられるが、東京電力によれば、同弁は圧縮空気がなければ開かないことについてあらかじめ承知しており、同通報を行った時には、圧縮空気が確保できず同弁が開かない可能性があることを認識していたとのことである。
 さらに、東京電力によれば、二の5についてでお答えしたとおり、同日午前十時十七分には、原子炉格納容器の圧力を抑制する措置を実施しており、正確な時刻は明らかではないが、同措置の実施前に圧縮空気が確保できたとのことである。

二の7について

 御指摘の「記者会見」がどの記者会見を指すのか必ずしも明らかではないが、平成二十三年四月二十五日に行われた福島原子力発電所事故対策統合本部合同記者会見において、細野内閣総理大臣補佐官が、原子炉格納容器内の圧力を抑制する措置が遅れた理由は技術的な問題及び作業現場の放射線量の高さであるとの報告を東京電力より受けた旨の発言をしたところである。

三の1について

 東京電力によれば、清水代表取締役社長は、平成二十三年三月十二日午後二時五十分頃には、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器への海水注入の実施について確認・了解したが、同日午後三時三十分過ぎに水素爆発と思われる爆発が発生するなど作業の実施が極めて困難な状況であったため、同容器への海水注入が開始されない状況が続いていたとのことである。同日午後八時五分には、海江田経済産業大臣が、原子炉等規制法第六十四条第三項の規定に基づき、東京電力に対し原子炉容器への海水注入等の実施を命令し、これを受け、同日午後八時二十分には、東京電力が原子炉圧力容器への海水注入を開始した。

三の2について

 東京電力によれば、福島第一原子力発電所第一号機の原子炉圧力容器への海水注入の実施に関し平成二十三年三月十二日午後二時五十分頃に東京電力の清水代表取締役社長が確認・了解したことについては、その時点では政府に連絡していなかったとのことである。
 また、東京電力によれば、淡水注入の停止時刻については、政府に連絡していなかったとのことである。

三の3について

 菅内閣総理大臣は、福島第一原子力発電所第一号機への海水注入について、平成二十三年三月十二日午後六時から、海江田経済産業大臣、保安院、原子力安全委員会、東京電力等の関係者とともに行った会議の中で、検討を指示し、その検討結果を踏まえて、同日午後七時五十五分に海水注入の指示を行ったものである。