質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一二一号

内閣参質一七六第一二一号
  平成二十二年十二月三日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員浜田和幸君提出労災認定状況及び労災認定に係る判断指針に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員浜田和幸君提出労災認定状況及び労災認定に係る判断指針に関する質問に対する答弁書

一について

 業務上の事由により精神障害を発病したとして労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づき行われた保険給付の請求に対し労働基準監督署長がした保険給付を行わない旨の処分(以下「不支給処分」という。)の取消しを求める審査請求について、労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」という。)が不支給処分を取り消す旨の決定を行った件数(以下「取消決定件数」という。)及び不支給処分の件数(以下「不支給処分件数」という。)に対する取消決定件数の比率(以下「取消決定比率」という。)は、平成十五年度は、取消決定件数が零件、取消決定比率が零パーセント、平成十六年度は、取消決定件数が零件、取消決定比率が零パーセント、平成十七年度は、取消決定件数が二件、取消決定比率が〇・六パーセント、平成十八年度は、取消決定件数が三件、取消決定比率が〇・七パーセント、平成十九年度は、取消決定件数が四件、取消決定比率が〇・七パーセント、平成二十年度は、取消決定件数が七件、取消決定比率が一・二パーセント、平成二十一年度は、取消決定件数が二件、取消決定比率が〇・三パーセントである。
 不支給処分の取消しを求める再審査請求について労働保険審査会が不支給処分を取り消す旨の裁決を行った件数(以下「取消裁決件数」という。)及び不支給処分件数に対する取消裁決件数の比率(以下「取消裁決比率」という。)は、平成十五年度は、取消裁決件数が零件、取消裁決比率が零パーセント、平成十六年度は、取消裁決件数が一件、取消裁決比率が〇・三パーセント、平成十七年度は、取消裁決件数が三件、取消裁決比率が〇・九パーセント、平成十八年度は、取消裁決件数が三件、取消裁決比率が〇・七パーセント、平成十九年度は、取消裁決件数が十四件、取消裁決比率が二・六パーセント、平成二十年度は、取消裁決件数が十六件、取消裁決比率が二・七パーセント、平成二十一年度は、取消裁決件数が七件、取消裁決比率が一・一パーセントである。
 不支給処分の取消しを求める審査請求について審査官が当該請求を却下し、又は棄却する旨の決定を行った件数(以下「却下・棄却決定件数」という。)に対する取消裁決件数の比率は、平成十五年度は零パーセント、平成十六年度は〇・七パーセント、平成十七年度は二・七パーセント、平成十八年度は二・六パーセント、平成十九年度は七・三パーセント、平成二十年度は七・〇パーセント、平成二十一年度は二・九パーセントである。

二について

 不支給処分の取消しを求めて行政訴訟が提起された件数(以下「提訴件数」という。)及び不支給処分件数に対する提訴件数の比率(以下「提訴比率」という。)は、平成十五年度は、提訴件数が五件、提訴比率が二・二パーセント、平成十六年度は、提訴件数が三件、提訴比率が一・〇パーセント、平成十七年度は、提訴件数が二十二件、提訴比率が六・八パーセント、平成十八年度は、提訴件数が十七件、提訴比率が四・二パーセント、平成十九年度は、提訴件数が十七件、提訴比率が三・一パーセント、平成二十年度は、提訴件数が三十四件、提訴比率が五・七パーセント、平成二十一年度は、提訴件数が三十七件、提訴比率が六・〇パーセントである。
 却下・棄却決定件数に対する提訴件数の比率は、平成十五年度は六・〇パーセント、平成十六年度は二・二パーセント、平成十七年度は十九・五パーセント、平成十八年度は十四・九パーセント、平成十九年度は八・九パーセント、平成二十年度は十四・八パーセント、平成二十一年度は十五・四パーセントである。
 不支給処分の取消しを求める再審査請求について労働保険審査会が当該請求を却下し、又は棄却する旨の裁決を行った件数に対する提訴件数の比率は、平成十五年度は五十・〇パーセント、平成十六年度は二十五・〇パーセント、平成十七年度は三十七・三パーセント、平成十八年度は二十三・九パーセント、平成十九年度は十三・一パーセント、平成二十年度は二十八・一パーセント、平成二十一年度は二十五・七パーセントである。

三について

 不支給処分の取消しを求める行政訴訟の判決(以下「行政訴訟判決」という。)のうち、不支給処分を取り消す旨の判決の件数(以下「取消判決件数」という。)及び行政訴訟判決の件数に対する取消判決件数の比率(以下「取消判決比率」という。)は、平成十五年度は、取消判決件数が一件、取消判決比率が三十三・三パーセント、平成十六年度は、取消判決件数が一件、取消判決比率が五十・〇パーセント、平成十七年度は、取消判決件数が一件、取消判決比率が三十三・三パーセント、平成十八年度は、取消判決件数が六件、取消判決比率が六十六・七パーセント、平成十九年度は、取消判決件数が九件、取消判決比率が四十七・四パーセント、平成二十年度は、取消判決件数が四件、取消判決比率が十四・八パーセント、平成二十一年度は、取消判決件数が七件、取消判決比率が十五・二パーセントである。

四について

 例えば、精神障害の発病の原因となる心理的負荷の程度についての判断要素の一つである被災労働者の職務権限や職責の範囲について、労働基準監督署における事実認定が裁判所における事実認定と異なっていたことが挙げられる。

五について

 「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平成十一年九月十四日付け基発第五百四十四号労働省労働基準局長通達。以下「判断指針」という。)に基づき、心理的負荷の強度が「Ⅱ」と評価される出来事が複数認められる場合において、総合的に「Ⅲ」と判断されることはある。

六について

 精神障害については、脳・心臓疾患とは異なり、業務上の事由により発病したと認定するための時間外労働時間数の基準は設けられていない。
 これは、どの程度の時間数の時間外労働を行えば、精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷があったと認められることとなるか、医学的に明らかにされていないためである。

七について

 現在、厚生労働省において、「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催し、精神障害に係る審査の迅速化や効率化を図るための検討を行っているところであり、同検討会の結論を踏まえ、判断指針の改正の要否を判断してまいりたい。

八について

 お尋ねの労働保険特別会計労災勘定の収支状況については、財務省のホームページに掲載しているところである。