質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一四一号

内閣参質一七六第一四一号
  平成二十二年十二月十日
内閣総理大臣 菅   直  人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員加藤修一君提出気候変動にかかる温室効果ガス(GHG)の削減に向けたフロン等の処理及びフロン回収破壊法の見直し等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員加藤修一君提出気候変動にかかる温室効果ガス(GHG)の削減に向けたフロン等の処理及びフロン回収破壊法の見直し等に関する質問に対する答弁書

一について

 気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(平成十七年条約第一号。以下「京都議定書」という。)は、主権国家に温室効果ガスの排出削減目標を初めて国際約束により義務付けたという点で歴史的な意義を有しているが、京都議定書で削減義務を負う国におけるエネルギー起源の二酸化炭素排出量は全世界の排出量の約三割にすぎず、全ての主要国が参加する公平かつ実効性ある国際的枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書の採択が必要であると考えている。
 こうした枠組みの構築を目指す上で、気候変動に関する国際連合枠組条約第十五回締約国会議において、首脳級の協議によって「コペンハーゲン合意」が取りまとめられ、全体会合において米国や中国を含むほぼ全ての国の賛同を得て、同合意に留意するとの決定が採択されたことは有意義であったと考えている。
 政府としては、本年十一月二十九日に開幕した気候変動に関する国際連合枠組条約第十六回締約国会議において、同合意を踏まえ、こうした枠組みの構築に向けて国際交渉を主導すべく、最大限努力してまいりたい。

二について

 御指摘の「米国科学アカデミー紀要」において、二千五十年におけるハイドロフルオロカーボン(以下「HFC」という。)の全世界の排出量の推計結果が発表されていることは承知しており、今後とも、HFCを含む温室効果ガスの排出を抑制するため、国際的協調の下で対策を行っていくことが重要であると認識している。

三及び五について

 第百七十六回国会に提出した地球温暖化対策基本法案第二条第三項第七号においては、地球温暖化をもたらす程度の大きい物質として国際約束によりその排出を抑制することとされた物質を、政令で追加することが可能となっている。
 温室効果ガスの排出の抑制は、国際的協調の下で推進することが重要であり、現在、次期枠組みに係る国際交渉の中で、気候変動に関する政府間パネル第四次評価報告書において温室効果を有するガスとして新たに報告された物質の追加について議論が行われていることを踏まえ、我が国としても、当該物質の用途、使用実態等に係る情報の気候変動に関する国際連合枠組条約事務局への提供など、議論の基礎となる科学的知見の蓄積に向けて、引き続き積極的に対応してまいりたい。

四について

 御指摘の「中長期ロードマップ」は、環境省において、我が国における中長期の温室効果ガス削減目標を実現するための対策・施策の具体的な姿について検討を行う中で、二千五十年までに温室効果ガスを千九百九十年比で八十パーセント削減することを実現するためのシナリオの一つとして、本年三月に小沢環境大臣(当時)が公表した試案であり、代替フロン等三ガスの排出をなくすことについても、その中に記載されている。
 当該試案の今後の政府内での取扱いについては決まっていないが、温室効果ガスである物質の種類その他の区分ごとの温室効果ガスの排出の抑制及び吸収の量に関する目標については、地球温暖化対策基本法案の成立後に、同法第十二条に規定する地球温暖化対策に関する基本的な計画等の策定の中で、政府全体で検討を進めてまいりたい。

六及び七について

 平成二十年度に経済産業省が実施した「冷凍空調機器に係る使用時排出量の実態調査」においては、エアコンディショナーや冷蔵・冷凍機器の使用時における冷媒の大気中への排出量を推計するために用いる係数が、以前より大きなものに見直されたところであり、これらの機器の使用中に大気中に排出されているフロン類の量は、従来の想定に比べ大きいものと認識している。
 そのため、経済産業省においては、本年四月より産業構造審議会化学・バイオ部会地球温暖化防止対策小委員会を、環境省においては、同年七月より中央環境審議会地球環境部会フロン類等対策小委員会をそれぞれ開催し、フロン類の更なる排出抑制に向けた対策強化の在り方について検討を進めているところである。このような審議会における検討等を踏まえ、関係省で連携しつつ、現行制度の見直しを含め、必要な措置を講じてまいりたい。