質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第二一五号

地下水汚染の未然防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年六月二十九日

加 藤 修 一   


       参議院議長 西 岡 武 夫 殿



   地下水汚染の未然防止対策に関する質問主意書

 改正水質汚濁防止法で新たに地下水汚染の未然防止対策が義務付けられたように、これまでの多くの地下水汚染事例は、当該対策が十分ではない状態で発生したものである。
 そこで、以下質問する。

一 地下水汚染の未然防止対策の円滑な実施について

 改正水質汚濁防止法に基づく新たな規制の導入に際しては、その必要性について事業者の理解を深め、円滑な実施を図る必要がある。
 そのためには、環境省がマニュアルを作成し、さらに、関係する事業者団体の協力を仰ぐなどの方策が考えられるが、この点について、政府はどのような対応を考えているのか、見解如何。

二 有害物質を貯蔵する施設等の構造等に関する的確な基準の策定について

 改正水質汚濁防止法に基づく有害物質を貯蔵する施設等の構造等に関する基準の策定に当たっては、地下水汚染の未然防止が十分に図られる基準とする必要があるが、その一方で、業種や事業場ごとに施設や作業の実態が異なることなども考慮し、過度な負担とならない的確な基準を策定することが求められる。
1 そこで、どのような基準が策定されるかは、非常に重要な点であることから、基準の策定方針について見解を示されたい。
 また、現在、条例に基づく基準や業界団体のマニュアルにおける基準などがあるが、新たに法律に基づき策定される基準は、これらと比較してどのような水準のものになるのか、併せて見解を示されたい。
2 構造等に関する基準などについては、中央環境審議会の答申では、「さらなる検討の場を設け、関係業界の意見も十分に反映しながら決めていく必要がある。」とされている。
 答申を検討した「地下水汚染未然防止小委員会」のメンバーは、限られた業界の関係者となっていたが、「さらなる検討の場」には、電気めっき業界やクリーニング業界なども含めた幅広い業界の関係者の参画が必要だと考える。政府の見解を示されたい。

三 消防法の適用を受けるガソリン等の貯蔵施設の地下水汚染対策について

 ガソリン等の貯蔵施設については、消防法において改正水質汚濁防止法と同等の措置が規定されており、改正水質汚濁防止法の措置の対象外となっている。しかしながら、こうした施設が原因の地下水汚染も生じていることから、消防担当部局などと十分連携を取り合って、効果的な対応が行われることが望ましい。この点について、政府の見解を示されたい。

四 有害物質の貯蔵場所や作業場所の地下水汚染対策について

 施設以外の有害物質の貯蔵場所や作業場所は、施設と異なりその特定が困難であることから、改正水質汚濁防止法の規制の対象外であるが、こうした場所からの有害物質の漏洩・地下浸透も確認されている。したがって、貯蔵場所や作業場所からの有害物質の漏洩・地下浸透の防止についても、ガイドラインを策定するなどして取組を促進する必要があるが、政府としてはどのような対応を考えているのか、見解を示されたい。

五 窒素汚染や畜産系等の地下水汚染について

 作物の肥料となる窒素がなければ、世界の食糧は不足する。しかし、窒素酸化物が一八六〇年の三十倍に急増しており、人類が窒素の排出量を削減しなければ、海も人類も死滅する。次の環境脅威は窒素汚染と警告する論文が「Science」誌の二〇〇八年五月十六日号に掲載された。
 論文では、「窒素酸化物は空気中のオゾン濃度を上昇させ、呼吸器系疾患を引き起こし、作物の収穫量を減らす。また、酸性雨をもたらし、酸素を大量消費する海藻の異常繁殖を促して漁業に被害をもたらす恐れもある」と指摘している。
1 これら窒素汚染について警告を発した、「国際窒素イニシアティブ」(INI)の研究者の活動についてどう認識しているのか示されたい。
2 特に問題となっている、「窒素酸化物」による窒素汚染に関する国際的及び国内的広がりについてどう認識し、対策を進めているのか明らかにされたい。
 特に、日本国内の総量をどの程度と見積もっているのか示されたい。
3 水中の硝酸イオンと硝酸塩に含まれている硝酸態窒素は、血液の酸素運搬能力を奪い、特に乳幼児を窒息死の危険に晒すほか、体内で亜硝酸態窒素に変化すると、発ガン物質になり、毒性も強くなるといわれている。また、硝酸態窒素による汚染は、主に地下水で進んでいると指摘されている。
 さらにメキシコ湾では、中西部の農場からの窒素流出により湾内に低酸素ゾーンが発生し、魚介類の死滅や沿岸域での窒息死した有毒な藻類の発生が報告されている。
 そこで、水道水には厚生労働省が「硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素」の基準を設定し、環境省も水に同じ環境基準を設定している。政府は、窒素サイクルでの人間活動の影響を示す「窒素のフットプリント」を作成すべきと考えるが、見解を示されたい。

  右質問する。