質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一四〇号

内閣参質一七七第一四〇号
  平成二十三年五月十三日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員浜田和幸君提出浜岡原子力発電所の耐震性及び運転計画に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田和幸君提出浜岡原子力発電所の耐震性及び運転計画に関する質問に対する答弁書

一について

 中部電力株式会社浜岡原子力発電所(以下「浜岡原子力発電所」という。)の第一号機及び第二号機の設置の許可に当たっては、科学技術庁(当時)が、「軽水炉についての安全設計に関する審査指針について」(昭和四十五年四月二十三日原子力委員会決定)を踏まえ、その破損により冷却材喪失を引き起こすおそれのあるもの、原子炉を緊急停止させ、かつ、安全停止状態に維持するために必要なもの、使用済燃料を貯蔵するための施設等Asクラスの耐震安全性が求められる設備等については、基盤で最大加速度四百五十ガルの水平地震動に対してその機能が保持される設計となっていること、また、原子炉事故の際に放射線障害から公衆を守るために必要なもの及びその機能喪失が公衆に放射線障害を及ぼすおそれのあるものであるAクラスの耐震安全性が求められる設備等については、基盤で最大加速度三百ガルの水平地震動に耐えられる設計となっていることを確認している。
 さらに、平成七年九月には、通商産業省(当時。以下同じ。)が、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(昭和五十六年七月二十日原子力安全委員会決定。以下「昭和五十六年指針」という。)を踏まえ、浜岡原子力発電所の耐震安全性を再確認しており、Asクラスの耐震安全性が求められる設備等については、解放基盤表面で最大加速度六百ガルの水平地震動に対してその機能が保持される設計となっていること、また、Aクラスの耐震安全性が求められる設備等については、解放基盤表面で最大加速度四百五十ガルの水平地震動に耐えられる設計となっていることを確認している。

二について

 浜岡原子力発電所の第三号機、第四号機及び第五号機の設置の許可に当たっては、通商産業省が、昭和五十六年指針を踏まえ、Asクラスの耐震安全性が求められる設備等については、解放基盤表面で最大加速度六百ガルの水平地震動に対してその機能が保持される設計となっていること、また、Aクラスの耐震安全性が求められる設備等については、解放基盤表面で最大加速度四百五十ガルの水平地震動に耐えられる設計となっていることを確認している。

三について

 中部電力株式会社が平成十九年に経済産業省原子力安全・保安院に提出した、浜岡原子力発電所の第三号機及び第四号機に係る「「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」の改訂に伴う耐震安全性評価結果報告書」(以下「中部電力の報告書」という。)によれば、東海地震、東南海地震及び南海地震の震源域が連動した場合の浜岡原子力発電所の敷地における水平地震動は、解放基盤表面で最大加速度七百六十六ガル、鉛直地震動は、解放基盤表面で最大加速度百四十九ガルであるとされている。なお、昭和五十六年指針においてAsクラス又はAクラスの耐震安全性を求めていた設備等は、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(平成十八年九月十九日原子力安全委員会決定。以下「平成十八年指針」という。)においてはいずれもSクラスの耐震安全性を求めているが、中部電力の報告書においては、これらSクラスの耐震安全性が求められる設備等については、解放基盤表面で最大加速度八百ガルの水平地震動及び最大加速度五百三十三ガルの鉛直地震動に対して、その機能が保持される設計となっているとしている。

四について

 浜岡原子力発電所の第三号機、第四号機及び第五号機の設置の許可に係る安全審査においては、浜岡原子力発電所の敷地内及び発電所から半径十キロメートル以内に、昭和五十六年指針において考慮すべき活断層は確認されていない。なお、中部電力の報告書によれば、平成十八年指針において考慮すべき活断層ではないが、浜岡原子力発電所の敷地内に四本の断層、また、発電所から半径十キロメートル以内に二本の断層が確認されている。

五について

 経済産業省においては、東京電力株式会社福島第一原子力発電所(以下「福島第一原子力発電所」という。)の事故を踏まえ、平成二十三年三月三十日に、全国の原子力発電所について、緊急安全対策の実施を電気事業者等に指示し、当該指示に対する電気事業者等からの報告を踏まえ、確認及び評価を行った結果、報告を受けた全ての原子力発電所について、緊急安全対策として直ちに講ずることとされている全交流電源喪失等対策が適切に実施されていることを確認したところである。これにより、福島第一原子力発電所の事故を引き起こしたものと同程度の津波により、全交流電源喪失に至ったとしても、注水により冷却を行い、炉心を管理された状態で維持することが可能となり、炉心及び使用済燃料の損傷を防止し、多量の放射性物質を放出することなく、冷温停止状態につなげることができると考えている。また、安全対策の信頼性を更に向上させるため、防潮堤の設置、原子炉建屋の水密化工事、空冷式非常用発電機の高所への設置等、各発電所の立地環境に応じた中長期的対策を進める計画を有していることも確認したところである。
 浜岡原子力発電所の緊急安全対策についても、その内容を確認した結果、適切に実施されているものと評価できるが、文部科学省の地震調査研究推進本部地震調査委員会が公表した「平成二十三年(二千十一年)一月一日を基準日として算定した地震の発生確率値」によれば、平成二十三年一月一日から三十年以内にマグニチュード八程度の想定東海地震が発生する可能性が八十七パーセントと極めて切迫しており、大規模な津波の襲来の可能性が高いことが懸念されるところである。このため、政府としては、浜岡原子力発電所については、安全対策の更なる信頼性向上の観点からこうした特別な事情を考慮する必要があり、想定東海地震による大規模な津波に十分耐えられる防潮堤の設置等の中長期的対策を終えるまでの間、全号機の原子炉の運転を停止すべきと判断し、同年五月六日、中部電力株式会社に対して、浜岡原子力発電所の全号機の運転停止を求めたところである。

六について

 いわゆる安全協定は、積極的な情報提供、事前協議等を求める関係自治体の要請に応じて、電気事業者等と関係自治体が任意に締結するものであるため、政府として関与する立場にない。