質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九二号

スプレー缶、ライターなどの一般廃棄物への混入に起因する収集・処理・処分時等において多発する火災・爆発等事故に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月三日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   スプレー缶、ライターなどの一般廃棄物への混入に起因する収集・処理・処分時等において多発する火災・爆発等事故に関する質問主意書

 (スプレー缶、ライターに起因する火災・爆発事故の現状)
 全国でごみ収集車(パッカー車)の火災事故は年間四~五千件発生している可能性がある。ごみ処理施設の事故もしくは小火は日常的に発生しており、ハインリッヒの法則によれば三百件のヒヤリハットに一件の事故があると言われている。
 年一件から数件は数億円の大事故になり、その原因は廃棄されたスプレー缶、ライターにあるのではないかと言われている。ガス抜きされていないスプレー缶(殺虫剤)をごみ収集車に収集した際、圧縮されてガスが噴出し、その時に何かの原因で発生した火花が引火、収集してあった他のごみに着火し出火することにより発生した可能性が指摘されている。
 ごみ重量比〇・〇〇〇〇一三%のライターと〇・〇〇〇一%のスプレー缶が事故の原因と言われており、ごみ処理施設で、収集されたスプレー缶、ライターを手作業で処理している地方自治体が多く、作業中の火傷、中毒、怪我は相当数に上ると思われる。推定できる資料等は皆無の状態であり、実態調査の必要性がある。
 (労働衛生環境上の問題)
 狭い作業空間で一日中、使用済み等の殺虫剤や塗料スプレー缶の内容物を排出するための穴あけ作業を行うことは珍しいことではないと言われている。労働安全衛生法上の環境濃度を超えているのではないかとの懸念も指摘されている。また、内容ガスの種類によっては、地球温暖化効果ガスとしての効果を持つものも存在し同様に懸念されている。
 さらに、労働環境上、狭い作業空間での作業であることから急性中毒により救急車で運ばれる例もあると聞く。このような作業に従事している障害者やシルバー人材の作業者に起こることが多く、事故多発につながる一因かも知れない。
 危険な労働環境こそが問題であり、そもそも、殺虫剤や虫除けの廃スプレー缶等を大量に取り扱う作業環境は「労働安全衛生法」では想定していないのが現状である。
 多くの自治体では、ごみ収集車、作業員、処理施設の事故防止のため市民に排出前の穴あけやガス抜きを要請しているが、このような各家庭における室内処理は、家庭内事故につながりかねない。
 (火災・爆発事故の原因)
 このような事故を防止するため、東京二十三区では、穴あけせずに排出するよう呼びかけているが、このような行政指導は全国でも大変珍しいケースである。一方、東京H市など、中身の入っているものは回収しないでそのまま置いておくという例も少なくない(市民より苦情があった場合は特別に収集しているそうである)。
 そもそも、スプレー缶もライターも孔が開いていなければ必ずガスが残り、破砕時に着火の危険は残ることになる。
 着火の直接原因は、忙しい収集現場では、スプレー缶もライターも内容量の残存を識別することが不可能であること、ましてや、ビニール袋に入れられていればほとんど不可能であることにある。スプレー缶もライターも全てガス入りとして区分収集され、処理過程に移されれば安全で効率的である。区分収集できるように住民の協力が必要ではある。
 原因不明の爆発の直接原因物質は、ライターにガスが充填された状態でごみ収集車などに混載された場合である。原因不明を含めごみ収集車などにおける爆発事故の原因は、推定で九十九%以上がライター、スプレー缶と言われている。
 内容物が空でもガスは残っており、着火メカニズムの特徴である着火エネルギーは小さく(〇・二五mJ程度であり、これは直径〇・五ミリの水滴の温度を一℃上げる熱量)、摩擦で生じる静電気の放電や金属等の打撃火花で容易に着火する特徴がある。
 (地方自治体等が抱える問題)
 埋め立てられ発火し炎を出しているスプレー缶やライターを、ブルドーザーなどで踏み潰して破砕し、住民の目につかないよう不適切な処理がなされているケースもあるやに聞く。
 例えば、清掃センターなどで起こっているケースは、人手処理過程で生じた事故は作業者のミスとして隠すことが多く、事故を隠せず救急車を呼ぶことになった際には、医者から保健所や県に対して、安全な処理処分が行えるように機器購入の導入要請が提起されたり、また、清掃センターの責任者が、処理過程における手作業のあり方に危険を感じ機器購入を行った結果、大幅に経費削減になった例さえもある。
 しかし多くは、自治体当局の財政難のため、理事会や議会に説明が困難であり、また多くは予算が取れないことが機器導入の障壁になっている。
 また当該職場においては、障害者などが多く携わっており、障害者の職を奪うことにもなりかねないとの逡巡が働いていることも隠れた理由のようである。しかし一般労働者と比較してリスクがより高い職場に障害者が率的に多く雇用されていること自体が問題でもある。
 群馬県において当該事業を行っている複数の関連企業にヒアリングを行った結果、多くの課題が山積しており、これらの課題解決を進めなければならないと考えられる。
 そこで、二〇一〇年に消費者庁及び環境省の両者が行った「使い捨てライターの処理等に関する調査結果」及びNITE独立行政法人製品評価技術基盤機構製品安全センターによる「スプレー缶による事故の防止について(注意喚起)」を参考にしつつも前述の視点を踏まえて、次の質問を行う。

一 市民に対するスプレー缶やライター処理の注意喚起について

 ごみ収集車の火災事故の対策については、ごみ収集が既に民間委託になっていることが多く、清掃センターは無関心な状態である。行政は市民に対するスプレー缶やライター処理のあり方に関して、捨てる際の注意喚起についても一層努力すべきであると思うが、見解を問う。

二 スプレー缶やライターの処理・処分の実態調査の実施について

 国が具体的な施策展開を行うためには、三以下の質問項目について機敏に対処すると同時に、具体的対応のためには、スプレー缶やライターの処理・処分の実態調査を行うべきであると考えるが、見解を問う。

三 スプレー缶やライターに関する新しい分別ルールの創設について

 家庭における室内処理による火災は、時に集合住宅や人口密集地において起こることも考えられる。極めて大きなリスクを負っていることになる。
 また今後、ライターのチャイルドレジスタンス化に伴い、家庭におけるガス抜きが容易にできなくなることを考えると家庭内処理は困難になるものと思われる。
 従って、このような諸事情を勘案して、収集方法については、行政で明確に処理出来るものを中心に策定すべきである。即ち可燃性ガスの有無を明確に識別することは困難であることから、事故を根絶するには、スプレー缶やライター処理のあり方に関して、可燃性特定危険物として新しい分別ルールを定めることが必要であると考える。見解を問う。

四 作業の単純化等による事故根絶等の可能性について

 新しい分別方法により作業を単純化し、作業効率をアップすることにより事故の根絶の期待ができる。
 このような仕組みで集積が図られれば、安全処理により資源化が容易になり、ライターなどによる再生樹脂原料化、油化が可能である。
 ライターの国内供給量が年間六億個とすると、廃プラは年間約八千二百トン、金属は年間千六百トンである。一方、スプレー缶からは鉄屑、アルミ屑等が回収でき、再資源化が可能である。年間七億本の国内供給量を考えると、鉄は約七万七千トン、アルミは約二千トンと推計できる。最終処分場に処分されることなく、有効に再資源化して利用できる仕組みを、都市鉱山的仕組みも踏まえて考えるべきである。見解を問う。

五 処理機器の購入に関する支援措置等について

 ごみの中でわずか一万分の一%のごみが事故多発の原因となっている。その原因として、量が相対的に極めて少ないこと、また適切な処理方法を誰も提案できなかったために、リサイクル意識の高まりの中にあっても、ごみの分別収集の区分の対象物として入れることができなかったことがあげられる。一方、無造作にごみとして出されるために事故が多発する原因ともなっている。
 関係企業等へのヒアリング等をまとめると、関係業界において、種々の処理・処分に適切な機器が開発されているようであり、関係地方自治体においてもこれからの段階であるが、これらの処理機器の購入・利用を進めているようである。
 但し、引火のリスクなど事故につながらない要件が必要であるが、後述するような要件を満たす機器が既に存在しており、国としても、適正な要件を持ち得る処分機器を推奨することを通じて、種々の事故回避策を考えるべきではないかと思う。
 二〇一〇年に消費者庁及び環境省の両者が行った「使い捨てライターの処理等に関する調査結果」では、収集運搬時・処理の参考事例として、家庭等の排出者が、使用済みライターを使い切って水に浸して家庭ごみに出す方法(仙台市)や、指定の容器をごみステーションに設置し、ごみ収集車で圧縮しないで収集することが紹介されている。
 さらに処理時においては、可燃ガス(スプレー缶、ライター等)が含まれていても安全な処理装置の導入例として、清瀬市、東久留米市及び西東京市の例が紹介され、年間コスト三百万円で、その効果として、「スプレー缶、ライター等から放出される薬剤による人体への影響がない溶剤飛散が無く、燃焼が起こらない条件下での処理のため火災が発生しない」との紹介事例もある。
 従って、次のような要件を備えた機器の購入等を進める上で、国としての積極的な支援措置と以下の五点について考えることが重要である。
① 処理・処分プロセスにおいて、燃焼、化学反応を経ないでNOx、SOx、HCl及びダイオキシンを生成しないこと。即ち大気汚染防止法上適法であること。
② 濡れた破砕物の蓄積や換気不良による安全でない労働環境をクリアしていること。また殺虫剤等には毒劇物もあり有機溶剤以上に注意しつつ、処理は密閉系で処理でき一般環境中に漏れ出ないこと。廃棄できるものについては、ダクト装置によって排気を行う構造を持っていることなど労働安全衛生法上、適法であること。
③ 管理運用等に関し、油性塗料や潤滑油等スプレー由来の危険物の大量保管が生じる場合については、適切な対応ができるようになっていること。
④ 全処理プロセスにおいて、高圧ガス保安法の適用圧力以下であること。
⑤ 自治体によっては、悪臭防止法の適用について条例により強化される場合があり、条例には濃度規制又は指数規制がある。従って、油槽、水槽で臭気を吸着する構造が備わっていることが求められる。また、自治体の条例に則する中で、規制地域では設置場所を敷地境界から離すことや、悪臭元となる処理対象物を集中させないように適切な配慮が必要である。
 そこで国は、右記の①から⑤の要件をクリアする処理機器の購入に関して、支援措置を含めて普及拡大が進むような積極的な促進策を考えるべきであると思うが、見解を問う。

  右質問する。