質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一一〇号

酒類の不当廉売等に対する規制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年三月八日

渡辺 猛之   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   酒類の不当廉売等に対する規制に関する質問主意書

 公正取引委員会は、昭和五十九年に「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」を公表し、その後、酒類等については「酒類の流通における不当廉売、差別対価等への対応について」(平成十二年十一月二十四日。以下「酒類ガイドライン」という。)等、特別な取引実態に即したガイドラインを順次策定することで、不当廉売規制の考え方を示してきた。
 平成二十一年には独占禁止法が改正されて不当廉売が新たに課徴金納付命令の対象になったこと等に伴い、公正取引委員会は平成二十一年十二月十八日に「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」を改定するとともに、酒類ガイドラインについても「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」との整合性を確保するという観点から見直しを行い、改定したところである。
 しかし、酒類の販売においては、依然として不当廉売や差別対価等の不公正な取引が横行しており、特に一部のスーパーや量販店などによる不公正な取引は、中小・零細業者の経営を脅かすものとなっている。適正な競争ルールを確立し、公正かつ自由な競争を促進することは喫緊の課題であると考えるが、政府の対策や運用は不十分であり、規制の実効性は乏しいように見受けられる。そこで、以下のとおり質問する。

一 過去十年間で、酒類の不当廉売、差別対価、優越的地位の濫用により独占禁止法の規定に違反する事実があると思われ、公正取引委員会に申告された件数は何件あるのか。また、その結果、公正取引委員会が行った注意、警告、法的措置は何件あるのか。行為類型ごとに件数を明らかにされたい。

二 公正取引委員会から申告者に対する通知なども今回の改正で明示されたが、申告者への通知が行われた割合および通知の内容ごとの内訳を示されたい。

三 公正取引委員会への申告件数は、全業種で、平成十七年度は二千七百三十四件であったが、平成二十一年度には一万千七百七十三件と四倍強になっており、調査を行う公正取引委員会の事務的な作業量が増大していることが推察される。こうした状況に対応するため、調査に必要な人員を十分確保する等、公正取引委員会の体制を強化・拡充する必要があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。なお、民主党は二〇〇九年総選挙のマニフェストで国家公務員総人件費の二割削減を掲げているが、この制約下でどのように実効的な競争ルールの維持に努めるのか、明示されたい。

四 前述のように平成二十一年には酒類ガイドライン等が改定された。この中では、事業者の予見可能性を高めるため、不当廉売等に関する要件が明確化されるとともに、公正取引委員会の執行体制が強化されることが盛り込まれた。しかし、酒類ガイドラインの改定による効果については疑問が生じる。酒類の販売の独占禁止法違反による注意件数を見てみると、平成二十一年度は七百件と依然として高水準にある一方、注意より厳しい措置である警告および法的措置は一件も行われていない。つまり、公正取引委員会による処分の実態は行政指導であり、かつ事業者名が公表されていない注意が大半を占めている。酒類の不当廉売が横行している現状を踏まえると、悪質な事例については排除措置命令などの法的措置を講じるなどの厳格な対応により、抑止力を高めることが重要であると考える。公正取引委員会による処分の現状に対する政府の見解および政府の考える望ましい競争政策のあり方についての認識を示されたい。

五 公正取引委員会は、不当廉売等を行った事業者に対して警告等を行ったあと、どのようなフォローアップ調査を行っているのか。また、警告等に従わない事業者がいた場合、厳正な措置を講じる必要があると考えるが、これまでにどのような措置を講じてきたのか示されたい。

六 公正取引委員会が申告等に基づいて取締りを行う一方、国税庁は毎年「酒類の取引状況等実態調査」を実施し、適正な取引ルールに違反している件数やフォローアップ調査の結果を公表している。

1 公正取引委員会のいう不当廉売と国税庁のいう不当廉売の定義は同じか。各々の解釈基準を示されたい。
2 国税庁の処分権は独占禁止法違反のときにしか認められない点を考慮すると、国税庁の調査結果を公正取引委員会の調査に活用するなど両者の連携・協力体制を強化すれば、酒類の販売の取引の適正化に向けて効果的な対策を講じることができると考える。現在、両者の間ではどのような連携・協力体制が取られているのか。また、今後その体制を一層強化すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

七 前述した酒類ガイドラインの改定のほかに、不当廉売、差別対価、優越的地位の濫用に対しては酒類の販売の実態を踏まえた、より実効的な措置を講じる必要があると考えるが、今後の政府の取組方針について明らかにされたい。

八 公正取引委員会は平成二十二年六月に「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の原案を公表し、パブリックコメントを実施した。酒類の販売においても優越的地位を濫用していると思われる不公正取引が発生しているが、この実態に対してどう対応するつもりか。「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の今後の見通しを明らかにされたい。

  右質問する。