質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一五号

内閣参質一七七第一一五号
  平成二十三年五月二十日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員平山誠君提出高速増殖炉もんじゅに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員平山誠君提出高速増殖炉もんじゅに関する質問に対する答弁書

一の1について

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(以下「もんじゅ」という。)については、原子力政策大綱(平成十七年十月十一日原子力委員会決定)において、「十年程度以内を目途に「発電プラントとしての信頼性の実証」と「運転経験を通じたナトリウム取扱技術の確立」という所期の目的を達成することに優先して取り組むべきである。その後、「もんじゅ」はその発生する高速中性子を研究開発に提供できることを踏まえ、燃料製造及び再処理技術開発活動と連携して、高速増殖炉の実用化に向けた研究開発等の場として活用・利用することが期待される。」とされているところであるが、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故(以下「福島原発事故」という。)を受け、今後の高速増殖炉に係る政策を含む原子力政策の在り方については、福島原発事故の原因についての検証や国民各層の御意見等を踏まえて検討することとしている。
 また、お尋ねの「運転している期間の運営費」については、今後のもんじゅの在り方を踏まえて算出する必要があり、現時点でお答えすることは困難である。

一の2について

 今後の高速増殖炉に係る政策を含む原子力政策の在り方については、福島原発事故の原因についての検証や国民各層の御意見等を踏まえて検討することとしており、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難である。

一の3について

 高速増殖炉については、長期にわたりエネルギーを安定的に供給する等の観点から、原子力政策大綱において、「軽水炉核燃料サイクル事業の進捗や「高速増殖炉サイクルの実用化戦略調査研究」、「もんじゅ」等の成果に基づいた実用化への取組を踏まえつつ、ウラン需給の動向等を勘案し、経済性等の諸条件が整うことを前提に、二千五十年頃から商業ベースでの導入を目指す。」とされているところであるが、今後の高速増殖炉に係る政策を含む原子力政策の在り方については、福島原発事故の原因についての検証や国民各層の御意見等を踏まえて検討することとしている。

一の4について

 平成二十二年度におけるもんじゅ関係経費の決算額は、現在、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)において精査中であり、精査が終わり次第、原子力機構のホームページに掲載される予定である。

一の5について

 原子力機構によれば、平成七年度から平成二十二年度までにおけるもんじゅ関係経費の予算の内訳は、平成七年度が「運転・維持管理費」、平成八年度から平成十二年度までが「運転・維持管理費」及び「原因究明・総点検関連費」、平成十三年度から平成二十年度までが「運転・維持管理費」、「改造工事関連費」及び「長期停止設備点検費等」、平成二十一年度が「運転・維持管理費」、「改造工事関連費」、「長期停止設備点検費等」及び「耐震裕度向上費」、平成二十二年度が「運転・維持管理費」、「長期停止設備点検費等」及び「耐震裕度向上費」となっているが、決算については、このような内訳で区分して整理していないとのことである。
 また、これらのもんじゅ関係経費の支出により、ナトリウム漏えい対策のための設備の改造工事や、長期間稼動を停止した設備の点検、補修等が行われ、平成二十二年五月からの試運転の再開が可能となったところである。

一の6について

 御指摘の「高速増殖炉サイクル実用化研究開発」に係る事業については、平成十八年度から実施しているところ、各年度の予算額は、平成十八年度が約六億円、平成十九年度が約六十五億円、平成二十年度が約八十二億円、平成二十一年度が約百十億円、平成二十二年度が約百三億円、平成二十三年度が約百億円である。決算額については、事業実施主体である原子力機構によれば、当該事業に係る決算額を区分して整理していないとのことであり、お答えすることは困難である。
 また、「発電用新型炉等技術開発委託費」に係る事業については、平成十九年度から実施しているところ、各年度の予算額及び決算額は、それぞれ、平成十九年度が約三十二億円及び約三十二億円、平成二十年度が約四十四億円及び約四十四億円、平成二十一年度が約五十三億円及び約五十三億円であり、平成二十二年度及び平成二十三年度の予算額は約五十六億円及び約七十四億円である。
 なお、これらの事業費は、いずれももんじゅの運営のための経費ではない。また、これらの事業の各年度における実施内容については、原子力機構の各年度の業務実績報告書に掲載されており、平成十八年度から平成二十一年度までの業務実績報告書は原子力機構のホームページに公表されているところである。

一の7から9までについて

 高速増殖炉の実証炉及び商業炉については、もんじゅと同様の発電方式及びナトリウムによる冷却方式を採用し、もんじゅの成果がいかされるものとして検討されてきたところであるが、今後の高速増殖炉に係る政策を含む原子力政策の在り方については、福島原発事故の原因についての検証や国民各層の御意見等を踏まえて検討することとしている。

二について

 各国における高速炉技術の利用に関する考え方等については、それぞれの国のエネルギー情勢を取り巻く経済的、社会的な事情等により異なるものであり、他国におけるその利用実態等について評価することは差し控えたい。エネルギー資源に乏しい我が国では、原子力政策大綱において、「高速増殖炉サイクル技術は、長期的なエネルギー安定供給や放射性廃棄物の潜在的有害度の低減に貢献できる可能性を有することから、これまでの経験からの教訓を十分に踏まえつつ、その実用化に向けた研究開発を、日本原子力研究開発機構を中核として着実に推進するべきである。」とされているところであるが、今後の高速増殖炉に係る政策を含む原子力政策の在り方については、福島原発事故の原因についての検証や国民各層の御意見等を踏まえて検討することとしている。

三の1について

 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第六十二条の三の規定に基づき原子力機構から経済産業大臣に対してなされた報告によると、もんじゅにおいては、平成二十二年五月の試運転再開後、同年八月二十六日の炉内中継装置の引き抜き作業中、炉内中継装置が落下し、これにより、炉内中継装置が変形してこれを通常の方法により引き抜くことができず、燃料交換を行うことができなくなったことが同年十一月九日に確認され、また、同年十二月二十八日に、非常用ディーゼル発電機のうち一機について、分解点検後の起動試験中にシリンダライナ部にひび割れがあることが発見され、所定の機能を果たすことができなくなったことが確認されている。なお、御指摘の「制御棒の挿入が中断」された件については、安全上の問題はなく、その後も制御棒は有効に機能してきたところである。

三の2について

 三の1についてで述べた炉内中継装置の変形及び非常用ディーゼル発電機のひび割れの事象については、もんじゅの設置者である原子力機構が適切に対処すべきものであるが、経済産業省原子力安全・保安院においては、これまでに、現場確認を行い、これらの事象が施設の安全性に直ちに影響を与えるものではないことを確認しており、また、原子力安全委員会は、経済産業省からその報告を受けている。

三の3及び4について

 原子力機構によれば、平成二十二年八月にもんじゅで発生した炉内中継装置の落下に係る原因調査や復旧作業のためにこれまでに締結した契約の金額は、約十八億円であり、また、現在、炉内中継装置の落下の再発防止対策等についても検討しているとのことである。また、炉内中継装置の落下に伴い必要となった費用の負担については、原子力機構において、炉内中継装置の落下の原因究明が完了した後に検討される予定である。

三の5について

 もんじゅの廃止措置は、今後開発を必要とする高速増殖炉に固有の廃止措置技術が一部必要となるものの、大部分は、既に実施されたことがある軽水炉等に係る廃止措置の技術を活用することが可能であると考えている。その費用については、原子力機構において、今後の廃止措置技術の開発状況を踏まえて算出されることとなる。

三の6について

 原子力機構によれば、高速実験炉「常陽」については、平成二十五年度頃に復旧作業を完了させることを目指し、現在、安全性に配慮しつつ、慎重に復旧作業の準備を進めているところであり、お尋ねの「事故の調査、修復等」に要する費用の総額は確定していないとのことである。

三の7及び8について

 今後の高速増殖炉に係る政策を含む原子力政策の在り方については、福島原発事故の原因についての検証や国民各層の御意見等を踏まえて検討することとしている。