質問主意書

第177回国会(常会)

答弁書


答弁書第二九号

内閣参質一七七第二九号
  平成二十三年二月四日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員山谷えり子君提出電磁波に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山谷えり子君提出電磁波に関する質問に対する答弁書

一について

 世界保健機関(以下「WHO」という。)が御指摘の「電磁波過敏症」についての正式見解を示したファクトシートのナンバー二百九十六においては、その症状が電磁界曝露と関連するような科学的根拠はなく、また、これは医学的診断でもなければ単一の医学的問題を表しているかどうかもはっきりとしていないとの見解が示されており、政府としては、現時点では、これについての医学的な疾病概念は確立していないものと考えている。

二について

 政府としては、携帯電話等からの電磁波による健康被害であることが医学的に明らかになった事例は承知していない。

三について

 一についてでお答えしたとおり、政府としては、現時点では、御指摘の「電磁波過敏症」についての医学的な疾病概念は確立していないものと考えており、お尋ねの「専門医の設置」については、検討の段階にはないものと考える。
 また、我が国の医療保険制度においては、疾病ごとに保険適用の対象となるか否かを定めておらず、検査、処置等の診療行為ごとに保険適用の対象となるか否かを定めているところである。このため、御指摘の「電磁波過敏症」であるか否かにかかわらず、頭痛などの症状に対する診療行為については、当該行為が医学的な必要性に基づき疾病に対するものとして適切に行われている場合には、医療保険の適用対象となるものである。

四について

 政府としては、従前から、電磁波の人体に対する影響等について、国内外の情報の収集、各種研究調査、これらの成果に係る情報の提供等に取り組んできているところであり、引き続きその着実な実施に努めてまいりたい。

五について

 WHOが超低周波電磁界の健康影響についての正式見解を示したファクトシートのナンバー三百二十二においては、高レベルの磁界への短期的曝露によって生じる健康影響に関しては、国際非電離放射線防護委員会(以下「ICNIRP」という。)等が示す国際的な曝露ガイドラインの制限値を規制基準値として採り入れるべきであるとの見解が示されているが、低レベルの磁界への長期的曝露によって生じる健康影響に関しては、その科学的証拠が不確かであり、恣意的に低い曝露限度の採用に基づく政策は是認されない等の見解が示されている。その上で、欧米諸国において四ミリガウスから十ミリガウスまでの値を国内全域で採用している例は承知していない。
 また、同ファクトシートにおいては、低レベルの磁界への長期的曝露によって生じる健康影響に関して、〇・四マイクロテスラ(四ミリガウスに相当)程度の超低周波磁界と小児白血病の間に、因果関係があるといえるほどの強い証拠は見当たらないとの見解が示されている。
 我が国においては、電力設備から発生する超低周波磁界に関しては、これまで規制を行っていなかったが、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会電力安全小委員会電力設備電磁界対策ワーキンググループが、同ファクトシートの見解を踏まえ、平成二十年六月に報告書を取りまとめたことを受け、現在、経済産業省原子力安全・保安院において、電気工作物の保安及び公共の安全の確保の観点から、平成二十二年十一月にICNIRPにより発表された「時間変化する電界および磁界へのばく露制限に関するガイドライン(一ヘルツから百キロヘルツまで)」に基づき、新たに規制を策定することを検討しているところである。

六について

 電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第二十一条の三に規定する御指摘の「高周波の規制値」については、ICNIRPにより平成十年四月に発表され、WHOが遵守することを推奨している「時間変化する電界、磁界及び電磁界へのばく露制限のためのガイドライン(三百ギガヘルツまで)」に定められている規制基準値と同等であることから、現時点において、これを見直す必要はないと考えている。なお、同ガイドラインの規制基準値と同等の値は、欧州連合加盟国を始め、多くの国で採用されていると承知している。

七について

 御指摘の「比吸収率」の概念及び無線設備規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十八号)第十四条の二に規定するその具体的な規制値については、総務省が全国各地で開催している電波の安全性に関する説明会や、パンフレット等を通じて周知しており、引き続きその着実な実施に努めてまいりたい。また、携帯電話事業者各社においては、ホームページ等を通じて、携帯電話端末ごとの比吸収率の値を周知していると承知している。

八及び九について

 電磁波の人体への影響に係る措置については、携帯電話に関しては、六について及び七についてでお答えしたとおり、既に電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)に基づき、電波法施行規則及び無線設備規則において、規制値等を定めているところである。また、電力設備に関しては、五についてでお答えしたとおり、新たに規制を策定することを検討しているところである。
 政府としては、このような対応により、子どもを含む人の健康に対し、十分に安全の確保が図られるものと考えている。

十について

 携帯電話用基地局の設置に関し、携帯電話事業者と当該基地局の周辺地域の住民との間で訴訟により係争中となっているものの件数は、平成二十二年末現在において三件と承知しているが、それぞれの訴訟の内容については承知していない。