質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一九号

晩婚化・晩産化に伴う育児休業給付の受給要件の弾力化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年一月二十四日

浜田 昌良   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   晩婚化・晩産化に伴う育児休業給付の受給要件の弾力化に関する質問主意書

 我が国の社会経済構造の変化に伴い、近年、働く女性が増加している。総務省「労働力調査」によると、女性の雇用者数は平成二年の一八三四万人から同二十二年十一月には二三二九万人へと一・三倍に増加している。同じく、雇用者に占める女性の割合も三十七・九%から四十二・六%へと上昇している。
 こうした働く女性を支援する制度として、雇用保険法第六十一条の四及び同法第六十一条の五において育児休業給付制度が定められている。育児休業給付は、一歳未満の子を養育するため育児休業を取得した被保険者に支給されるものである。なお、保育所に入所を希望しているが入所できない場合などには、一歳六か月未満まで育児休業を取得できることとされている。
 一方で、育児休業給付を受けるためには、育児休業開始前二年間にみなし被保険者期間が通算して十二か月以上あることが必要とされており、川崎市在住の三人の子どもを持つご婦人から、二人目の子どもの育児休業から復帰して一年以内に三人目の子どもを出産したため、育児休業給付が全く受けられなかったという声も寄せられている。
 厚生労働省「働く女性の実情」によると、一般労働者(女性)の平均勤続年数は長期化する傾向にあり、近年では勤続十年以上の女性は、働く女性の三割を超えている。また、厚生労働省「人口動態統計年報」等の統計では、妻の平均初婚年齢は昭和六十年の二十五・五歳から平成十九年の二十八・三歳へと上昇し、第一子を出産する平均出産年齢も昭和五十年の二十五・六六歳から平成二十年の二十八・九四歳へと上昇するなど、晩婚化、晩産化の傾向が示されている。また、内閣府の男女共同参画会議では働き続けている女性の方が晩婚化、晩産化の傾向にあることも報告されている。
 これら現行の育児休業給付の要件と働く女性の晩産化を踏まえて、育児休業給付制度に関し、以下のとおり質問する。

一 育児休業給付を受ける要件として、「育児休業開始前二年間」と期間を限定した時点及び理由、「みなし被保険者期間が通算して十二か月以上あることが必要」とされている理由について示されたい。

二 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第五条第三項第二号及び同法施行規則第四条の二の規定により、保育所に入所を希望しているが入所できない場合などには一歳六か月未満までの子を養育するために育児休業を取得できるとされている。当該規定に基づき、一歳から一歳六か月未満の子を養育するために育児休業を取得した者の数を示されたい。併せて、育児休業取得者全体に対するその割合を示されたい。

三 晩婚化、晩産化が進む中、厚生労働省「平成二十一年人口動態統計(確定数)の概況」等によれば、母の年齢別にみた第一子の出生数は、平成十年以降、三十~三十四歳の出生件数が、二十~二十四歳の出生件数を上回っている。また、長期的には、二十歳代に第一子を出産する者が減少する一方で、三十歳代で第一子を出産する者が年々増加している。
 一方、内閣府「平成十七年版国民生活白書」第一-一-十二図では、晩婚化になると出産間隔が短期化するとの分析が示されている。例えば、第一子と第二子の出産間隔は、妻の結婚年齢が二十七~二十八歳の場合には二・五八年、二十九~三十歳の場合には二・五三年、三十一~三十二歳の場合には二・三〇年、三十三~三十四歳の場合には二・〇四年、三十五歳以上の場合には〇・九三年と短くなっている。さらに、第二子と第三子の出産間隔は、妻の結婚年齢が二十七~二十八歳の場合でも一・八八年、三十三~三十四歳の場合には〇・七八年と大幅に短くなっている。
 晩婚化により出産間隔が二年より短くなれば、あるいは育児休業を一歳六か月まで取得した場合は出産間隔が二年半より短くなれば、育児休業給付にかかる「育児休業開始前二年間」に「みなし被保険者期間が通算して十二か月以上ある」との要件を本人の就業意思があったとしても物理的に満たさない女性が増加することが懸念される。このような状況についての政府の見解を示されたい。

四 「育児休業開始前二年間」に「みなし被保険者期間が通算して十二か月以上ある」との要件を満たすことができないために、結果として育児休業給付を受けられない女性の数について、具体的に示されたい。仮に、当該女性数を把握していないのであれば、把握していない理由について明らかにされたい。

五 政府は、女性の労働力を活用するとの方針をもって施策を展開している。働き続けるために比較的短い間隔で子どもを出産して、集中して子育てを行おうとする女性を支援する観点からは、現行の育児休業給付を受けるための基準を改定すべきであると考える。第二子以降については、「育児休業開始前二年間」ではなく「育児休業開始前三~十年間程度」とした上で、みなし被保険者期間が通算して一定程度(例えば三~十年の半分の期間)あれば該当するよう見直すことも考えられる。長期就労を望む女性が出産する時期を集中させやすいように、こうした要件の見直しが必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。