質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一七二号

内閣参質一七六第一七二号
  平成二十二年十二月十日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員森まさこ君提出民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案と国際裁判管轄に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員森まさこ君提出民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案と国際裁判管轄に関する質問に対する答弁書

一について

 我が国の裁判所で勝訴した原告が外国に所在する被告の財産を対象として強制執行手続をとる場合及びあらかじめ当該財産について民事保全手続をとる場合のいずれについても、当該財産の所在する外国の裁判所に申し立てる必要があるが、それらの申立てが認められるか否かは、いずれも当該財産の所在する外国の法制による。

二について

 外国の裁判所と我が国の裁判所に同一の事件が同時に係属する場合には、我が国の裁判所は、外国の裁判所における審理の状況等を勘案しながら、審理及び判決をすることになると思われる。

三について

 欧州における国際裁判管轄に関する条約としては、欧州共同体構成国間で締結された「民事及び商事事件における裁判管轄及び裁判の執行に関するブリュッセル条約(仮訳)」(以下「ブリュッセル条約」という。)、欧州共同体構成国及び欧州自由貿易連合構成国間で締結された「EC・EFTAの裁判管轄及び判決の執行に関するルガノ条約(仮訳)」並びにブリュッセル条約の内容を一部改正して欧州理事会規則とした「民事及び商事事件における裁判管轄及び裁判の執行に関する二〇〇〇年一二月二二日の理事会規則(EC)四四/二〇〇一(仮訳)」があり、これらの条約は、締約国の間における国際裁判管轄について、訴えの類型等に応じた規律を設けたものであると承知している。
 これらの条約は、いずれも、各条約の締約国内の裁判所に訴えを提起する場合に適用されるものであり、第百七十六回国会提出の民事訴訟法及び民事保全法の一部を改正する法律案による改正後の民事訴訟法(以下「改正後の民事訴訟法」という。)は、我が国の裁判所に訴えを提起する場合に適用されるものである。

四について

 アメリカ合衆国には、国際裁判管轄に関する明文の規定は存在せず、複数の州が関連する事件についていずれの州の裁判所が土地管轄を有するかに関する判例の原則が存在し、それが国際的な民事紛争についても適用されていると承知している。
 アメリカ合衆国の国際裁判管轄に関する規範は、同国内の裁判所に訴えを提起する場合に適用されるものであり、改正後の民事訴訟法は、我が国の裁判所に訴えを提起する場合に適用されるものである。

五について

 中華人民共和国においては、同国の国内法である民事訴訟法に国際裁判管轄に関する規定が設けられていると承知している。
 中華人民共和国の民事訴訟法の国際裁判管轄に関する規定は、同国内の裁判所に訴えを提起する場合に適用されるものであり、改正後の民事訴訟法は、我が国の裁判所に訴えを提起する場合に適用されるものである。