質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第六三号

年金の「運用三号」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年二月十五日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   年金の「運用三号」に関する質問主意書

 国民年金制度においては、サラリーマン世帯の専業主婦は「第三号被保険者」とされているが、夫が退職したり、妻がパートなどで年収百三十万円以上になったりした場合、妻は第三号被保険者の資格を失うため、市町村に届け出て第一号被保険者となり、妻は国民年金保険料(現行月一万五千百円)を納付しなければならない。
 しかし、本人が届け出ない限り記録が変更されないという制度上の問題や行政のPR不足により、国民年金保険料が未納となっている専業主婦は数十万~百万人以上いるとも言われている。
 去る平成二十二年十二月十五日、厚生労働省年金局から「第三号被保険者期間として記録管理されていた期間が実際には第一号被保険者期間であったことが事後的に判明した場合の取扱いについて」という課長通知が発出された。
 この課長通知は、直近二年前にさかのぼって保険料を納付すれば、それ以前の未納分については記録訂正なしに納付済期間として扱う「運用三号」期間とするというもので、救済策対象者は、届出漏れの期間一年当たり、年約二万円の基礎年金を保険料納付なしで受け取れると言われている。
 この課長通知に対し、届出をして第一号被保険者に切り替え、まじめに保険料を納めてきた人に比べて極めて不公平だと指摘する報道もあり、年金制度加入者間で大きな不公平が生じているものと考える。
 そこで以下、質問する。

一 運用三号の適用対象人数について

 「平成二十一年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、第三号被保険者数は千二十一万人とされている。このうち運用三号が適用される可能性のある人数を明らかにされたい。

二 課長通知発出後に適用された人数、納付すべきであった期間及び保険料の総額について

 前記課長通知発出以降、運用三号を実際に適用した人数を明らかにされたい。
 また、課長通知発出以降に適用された運用三号の全期間において、本来、第一号被保険者期間として被保険者本人が保険料を納付すべきであった期間及びその保険料の総額を明らかにされたい。

三 運用三号と未納期間における保険料負担について

 本来、第一号被保険者として扱うべきところを「運用三号」とした場合、被保険者本人が負担すべきであった保険料は、どこが負担することになるか、明らかにされたい。

四 運用三号による年金支給額の負担について

 三に関連し、本来、第一号被保険者の未納期間となるべきところを運用三号にすることによって増加する年金支給額は、どこが負担することになるのか明らかにされたい。

五 既に記録を訂正して低年金や無年金になった人に対する救済策について

 従来の扱いによる低年金や無年金になる人への救済策は必要である。
 しかし、既に記録を訂正して、低年金や無年金になった人は救済されないとの指摘に対し、見解如何。
 また、「今後も切り替えない方が得だという人が出てきかねない」との指摘に対し、政府の見解を示されたい。

六 運用三号措置と保険料納付者との不公平について

 第三号被保険者資格の取得や喪失については、行政での届出が義務付けられている。今回の措置は、これまで義務を履行し、まじめに保険料を納めてきた方に対し、不公平感を与えることになる。
 第三号被保険者期間として記録管理されていた期間が実際には第一号被保険者期間であったことが事後的に判明した場合に限り、過去の未納期間のすべてを特例的に納付可能にする制度の方が、まじめに保険料を納めた方との不公平感はなくなるのではないか。政府の見解を明らかにされたい。

七 救済措置における公平性について

 報道によれば、未納期間の保険料を払えるだけ払ってもらい、払えない分は加入期間として認めるが、年金の受給額には反映させない、という対策を講ずれば、無年金者を増やさず公平感が保たれるとの社会保険労務士などの提案を紹介しているが、大いに検討に値すると考える。政府の見解如何。

八 国民的議論と法改正について

 今回の運用三号の措置は、年金記録回復委員会で取りまとめられた「運用により三号を適用した期間を「運用三号」とし、納付済期間として取り扱うこととする。」との対応策に基づき、厚生労働省の課長通知一つで実施された。この措置は、年金制度の根幹を揺るがし信頼性を損なうものであると考える。
 こうした措置を行う際は、党派を超えた国民的議論をすべきであり、法律改正で対応すべきことではないのか。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。