質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二四号

内閣参質一七六第二四号
  平成二十二年十月二十二日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員糸数慶子君提出原爆症の認定に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出原爆症の認定に関する質問に対する答弁書

一の1について

 疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会(以下「医療分科会」という。)に属する委員の数は、平成二十二年十月一日現在、三十三名であり、その氏名は、相光汐美、赤星正純、荒井史男、石橋大海、伊藤千賀子、岩永正子、碓井亞、大林諒人、北岡隆、北野俊光、木村昭郎、日下部きよ子、久保内卓亞、小出良平、佐々木英夫、下村壮司、角美奈子、関根一郎、田中克己、谷口英樹、田利晶、難波裕幸、波多野裕二、伴信彦、平原史樹、平松恵一、福田正明、藤原佐枝子、宮川めぐみ、泉二登志子、山科章、吉田和弘、米倉義晴である。
 第一審査部会に属する委員の数は、同日現在、五名であり、その氏名は、碓井亞、角美奈子、関根一郎、谷口英樹、平原史樹である。
 第二審査部会に属する委員の数は、同日現在、七名であり、その氏名は、相光汐美、石橋大海、日下部きよ子、田利晶、福田正明、藤原佐枝子、吉田和弘である。
 第三審査部会に属する委員の数は、同日現在、六名であり、その氏名は、伊藤千賀子、木村昭郎、下村壮司、難波裕幸、宮川めぐみ、泉二登志子である。
 第四審査部会に属する委員の数は、同日現在、五名であり、その氏名は、赤星正純、北岡隆、小出良平、佐々木英夫、山科章である。

一の2について

 お尋ねの六百四十五件の答申に係る事案のうち、事前に医療分科会の委員が確認を行ったものとしては、医療分科会の事務局職員が、医療分科会開催のおおむね一週間前に、厚生労働省の会議室において、弁護士である荒井史男委員及び北野俊光委員並びに公証人である久保内卓亞委員に対し、申請者の被爆状況に係る申請の確認をするよう依頼したものや、医療分科会開催のおおむね二週間前から一か月前に、医療分科会の事務局職員が、医師の資格を有する委員等をそれぞれ訪問するなどして、各委員に対し、申請者の疾病の状況に係る申請の確認をするよう依頼したものがあるが、これらの依頼をした具体的な日時及び件数並びに委員が確認に要した時間については、記録をとっていないため、お答えすることは困難である。

一の3について

 お尋ねの六百四十五件の答申に係る事案のうち、各審査部会と医療分科会の双方で審査を行ったものは三百四十件である。その内訳は、平成二十二年五月二十四日及び六月十四日に開催した第二審査部会において審査を行ったものが百一件、同年五月三十一日に開催した第三審査部会において審査を行ったものが百十五件、同年六月三日に開催した第四審査部会において審査を行ったものが百二十四件であり、各審査部会の開催場所及び出席委員については、厚生労働省のホームページに掲載しているところである。
 また、各審査部会において個々の案件の審査に要した時間について記録をとっていないため、お尋ねの審査に要した時間についてお答えすることは困難である。

一の4について

 お尋ねの六百四十五件の答申に係る案件のうち、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号。以下「法」という。)第一条第一号に該当する被爆者に係るものが四百八十一件、同条第二号に該当する被爆者に係るものが百八十三件、これらのうちいずれにも該当する被爆者に係るものが四十六件、同条第三号に該当する被爆者に係るものが十件、同条第四号に該当する被爆者に係るものが十七件である。
 なお、お尋ねの「遠距離被爆者」に係る案件の数については、「遠距離被爆者」の意味するところが明確でないため、お答えすることは困難である。

一の5について

 お尋ねの十六件のうち、法第一条第一号に該当する被爆者に係るものが十三件、同条第二号に該当する被爆者に係るものが二件、同条第四号に該当する被爆者に係るものが一件である。
 なお、お尋ねの「遠距離被爆者」に係る案件の数については、「遠距離被爆者」の意味するところが明確でないため、お答えすることは困難である。

一の6について

 医療分科会においては、委員による事前の申請の確認や各審査部会における審査内容を踏まえつつ個別に審査が行われているところであり、「医療分科会は単に形式的なものとされ、認否の決定が「事前に行われた」ということを意味する。」との御指摘は当たらないものと考える。
 また、医療分科会における審査は、疾病・障害認定審査会令(平成十二年政令第二百八十七号)第五条第一項の規定に基づき行われているものである。

二について

 御指摘の日本国政府が連合国総司令部に対し「原爆報告書」を提出したという事実については承知していないが、陸軍軍医学校臨時東京第一陸軍病院が被爆者約二万五千人(うち学徒動員の児童など約一万七千人)を対象に調査を実施し、昭和二十年十一月三十日に取りまとめた「原子爆彈による広島戰災医学的調査報告」については、日本学術会議が昭和二十八年に編集した「原子爆弾災害調査報告集」にも収録され、その内容が公にされており、これまで多くの科学者が当該報告書を活用して放射線被曝と健康影響についての研究を行ってきているものと承知している。
 当該報告書の原本の所在については承知していない。

三の1について

 二についてでお答えしたとおり、「原子爆彈による広島戰災医学的調査報告」は従来より公にされているところであり、また、法第十一条第一項の認定(以下「原爆症認定」という。)に当たっては、医療分科会において、法に基づき適切に審査を行ってきたところである。したがって、「国は、事実を隠蔽し、不正な科学的・医学的知見によって、原爆被爆者を愚弄し続けてきた」との御指摘は当たらないものと考える。

三の2について

 お尋ねの「相当長時間」の意味するところが必ずしも明らかではないが、爆心地で原爆投下後から五日を経た時点で、「原爆症を発症させるほどの残留放射線」が存在していたとは考えていない。

三の3について

 お尋ねの「入市被爆者」が、法第一条第二号に該当する者であって被爆者健康手帳の交付を受けているものを指すのであれば、その人数は、平成二十二年三月三十一日現在で、五万六千二百三十五名である。

三の4について

 御指摘の原爆症認定に係る審査は、医療分科会において、法に基づき適切に行われており、御指摘のような対応を行うことは考えていない。

四について

 原子爆弾投下後から原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三十二年法律第四十一号)の制定までの間においても、当時の厚生省による被爆者の治療等に関する調査研究等を行うなど被爆者の救済のための取組が行われていたと認識している。

五及び九について

 御指摘の黒い雨については、平成二十二年七月に広島県並びに広島市及び周辺市町から「原子爆弾被爆地域の拡大に関する要望書」が提出されたところであり、また、近年の研究成果として、広島”黒い雨”放射能研究会が平成二十二年五月に取りまとめた「広島原爆”黒い雨”にともなう放射性降下物に関する研究の現状」があるが、厚生労働省としては、今後、これに掲載されている研究内容等について、専門家による科学的な検証を行うため、検証会議を開催することとしており、同会議における検証結果を踏まえ、当該要望書への対応を含め、今後の対応について検討していく考えである。

六の1について

 先の答弁書(平成二十二年五月二十一日内閣参質一七四第六八号)一の2についてでお答えしたとおり、平成十二年七月十八日最高裁判所第三小法廷判決(以下「最高裁判決」という。)は、DS八六及びしきい値については、当該原告の事案についてその適用を躊躇せざるを得ない旨を判示したものであり、DS八六及びしきい値そのものを否定したものではないと認識している。したがって、「最高裁の判決を無視した」との御指摘は当たらないものと考える。

六の2について

 最高裁判決においては、原爆症認定の要件である放射線起因性については高度の蓋然性が必要であるという国の主張が認められたものと認識しているが、原爆症認定に係る審査をより科学的で透明性の高いものにするため、医療分科会において原爆症認定に関する審査の方針を定めたものであり、当該審査の方針は公正なものであると考える。

七について

 国は、「被曝の事実を隠蔽していたこと」も「原爆を過小評価した「科学的・医学的知見」」に基づいて施策を講じたこともなく、法の趣旨を踏まえ、被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じてきているところである。

八について

 「ICRPの基礎データは、不正なものであった」とは考えておらず、DS八六は原子爆弾の放射線による人体への影響を判断するに当たって信頼できる科学的知見の一つであると考えており、「放射線被曝の安全基準が過小評価されたものである」との御指摘は当たらないものと考える。