質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第八九号

内閣参質一七七第八九号
  平成二十三年三月四日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員又市征治君提出郵政における非正規社員の雇用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員又市征治君提出郵政における非正規社員の雇用に関する質問に対する答弁書

一の1について

 御指摘の郵便物の減少は事実であり、その要因は、例えば電子メールの普及や、景気の落込みによる企業の通信費の削減等様々であると考えられる。
 また、総務省としては、「信書に該当する文書に関する指針」(平成十五年総務省告示第二百七十号)を告示し、信書の考え方を明らかにするとともに信書に該当する文書の考え方を分かりやすく示すことで、信書の送達に関する制度の周知に努めており、また、法令に違反して、信書を送達し、又は信書の送達を委託する行為を把握した場合、当該行為を行った者に対する指導等を行っているところであり、今後とも信書の送達に関する制度の適正な運用に努めてまいりたい。

一の2について

 平成二十二年度中間決算における郵便事業株式会社の収支悪化の主たる原因は、総務大臣が平成二十二年十一月十五日に発出した「平成二十二年度中間決算に関する郵便事業株式会社法第十三条第一項に基づく報告徴求」に対する同社からの平成二十三年一月二十八日付け報告(以下「収支改善報告」という。)によれば、郵便物数の減少等による収益減及びJPエクスプレス株式会社からの事業承継に関連した営業損失の拡大によるものである。
 また、郵便事業株式会社の人員の配置については、同社の経営判断に基づき適切に決定されるべきものであるが、一般論としては、人員の配置に当たっては適正な業務運行が確保され、「混乱・遅配」などが発生することがないようになされるべきものと考える。

一の3について

 郵便物の需要喚起策の検討は、郵便の業務を営むことを目的としている郵便事業株式会社において行われるべきものであり、例えば、同社の平成二十二事業年度事業計画においては、郵便物の需要喚起策について「個人のお客様、法人のお客様、それぞれのニーズを的確にとらえ、心から満足していただけるサービスを提供できるよう、研修・教育の実施等により誤配達を防止するなど、品質の向上に努めるとともに、既存サービスの内容・価格の見直しや、改善・拡充、新規サービスの開発を行ってまいります。なお、お客様の利便性向上のため、持ち戻り郵便物等の二十四時間再配達依頼自動受付(IVR)サービスの全国展開」を実施するとの記述がなされている。

二の1について

 宅配便事業の統合計画は、平成十九年十月五日に日本郵政株式会社と日本通運株式会社(以下「日本通運」という。)との間で締結された基本合意書に基づき、郵便事業株式会社の宅配便事業(以下「ゆうパック事業」という。)を切り出し、新たに設立されるJPエクスプレス株式会社において日本通運のペリカン便事業と統合する形態で計画が進められたものであるが、日本郵政株式会社において経営陣が交代した後、郵便事業株式会社において、当該計画を見直し、ゆうパック事業を切り出さずに、日本通運からJPエクスプレス株式会社に承継されたペリカン便事業をゆうパック事業に吸収する形態を、同社の経営上最も有利な案として採用し、同社の平成二十一事業年度事業計画の変更認可申請の内容として位置付け、政府としては、この事業計画の変更を妥当と判断し認可したものである。なお、当該基本合意書については、日本郵政株式会社の旧経営陣の主導により締結され、郵便事業株式会社は当該基本合意書の締結について、その直前まで知らされていなかったことが、総務省において平成二十二年一月十二日から同年五月十七日にかけて開催された「日本郵政ガバナンス検証委員会」において明らかとなっている。

二の2について

 お尋ねの郵便事業株式会社及びJPエクスプレス株式会社それぞれの設備投資の額等については、これらの社が公表を前提としていない経営情報であり、政府としてその額についてお答えすることは差し控えたい。

二の3について

 お尋ねの「統合およびそれに伴う遅延等の一時的な混乱に対応するための臨時増員」の支社別、期別の人数及び人件費については、政府として承知していない。

二の4について

 郵便事業株式会社は、その経営責任において、収支改善報告に記載されているとおり、使用設備の見直し、要員の適正配置等による収支改善に取り組むこととしているものと承知している。

三の1及び2について

 お尋ねの「会社の人件費全体のうち郵政三事業または会社間の共通業務と算定している部分」の意味するところが必ずしも明らかではないが、日本郵政株式会社、郵便局株式会社、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険(以下「日本郵政グループ各社」という。)の社員はそれぞれの会社に所属していることから、その人件費もそれぞれの会社に計上されているものであり、政府としては、日本郵政グループ各社の間で人件費が「配分」されることはないものと承知している。
 いずれにせよ、政府としては、日本郵政グループ各社の人件費については、それぞれの経営判断に基づき適切に決定されるべきものと考える。

三の3について

 日本郵政グループ各社は、日本郵政公社の業務等の承継に関する基本計画(平成十八年内閣府・総務省告示第一号。以下「基本計画」という。)に示された日本郵政グループ各社の目的が達成され、その業務が適切に行われるよう、かつ、日本郵政グループ各社の経営の健全性が確保されるよう承継させるものとするという考え方に基づき、日本郵政公社から資産及び債務を承継した。
 「郵便事業に五千億円超の資本注入」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねにお答えすることは困難であるが、日本郵政株式会社は、基本計画に示された考え方に基づき、郵便事業株式会社の資本金を千億円とし、及び資本剰余金を千億円とする日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画を作成し、内閣総理大臣及び総務大臣に認可申請を行い、内閣総理大臣及び総務大臣が、当該認可申請を審査し、認可を行ったものである。

四について

 非正規社員の雇用の在り方については、郵便事業株式会社の経営判断に基づき適切に決定されるべきものであり、政府としては、個別の事柄について常にその逐一を承知して見解を述べる立場にはないが、一般論としては、労働者の雇用に配慮することは重要であると考えている。

五について

 日本郵政グループ各社において、適正なサービスが円滑に提供され、「従業員資質の向上による安定した、競争力のある、良質な業務体制を確立する」ことは重要であると認識しているが、日本郵政グループ各社の人事施策については、政府として、個別に働きかけを行うべきものではなく、日本郵政グループ各社の経営判断に基づき適切に決定されるべきものであることから、見解を述べることは差し控えたい。
 御指摘についての日本郵政株式会社の見解は、業務運行やサービス品質面の強化を図るため、引き続き、非正規社員から正社員への登用を行うとともに、正社員と非正規社員とでは、一般的に業務の内容とそれに伴う責任の程度や人材活用の仕組み・運用などに違いがあることから、その処遇を単純に比べることはできないものと考えるが、今後とも、日本郵政グループ各社の経営状況を踏まえつつ、非正規社員の処遇改善に努めていきたいとのことである。