質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第五八号

特定扶養控除見直しに伴い負担増となる生徒に対する経済的支援に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年二月十日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   特定扶養控除見直しに伴い負担増となる生徒に対する経済的支援に関する質問主意書

 高等学校等への就学については、「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(平成二十二年法律第十八号。以下「高校無償化法」という。)により、授業料の負担が軽減された。しかしながら、高校の授業料負担については軽減されたものの、特定扶養控除の見直しによって実質的に負担増となる生徒が、文部科学省の「平成二十三年度概算要求説明資料」によると、約十六万千人存在する。
 例えば、神奈川県在住のある私立高校生は、学校の特待生として授業料全額免除となっているため、高校無償化法によって負担が軽減されない。一方、高校授業料実質無償化に伴って特定扶養控除が見直されるため、その保護者からは実質的な増税になるとの悲痛な声が上がっている。このように私立高校において従来から授業料を免除されてきた特待生については、高校無償化法による負担軽減効果がないため、実質的に負担増になる。生徒の頑張りで特待生となり、その結果として授業料免除等の経済的負担軽減がなされているにもかかわらず、家計の負担増になるのは甚だ不条理である。
 また、静岡県浜松市のブラジル人学校を訪問させて頂いた際、このブラジル人学校は日本政府認可の各種学校ではなく(いわゆる無認可校)、ブラジル教育省認可の学校であるため、高等学校等就学支援金を受け取れないという切実な話を伺った。確かに、日本の教育機関には、憲法第八十九条の規定により、公の支配に属しない教育に公のお金は使わないという原則があるが、高校無償化法の趣旨はあくまで生徒に対する支援を行うことであり、当該学校を高等学校等就学支援金の支給の対象から外すのは同法の趣旨に反すると考えられる。
 このような状況の中、文部科学省は、平成二十三年度予算概算要求で、特定扶養控除見直しに伴って負担増となる生徒や、低所得世帯(年収約三百五十万円未満)の生徒に対して支援するため「高校生に対する給付型奨学金事業」(以下「給付型奨学金事業」という。)として百二十二億円を要求していたが、平成二十三年度予算案には給付型奨学金事業に係る費用は盛り込まれるに至らなかった。
 そこで、以下質問する。

一 平成二十二年三月十二日の衆議院文部科学委員会において、川端文部科学大臣(当時)は、特定扶養控除の見直しによって実質的な負担増となる特別支援学校高等部、定時制高校及び通信制高校の生徒に対する経済的支援について「文部科学省が主体的に取り組める方策は、給付型奨学金が一番大きな効果をもたらすものであると認識をいたしております」と答弁していた。しかし、平成二十二年十二月二十四日に閣議決定された平成二十三年度予算案において給付型奨学金事業が盛り込まれなかったことに関し、同日文部科学省で開かれた記者会見において、鈴木文部科学副大臣は、「平成二十二年度末において高校生修学支援基金に三百十数億円の残額が見込まれるため、その基金を取り崩して対応する」旨のコメントをしている。前記の川端大臣(当時)の考えと、鈴木副大臣の考えは異なるものであり、政府としてはっきりとした考えを示すべきである。統一された明確な見解如何。

二 鈴木副大臣の言う高校生修学支援基金で対応することが政府の統一見解であれば、その基金による奨学金は給付ではなく貸与を前提としているため、経済的負担の先送りであり、負担増となった生徒への対応策として根本的な解決とはなっていないと考えるが政府の見解如何。それとも、高校生修学支援基金をもとに各都道府県が給付型奨学金を実施できるよう制度変更するのか。負担増となる生徒の不安を解消できるよう明確に示されたい。

三 平成二十二年三月二十三日の参議院予算委員会でのブラジル人学校に関する私の質問に対し、鳩山総理大臣(当時)は、「彼らにとってみれば、いわゆる特定扶養控除の積み増し分がなくなるということで増税になってしまう(略)そして就学支援金は当たらないと。これじゃ二重苦になる(略)増税分というものはなくなるように何としてもしていかなければ当然のことながらいかぬと思っておりますので、その配慮だけはしっかりとやりたい(略)あわせて、最初にお話をされた部分(我が国の法制上は無認可であるものの、ブラジル教育省の認可を受けている等、一定水準以上のブラジル人学校も高等学校等就学支援金の対象とすること)に対しても、これからもよく検討していきたい」と答弁している。ブラジル人、ペルー人子弟等が通う外国人学校のうち、当該学校がたとえ無認可校であっても母国の行政機関の認可等により日本や母国の大学への進学資格が得られる等、一定の条件を満たす学校については、そもそも高等学校等就学支援金の対象とすべきではないか。鳩山総理大臣(当時)が「よく検討していきたい」と答弁したことについて、現在の検討状況を明らかにされたい。

  右質問する。