質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一二三号

合衆国軍隊構成員等の自動車運転過失致死罪に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年四月一日

糸数 慶子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   合衆国軍隊構成員等の自動車運転過失致死罪に関する質問主意書

 本年一月十二日午後九時四十三分ごろ、沖縄県沖縄市比屋根六丁目の国道三百二十九号で、米陸空軍販売部所属で在沖縄米空軍軍属の二十代の男性が運転する普通乗用車が対向車線に進入し、沖縄県北中城村出身で愛知県在住の会社員、與儀功貴さん(当時十九歳)の運転する軽自動車に正面衝突し、與儀さんは約五時間後に死亡した。與儀さんは成人式に出席するため帰省中だった。
 本件で警察は普通乗用車を運転していた在沖縄米空軍軍属の二十代の男性を自動車運転過失致死罪で那覇地方検察庁沖縄支部に送検したが、同支部は本年三月二十四日付けで不起訴処分とした。
 本件の不起訴処分に限らず、日本に駐留するアメリカ合衆国軍隊の軍人、軍属等の引き起こす「自動車等による業務上(重)過失致死傷」(刑法犯)及び「道路交通法違反」(特別法犯)は、そのほとんどが不起訴処分となっている。民間団体等の求めに応じ法務省が公開した二〇〇一(平成十三)年分から二〇〇八(平成二十)年分までの検察統計資料「合衆国軍隊構成員等の犯罪事件人員調」(以下「法務省検察統計」という。)によると、二〇〇一年分では起訴された人員が五十三人であるのに対し、不起訴は三百十七人で、不起訴率は八五・六〇パーセント、二〇〇八年分では起訴三十九人、不起訴三百七十二人で、不起訴率は九〇・五〇パーセントとなり、不起訴率の平均は八三・一〇パーセントに上っている。
 これを踏まえ私は「合衆国軍隊構成員等の犯罪に関する質問主意書」(第百七十一回国会質問第二〇三号)において不起訴の理由等について質したところ、政府はその答弁書(内閣参質一七一第二〇三号)において、不起訴処分の理由等は一切明らかにせず、「検察当局において、いずれも法と証拠に基づき、適切に処理している」と答弁している。しかし、在日米軍の軍人、軍属等の犯罪事案に詳しい弁護士等の専門家の多くは、起訴か不起訴かの判断は公務中か公務外かにかかり、公務かどうかは米軍の判断による、と指摘したうえで、在日米軍の発行する「公務証明書」の存在を問題視している。よって、以下質問する。

一 本件に関し、在沖縄米空軍軍属の二十代の男性に対する不起訴処分の理由を明らかにしたうえで、当該処分についての政府の見解を示されたい。

二 本件に関し、取調べの経緯(出頭日時及び場所等)と在日米軍発行の「公務証明書」の提出の有無を明らかにされたい。

三 政府は「公務証明書」なるものを承知しているのか。承知しているのであれば、二〇〇一年から二〇一〇年までの「公務証明書」の提出件数について、年ごとに明らかにされたい。

四 日米両政府によって合意された「公務中」の範囲について、詳細に明らかにされたい。

五 二〇〇一年から二〇一〇年までの在日米軍の軍人、軍属等を第一当事者(被疑者)とする「自動車等による業務上(重)過失致死傷」(刑法犯)の件数と、その処分内容(起訴、起訴猶予、嫌疑不十分、第一次裁判権なし、第一次裁判権不行使)の内訳、総件数に占める不起訴の割合(パーセンテージ)について、那覇地方検察庁管内と全国の数字に分けて、年ごとに示されたい。

六 二〇〇一年から二〇一〇年までの在日米軍の軍人、軍属等を第一当事者(被疑者)とする「道路交通法違反」(特別法犯で、酒気帯び運転等の重度の交通違反により交通切符又は赤切符が適用されるもの)の件数と、その処分内容(起訴、起訴猶予、嫌疑不十分、第一次裁判権なし、第一次裁判権不行使)の内訳、総件数に占める不起訴の割合(パーセンテージ)について、那覇地方検察庁管内と全国の数字に分けて、年ごとに示されたい。

  右質問する。