質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第九四号

内閣参質一七七第九四号
  平成二十三年三月八日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員中西健治君提出日本郵政グループの運営に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員中西健治君提出日本郵政グループの運営に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの具体例としては、例えば、郵便局株式会社の社員による自動車を使用した郵便物の取集が困難になったことが挙げられる。これは、郵便局株式会社が郵便事業株式会社から委託を受けて行う自動車による郵便物の取集は、一般貨物自動車運送事業に該当するため、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第八十三号)に基づく要件を満たす必要があるが、郵便局株式会社が現状のまま単独でこの要件を満たすことは困難であるためである。

二について

 政府としては、日本郵政株式会社が郵便事業を適正な利益を確保するよう能率的に経営すべきと考えており、第百七十六回国会に提出した日本郵政株式会社法案第八条に規定する同社による関連銀行(同法案第二条第一項に規定する関連銀行をいう。)及び関連保険会社(同条第二項に規定する関連保険会社をいう。)の議決権の保有は郵便事業の損失を補填して日本郵政グループ全体の利益を確保する目的で定めるものではない。

三について

 第百七十六回国会に提出した郵政改革法案(以下「法案」という。)附則においては、法案の成立後、その施行のための準備の期間を置くこととし、「この法律は、平成二十四年四月一日から施行する。」とされているのに対し、郵政改革担当大臣及び総務大臣の談話「郵政改革に関連する諸事項等について」(平成二十二年三月二十四日付け)の1.(2)においては、「郵政改革法案成立に合わせて新しい限度額に移行する。」とされているので、前回の答弁書(平成二十二年十二月三日内閣参質一七六第一二二号)六についてにおいて「施行前に引き上げるなどの方針を表明した」と答弁したところである。

四の1及び2について

 郵政民営化法(平成十七年法律第九十七号)第百十条の規定は郵便貯金銀行(同法第九十四条に規定する郵便貯金銀行をいう。以下同じ。)の業務の制限に係るものであるが、政府としては、現在の郵便貯金銀行の業務は、他の金融機関等との間の適正な競争関係及び同種の業務を行う事業者との競争条件の公平性を阻害するものとはなっていないと考えている。
 また、郵政民営化法第百十一条の規定は郵便貯金銀行の子会社保有の制限に係るものであるが、現在、郵便貯金銀行について、他の金融機関等との間の適正な競争関係及び同種の業務を行う事業者との競争条件の公平性を阻害する事由は生じていないと考えている。

四の3及び4について

 第百七十六回国会に提出した郵政改革法及び日本郵政株式会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案により郵政民営化法が廃止され、法案に郵政改革の基本理念及び基本方針が定められることに伴い、その基本理念を考慮することとするとともに基本方針に条文の表現を合わせることとしたものである。

四の5について

 郵政民営化法第百七条においては、郵便貯金銀行の預入限度額を「他の金融機関等との間の競争関係に影響を及ぼす事情、郵便貯金銀行の経営状況その他の事情を勘案して政令で定める」とされているところであり、法案が成立した場合にその事情も含めて勘案した結果、預入限度額を引き上げることが適切と判断されるならば、郵政民営化法の下で、政令を変更し、預入限度額の引上げを行うことは、同条の規定に反するものではないと考えている。

五の1について

 郵便事業株式会社の営業損益見通しにおける営業赤字については、複数の要因が複合的に影響しているため、郵政事業の物的・人的資源が分割されたことが与える影響のみを特定し、正確に算定することは困難である。

五の2について

 お尋ねの郵便事業株式会社において昨年十二月に実施した非正規社員の正社員化の取組に係る人件費の増加分については、同社から、約二十九億円と聞いている。
 また、日本郵政グループ及び郵便事業株式会社の平成二十三年度における非正規社員の正社員化の取組に係る人件費の増加分の見込みについては、日本郵政株式会社及び郵便事業株式会社からは、試算していないと聞いている。

五の3について

 お尋ねの日本郵政グループの非正規社員の削減については、日本郵政株式会社からは、郵便事業株式会社において、要員の適正配置のための取組として退職者の募集や雇用調整を行った上でやむを得ない場合に行うことが検討されており、その対象者の数をあらかじめ定めているものではないと聞いている。

五の4について

 お尋ねの非正規社員の正社員化については、郵便事業株式会社が、即戦力となる非正規社員の正社員への登用により、安定した雇用環境を提供することによる士気の向上と業務運行の円滑化やサービス品質の向上を図るために実施したと承知しており、また、「非正規社員を減らす方針」との報道については、平成二十二年十一月十二日公表の同社の平成二十二年度中間決算及び同年度通期見通しから、厳しい経営状況が明らかになり、要員の適正配置のための取組として、同社において検討されているものと認識している。