質問主意書

第176回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第七号

内閣参質一七六第七号
  平成二十二年十月十二日
内閣総理大臣 菅 直人   


       参議院議長 西岡 武夫 殿

参議院議員糸数慶子君提出クラスター弾禁止条約に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員糸数慶子君提出クラスター弾禁止条約に関する質問に対する答弁書

一について

 クラスター弾に関する条約(平成二十二年条約第五号。以下「本条約」という。)は、クラスター弾の使用、生産、保有、移譲等の禁止及びその廃棄等を義務付けるとともに、国際的な協力の枠組みの構築等について規定している。我が国による本条約の締結は、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際的な協力を促進するとの見地から有意義であると考える。

二について

 現時点において陸上自衛隊が保有するクラスター弾の種類及び保有数は、「多連装ロケットシステム二百九十八ミリメートル、M二六多目的弾」が二千二百三十二発、「七十ミリメートルRL、M二六一多目的弾」が七千三百二十九発及び「〇三式百五十五ミリメートルりゅう弾砲用多目的弾」が二千七百二発であり、保有総数は、一万二千二百六十三発である。また、現時点において航空自衛隊が保有するクラスター弾の種類及び保有数は、「千ポンドクラスター爆弾(CBU―八七/B)」が千七百四十八発である。なお、海上自衛隊は、クラスター弾を保有していない。

三について

 現在、クラスター弾の具体的な廃棄方法、廃棄期間、廃棄費用等についての調査を民間委託しているところであり、この調査結果を踏まえた上で自衛隊が保有するクラスター弾の具体的な廃棄計画を決定することとしている。

四について

 我が国は、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際的な協力を促進するとの見地から、できる限り多くの国が本条約を締結し、かつ、非締約国であってもクラスター弾の使用を抑制することが重要であると考えている。
 このような考えに基づき、我が国は、二国間及び多数国間の協議の機会を通じて、中国、ロシア、米国を含む非締約国に対し、本条約第二十一条1及び2の規定の趣旨を説明し、理解を求めるなどの働きかけを行っている。また、我が国は、ラオス(本年十一月に開催される本条約の第一回締約国会議の議長国)、ベルギー、カナダ等と協力して、八十四か国の非締約国に対し書簡を発出し、非締約国による本条約の早期締結を働きかけている。

五について

 本条約第二十一条1及び2の規定は、締約国が非締約国に対し本条約の批准等を奨励すること及び非締約国がクラスター弾の使用を抑制するよう締約国が最善の努力を払う旨を規定しているが、同条3の規定は、締約国又はその軍事上の要員若しくは国民は、締約国に対して禁止されている活動を行うことのある非締約国との間で一定の軍事的な協力及び軍事行動を行うことができる旨を規定している。
 これらの規定は、締約国が非締約国と共に国際連合平和維持活動等に参加する場合や非締約国の軍隊が締約国に駐留を認められる場合があるという国際社会の現実と、できる限り多くの国の参加を得て、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際的な協力の枠組みを早期に構築する必要性とのバランスを考慮した上で作成されたものであると理解している。

六及び七について

 「沖縄に駐留する米軍は、クラスター弾を使用した訓練等を実施している」との御指摘については、そのような報道があったことは承知している。また、本年九月三十日に沖縄県嘉手納町議会より、政府に対し、FA一八戦闘攻撃機によるクラスター弾搭載投下訓練に対する意見書が提出されたことは承知している。
 米国によれば、在日米軍は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)の目的の達成のために必要な訓練を定期的に行っているが、訓練内容、使用弾種、訓練実施場所等の詳細については、運用上の理由から明らかにできないとしている。
 その上で、あくまで一般論としていえば、米国は、本条約を締結していないことから、本条約上の義務を負っていない。また、我が国も、本条約上、在日米軍によるクラスター弾の使用を禁止する義務は負っていない。ただし、我が国は、本条約第二十一条2の規定に従い、米国によるクラスター弾の使用を抑制するよう最善の努力を払う考えである。