質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第九〇号

公私間格差を拡大する高校授業料無償化制度の廃止と私学助成の拡充に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年二月二十四日

上野 通子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   公私間格差を拡大する高校授業料無償化制度の廃止と私学助成の拡充に関する質問主意書

 高校授業料無償化制度に対しては、平成二十二年十一月四日に「いわゆる高校授業料無償化に伴う私立高校に対する施策に関する質問主意書」(第百七十六回国会質問第七七号)、平成二十三年二月七日に「いわゆる高校無償化に伴う私立高等学校の授業料等値上げに関する質問主意書」(第百七十七回国会質問第四七号)を提出し、公立高校の授業料が実質的に無償化される一方で私立高等学校及び私立高等学校在校生に対する助成が不十分であるため、公私間格差を拡大しているという観点から問題点を指摘してきた。これに対する政府の答弁書は、指摘した問題点を認め、データをもって裏付ける内容と受け止めた。そこで、以下質問する。

一 政府は「いわゆる高校無償化に伴う私立高等学校の授業料等値上げに関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一七七第四七号。以下単に「答弁書」という。)において、私立高等学校全日制課程の授業料等の都道府県ごとの平均額について、平成二十一年度と二十二年度を比較した場合の増減を示している。ところが答弁書受領後に政府の関係部局から一部の数値に誤りがあったとの報告を受けた。政府の調査が杜撰だったことが原因と考えるが、当該原因についての政府の見解と今後の対応策について明らかにされたい。この誤った数値が全国的に報道されたことから私立高等学校関係者にも多大な迷惑をかけており、政府の謝罪を求めたい。また、答弁書に示された増減だけでは授業料等の都道府県ごとの平均額の推移が十分に把握できない。そこで、平成二十年度、二十一年度、二十二年度の授業料等の都道府県ごとの平均額を示されたい。

二 平成二十一年度と二十二年度の私立高等学校の授業料だけを比較すると全国平均で五パーセント弱の上昇が見受けられるが、入学金、施設整備費等を加えた納付金総額で比較すると〇・三パーセントの上昇に過ぎないと側聞している。だとすれば平成二十年度から二十一年度にかけての増加率〇・五パーセントよりもむしろ低下している。これら増加率について政府として把握している正確な数値を示すとともに、こうした増加率の低下をどう受け止めるのか政府の見解を明らかにされたい。また、高等学校等就学支援金の対象学費を名目上の授業料だけに限定するのでなく、前記納付金総額を対象とすべきと考えるが、政府としての見解を明らかにされたい。

三 政府は答弁書において「高等学校等就学支援金の支給に関する制度の導入に伴って合理性のない授業料の値上げを行うことは望ましくないことであると考えており、引き続き、各都道府県を通じて各学校に対し、通知の趣旨を踏まえた適切な対応がなされるよう促してまいりたい」と答弁している。だが、私立高等学校における授業料等の設定については私立高等学校の設置者の権限と責任において行われているものであり、政府が適否を判断することは適切でないと考える。高等学校等就学支援金は高等学校における教育に係る経済的負担の軽減を図ることを目的として導入されたものであることから、値上げの合理性の有無を含めて授業料等の取り扱いについても、その趣旨を踏まえて、各学校の権限と責任において適切な対応がなされることが望ましいと考えるが、政府としての見解を明らかにされたい。

四 高校授業料無償化制度には前記質問主意書で指摘した問題に加え、これまでの国会審議を通じて指摘されてきた高等学校等就学支援金の受給資格に所得制限がないことなどの重大な欠陥があると考える。そこで現行の高校授業料無償化制度及び高等学校等就学支援金制度全体を一旦廃止し、問題点を改善したうえで新たな制度を構築すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 現行の高校授業料無償化制度により公私間格差の拡大に苦しんでいる全国の私立高等学校は、少子化等により運営環境のさらなる悪化が予想されるが、政府として私学助成を拡充する考えはないか、見解を明らかにされたい。

  右質問する。