質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一九一号

「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」における要望ヒアリング(政策コンテスト)に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月三日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」における要望ヒアリング(政策コンテスト)に関する質問主意書

 平成二十三年度予算の「元気な日本復活特別枠」(以下「特別枠」という。)の配分については、各省庁が、国民に開かれた形で「要望」政策の必要性や効果などを説明した上で、外部の意見なども踏まえて政策の優先順位付けを行う「政策コンテスト」を実施するとしている。
 しかし、平成二十三年度予算は国民の声を聞いて編成すると言いながら、政治主導なのかその趣旨に反して、政策コンテスト前にもかかわらず、政策コンテストの対象事業が平成二十二年度補正予算に盛り込まれている。これに対して、本年十月二十五日の参議院予算委員会の審議の中で公明党の草川昭三議員は、「ごまかしであり、(パブリックコメントに応募した)国民の皆さんを裏切ることになるのではないか」と厳しく指摘している。また、群馬県下の市民からも「国民の皆さんに対して誠に失礼だ」との声が寄せられている。
 また、特別枠の最終的な決定は、「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」(以下「評価会議」という。)が十二月一日に行った「要望」に関する優先順位付けに基づいて、総理大臣の判断によって予算の配分を決める新たな手続きによって行われる。
 そこで、以下質問する。

一 要望ヒアリングの実効性について

 評価会議のメンバーは、当初は事業仕分けのように民間有識者を含めることを想定していたようであるが、最終的には、議長の玄葉大臣を始め、内閣官房長官と副長官、内閣府及び財務省の大臣と副大臣、そして与党の政調会長という非常に限られた政府与党の議員のみで占められており、事実上は単なる政府内の調整機関に過ぎないものである。
 政府は、パブリックコメントの募集や各府省からの要望ヒアリングのインターネット公開によって開かれた予算編成を強調しているが、一府省あたり三十分から四十五分の聞き取りで正確な評価や判断が下せるとは到底思えず、やはり、民主党お得意のパフォーマンスとしか言いようがないのである。
 このような短時間で事業の是非を本当に判断できるのか。「要望」事業の優先順位付けに当たって、評価が独断に陥るおそれはないのか。見解を示されたい。

二 特別枠の規模について

 「平成二十三年度予算の概算要求組替え基準について」(平成二十二年七月二十七日閣議決定)で示された「一兆円を相当程度超える額」という特別枠の規模について、野田財務大臣は一・三兆円としている一方、玄葉大臣は、特別会計などの事業仕分けによる財源捻出を念頭に、二兆円程度に拡大したい意向であると伝えられていた。一体、特別枠の規模はいくらなのか、財源を含め明らかにされたい。

三 特別枠への「要望」内容の妥当性について

 特別枠への「要望」内容を見ると、文部科学省の義務的経費や防衛省のいわゆる「思いやり予算」など、削ることが困難な予算をこの特別枠に回し、予算の総額で増額を目指す動きが目立っているように思う。例えば、文部科学省はいったん削減した義務教育費国庫負担金を特別枠に回し、「小学校一・二年生における三十五人学級実現」事業に付け替えて「要望」している。
 一見削減したかに見えて、その実は看板を掛け替えて特別枠として「要望」しただけというこのような手法について、評価会議はどう考えているのか、見解を示されたい。
 また、こういった「要望」の仕方を文部科学大臣は指示したのか。
 たとえ、積極的な指示がなかったにせよ、文部科学大臣の責任において「要望」したことは確かであり、このような「要望」の仕方について政府はどう認識しているのか、見解を示されたい。

四 パブリックコメントの取扱い方針について

 パブリックコメントで寄せられた三十六万件に上る意見のうち、約八割は文部科学省の「要望」に関する意見となっている。日本教職員組合(日教組)、日本体育協会、国立大学協会などの関連団体がコメントの提出を呼びかけているとも伝えられているが、実態はどうなっているのか、政府の把握しているところを示されたい。
 また、このように国民の平均的な意見を反映しているとは思えないパブリックコメントを、優先順位付けにどのように活用するのか、政府の見解を示されたい。

五 優先順位付けの実現可能性について

 三で示したように、特別枠への「要望」には、義務教育費や国民生活の安全に係る事業など、はたして削減や優先順位付けができるのか甚だ疑問な項目が含まれているが、いかなる基準で優先順位を付けるのか。
 例えば、防衛省の「思いやり予算」については、やはり優先順位付けが不可能ということなのか、「この場の議論になじまない」として、当初、議論や判断の対象から外れ、他の事業とは別扱いとしていたようであるが、評価会議が十二月一日に発表した評価結果では満額回答の「A」判定とされた。
 評価会議は、優先順位付けに当たっての「要望評価の五原則」を定めてはいるが、目的や効果が多種多様な百八十九もの事業を、この原則だけですんなりと優先順位付けできるとは思えない。
 また、「思いやり予算」が別扱いになったのは、優先順位付けできないものがある証左であり、実際にA、B、C、Dの評価付けを行う場合、この五原則以外の要因が大きく働かざるを得ないと思うが、評価付けの判断基準と方法について明確に説明されたい。

六 総理大臣が最終判断を行うに当たっての基準について

 特別枠は、評価会議による優先順位付けを受けて、最終的には総理大臣の判断によって配分を決めるとのことであるが、総理大臣は要望ヒアリングに出席せず、事業の内容や所管省庁の説明を聞かない状態で、果たして重要な最終判断ができるのか甚だ疑問である。
 同じレベルの評価付けがされている事業についても、取捨選択を行わなければならないケースは十分に想定される。
 従って、総理大臣の最終判断の基準が、この特別枠方式の要であり、それを国民に示した上で判断することが求められると考える。
 パブリックコメントやインターネット中継を否定するものではないが、総理大臣の判断基準を事前に国民に対して示すことこそが、本当の意味での「開かれた予算編成」であると思うが、政府の明快な見解を示されたい。

  右質問する。