質問主意書

第177回国会(常会)

質問主意書


質問第一七号

禁煙促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年一月二十四日

田村 智子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   禁煙促進に関する質問主意書

 二〇〇五年二月「WHOたばこ規制枠組条約」が発効し、国民の中に禁煙と受動喫煙防止への意識と行動が広がっている。
 このような中、二〇一〇年一月に言い渡された「たばこ病損害賠償等請求訴訟」横浜地方裁判所判決は、原告の請求を棄却したものの、たばこの有害性について、JTの「肺がんの原因と発生機序のすべてが解明されない限り因果関係を肯定することができない」という主張を明確に排斥した上で、「喫煙が肺がんの極めて有力な原因となっているという定性的な意味での因果関係を肯定するには十分」であり、「肺気腫についても、たばこが肺気腫のリスクを著しく高めるという限度では、上記認定から優に認めることができる。」と認定した。また、たばこの依存性についても、「禁煙を試みながらこれに成功しない者が少なからず存在するなど、たばこの依存性は決して軽視することができない程度のもの」と踏み込んだ判断を示した。
 そこで、禁煙、分煙のさらなる促進など、たばこの害から国民の健康をまもる立場から以下、質問する。

一 二〇一〇年に未成年者の喫煙をゼロにするという政府目標についての達成状況を明らかにされたい。また、未成年者の喫煙をゼロにするための政府の今後の方針を示されたい。

二 政府が把握している喫煙に起因するがんによる死亡者数、同じく肺気腫など慢性閉塞性肺疾患による死亡者数、同じく脳疾患、心臓疾患などの死亡者数(推計も含めて)を明らかにされたい。また、これらの数値の今後の推計についても明らかにされたい。

三 今年度におこなわれたたばこ税の引上げは、「国民の健康の観点から、たばこの消費を抑制するため、将来に向かって、税率を引き上げていく必要があ」(「平成二十二年度税制改正大綱」)るとしているが、たばこ税増税によるたばこの消費の抑制はどの程度になると見込んでいるか。また、たばこの消費の抑制のためには禁煙指導の充実が求められているが、政府の取組と今後の方針について明らかにされたい。

四 未成年者の喫煙に対する治療について

1 未成年者はたった一回の喫煙でニコチン依存症になることが多く、未成年者の喫煙は大人以上に深刻なニコチン依存症となるという指摘もあり、未成年者の喫煙に対しては早期治療が必要であると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
2 禁煙治療への健康保険適用要件の一つであるブリンクマン指数が二〇〇以上であるという要件は若年者にとっては厳しい条件であり、とりわけ未成年者は禁煙治療を健康保険でうけることが事実上できなくなっている。日本禁煙学会などから同要件の廃止または緩和の意見も出されており、同要件は廃止または緩和すべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。

五 受動喫煙予防についての新たな通知「受動喫煙防止対策について」(二〇一〇年二月二十五日付け健発〇二二五第二号厚生労働省健康局長通知)が出されたが、これは罰則のない健康増進法第二十五条にもとづくものである。健康増進法第二十五条は努力義務を施設管理者に課しているだけで、「たばこ規制枠組条約第二回締約国会議」で採択された「たばこの煙にさらされることからの保護に関するガイドライン」が受動喫煙防止のための立法措置について施設管理者及び喫煙者の責任を定め、違反行為に対して金銭的罰則を盛り込むべきとしていることに照らして不十分である。同ガイドラインに沿った措置を具体化するために日本政府としてどのような検討をおこなっているか明らかにされたい。

六 たばこ税の増税分については、喫煙被害者対策やたばこ病の医学的研究や予防に充てるべきではないか。政府の見解を明らかにされたい。

七 民主党は二〇〇九年の総選挙で「たばこ税については財源確保の目的で規定されている現行の「たばこ事業法」を廃止して、健康増進目的の法律を新たに創設」(民主党政策集INDEX二〇〇九)という公約を掲げている。今回のたばこ税増税を契機に国民に広く禁煙を呼びかけ、禁煙対策をより充実させて、受動喫煙の被害をなくすべく実効ある措置を講じると同時に、この公約の実現をはかるべきだと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。