質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一八一号

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」の情報開示に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年六月二日

森 まさこ   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」の情報開示に関する質問主意書

一 平成二十三年五月十六日の参議院決算委員会において、内閣法制局長官は、国民にとって知る権利は十分尊重されるべきものであり、政府は国民に関係する情報を保有している場合にはそれを公開すべき旨、答弁した。
 この見解に照らし、政府が、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」による福島第一原子力発電所事故に起因する放射線の計測・拡散予測情報を、事故発生後長期間にわたり公表をしていなかったことは、国民の知る権利を害する重大な問題であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 政府は、福島第一原子力発電所の事故が継続中であることに鑑み、今後「SPEEDI」からの情報を始め、政府が取得する国民に関連する重要情報を隠蔽することなく、速やかに国民に開示する必要があると考えるが、その実践のために政府はどのような対策を講ずるのか、明らかにされたい。

三 平成二十三年五月十二日、東京電力株式会社は、福島第一原子力発電所一号機において、原子炉圧力容器内の全ての核燃料棒が溶融して崩落する、いわゆるメルトダウンが起きていることを発表した。
 次いで五月十五日、東京電力株式会社は、平成二十三年三月十一日の東日本大震災による巨大津波の到達後、冷却系の停止により原子炉圧力容器内の核燃料棒が全露出するに至り、同日午後七時三十分前後から核燃料棒の溶融が始まり、翌十二日午前六時五十分頃にはメルトダウンを起こしていたことを、震災後二か月以上経過した後に発表した。
 また、五月二十四日には、東京電力株式会社は、福島第一原子力発電所二号機、三号機についてもメルトダウンがあったとの解析結果を発表した。
 このように、福島第一原子力発電所事故に関連し、周辺住民のみならず全国民にとって極めて重要な情報が、東京電力株式会社により発表されているが、政府は東京電力株式会社の発表以前にこれらの情報を取得していなかったのか。取得していたのであればそれはいつのことか。また、東京電力株式会社の発表までの間、政府からの公表がなかったのは如何なる理由によるものか、明らかにされたい。

四 「SPEEDI」による放射線の計測・拡散予測情報の開示の遅れ、そして福島第一原子力発電所の炉心溶融に関する情報の開示の遅れ等を受け、情報開示に関する政府の姿勢に対して被災地の住民を始め国民は大いに不信を募らせている。
 この事態に鑑みて確認するが、現在政府は福島第一原子力発電所の事故に関して公表していない情報は無いか、明らかにされたい。

五 「SPEEDI」の運用と情報の伝達・開示について、以下のとおり質問する。

1 平成二十三年五月十六日の参議院決算委員会において、内閣府原子力安全委員会は、平成二十三年三月十一日の地震とそれに続く津波により、福島第一原子力発電所は外部電源喪失によって当該原子力発電所からの放射線の放出情報が発信できない状態となり、「SPEEDI」の本来の目的での予測計算ができない状態となったと答弁したが、福島第一原子力発電所からの放出情報が入手できない状態であったのはいつまでか、正確な日時を明らかにされたい。
2 単位放出量に基づく放射線拡散予測情報の作成を開始したのはいつからか、正確な日時を明らかにされたい。
3 外部電源喪失により福島第一原子力発電所からの放射線の放出情報が発信できない状態であったということであるが、その他の計測地点からの情報により放射線の拡散予測情報を構成することは可能であったとされている。福島第一原子力発電所からの放出情報が入手できない状態であることを明示した上で放射線の拡散予測情報を開示すべきであったと考えるが、なぜ、開示しなかったのか、政府の見解を明らかにされたい。
4 外部電源喪失により福島第一原子力発電所からの放射線の放出情報が発信できない状態であったことを理由として「SPEEDI」の情報を公開しないという意思決定は、いつ、誰が行い、その決定はその後誰に報告されたのか。正確な日時とともに明らかにされたい。
5 外部電源喪失により福島第一原子力発電所からの放射線の放出情報が発信できない状態であったことを理由として「SPEEDI」の情報を公開しないという意思決定は、政府の原子力災害対策本部に報告されたのか。また、当該決定はいつ菅内閣総理大臣に報告されたのか。それぞれ正確な日時とともに明らかにされたい。
6 福島県に「SPEEDI」からの情報が送られ始めたのはいつからか、正確な日時及び情報の発信者と受信者について明らかにされたい。
7 福島県に送られた「SPEEDI」からの情報が住民に伝えられなかったのは如何なる理由によるものか。また、福島県から各市町村に対しては伝えられたのか、明らかにされたい。
8 政府又は原子力安全委員会は、「SPEEDI」からの情報を自治体に伝達した際に、これを外部に開示しないように指示をした事実はあるか。また、その指示はどこで行われたのか。それぞれ正確な日時とともに明らかにされたい。
9 原子力災害対策本部に対し、文部科学省又は原子力安全技術センターから「SPEEDI」の存在が報告されたのはいつか。また、「SPEEDI」からのデータが報告されたのはいつか。それぞれ正確な日時を示されたい。さらに、事故発生からこの時点までの間、報告がなされていなかったのは如何なる理由によるものか、明らかにされたい。
10 「SPEEDI」の運営とその情報の取扱いは、原子力災害対策マニュアル及び指針により規定されているものと承知しているが、今回の原子力災害においてそのマニュアルどおりの運営と情報伝達がなされなかったのは、如何なる理由によるものか。また、その意思決定は誰が行い、誰に指示がなされたのか、正確な日時とともに明らかにされたい。

  右質問する。