第177回国会(常会)
質問第四号 国際的な子の奪取の民事面に関する条約に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 平成二十三年一月二十四日 浜 田 和 幸
参議院議長 西 岡 武 夫 殿 国際的な子の奪取の民事面に関する条約に関する質問主意書 「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」(いわゆる「ハーグ条約」)は、関係が破たんした夫婦間に十六歳未満の子がいる場合、一方の親が他方の親に無断で子をその居住国外に連れ去った場合には、連れ去り先の国が子をもともとの居住国に返還することを原則として義務付けている。 アメリカは、近年、我が国に対し、ハーグ条約を批准するよう繰り返し求めており、平成二十二年十二月七日(日本時間)の日米外相会談においても、ヒラリー・クリントン国務長官から前原誠司外務大臣に対し、ハーグ条約批准問題が提起された。また、フランスでは、平成二十二年に日本人の元配偶者に子を連れ去られたという理由でフランス人男性二人が自殺しており、平成二十三年一月中に我が国に対しハーグ条約を批准するよう求める決議が議会で採択される見通しである。このように、諸外国から我が国に対してハーグ条約批准を求める声が高まっている。 他方、ハーグ条約を批准すると、家庭内暴力を理由に子を連れて我が国に帰国した日本人配偶者が子を返還する義務を負う事態も想定され、子の福祉を害するおそれがある。また、子がもともとの居住国に返還された場合、もともとの居住国で監護者、親権者の指定及び面接交渉が定められるため、多くの場合、日本人配偶者に外国での訴訟負担を課すこととなり、自国民保護の観点から問題が生じる。 そこで以下のとおり質問する。 一 ハーグ条約を批准するのか否か。政府の見解を示されたい。 二 ハーグ条約を批准するのであれば、家庭内暴力を理由に子を連れて帰国した日本人配偶者を保護し、また、家庭内暴力に遭遇した子の福祉に配慮するため、子の返還を制限する必要があると考えるが、具体的にどのような方法で子の返還を制限することを検討しているのか。政府の見解を示されたい。 三 ハーグ条約を批准するのであれば、子の返還後の応訴の煩を我が国国民に課す可能性があるが、応訴負担を軽減し、自国民保護を図るためにどのような方策を検討しているのか。政府の見解を示されたい。 四 外国人の元配偶者が「日本に子どもを行かせたら帰って来ない」と、日本人配偶者と子との面会を拒否する事例があるが、我が国がハーグ条約を批准していないことがその背景にあると考えられる。ハーグ条約を批准しないのであれば、このような事例について政府はどのように取り組むのか。政府の見解を示されたい。 五 ハーグ条約を批准する場合、我が国の民法を改正し、単独親権制度から共同親権制度に移行する必要があるのか否か。政府の見解を示されたい。 六 アメリカ政府は、我が国に対し、ハーグ条約の批准を求める一方、「児童の権利に関する条約」を批准していない。日本政府は、アメリカ政府に対し、同条約を批准するよう求めているのか否か。求めている場合は具体的な働きかけの内容について明らかにされたい。 右質問する。 |