質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一八六号

職業訓練事業のあり方と若年者雇用対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月三日

秋野 公造   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   職業訓練事業のあり方と若年者雇用対策に関する質問主意書

 憲法第二十七条の「勤労の権利及び義務」を根拠として、国は一九五八年に職業訓練法、一九八五年に職業能力開発促進法を施行し、公共職業訓練事業を国及び都道府県の責務として位置づけてきた。一九七五年に批准したILO第百四十二号条約と二〇〇四年の人的資源開発勧告においても職業訓練は政府の第一義的な責任としており、各国とも様々な取組を行ってきている。国内総生産に占める労働市場政策の割合がOECDの雇用アウトルック二〇一〇に示されており、これによると、OECDの職業訓練が国内総生産に占める割合は、わが国が〇・〇三、OECDの平均が〇・一四とわが国の約四~五倍となっている。リーマンショック以降のデフレや円高による厳しい経済状況の中、完全失業率が五%を超える厳しい雇用情勢下において、職業訓練はより一層強化すべき重要な課題である。よって、以下のとおり質問する。

一 職業訓練の重要性について

 国内総生産に占める労働市場政策の割合がOECDの雇用アウトルック二〇一〇に示されており、これによると、OECDの職業訓練が国内総生産に占める割合は、わが国が〇・〇三、アメリカが〇・〇七(わが国の二倍以上)、フランスが〇・二五(八~九倍)、ドイツが〇・二九(約十倍)、OECD平均が〇・一四(約四~五倍)となっている。給与等に占める教育訓練の割合も大幅に落ち込んでおり、リーマンショック以降のデフレや円高による厳しい経済状況の中、企業による社内訓練も困難さを増している。平成二十一年度の能力開発基本調査によると、正社員に対するOFFJOBTRAININGは約一割減、非正社員に対しては約三割減となっており、完全失業率が五%を超える厳しい雇用情勢下において、職業訓練はより一層強化されるべきであると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 長期完全失業者対策について

 総務省の「労働力調査」によると、失業期間一年以上の長期完全失業者の割合は四十五~五十四歳の層で平成十九年四~六月に十四万人であったが、平成二十二年四~六月には二十三万人となっている。失業者全体が増加していることもあるが、この割合が増加している理由について明らかにされたい。
 また、東北、東海地方では完全失業率が改善しているが、関西、九州では悪化している。このような傾向が続くのであれば、各地域の産業などの特性に応じた職業訓練が必要になってくる。菅総理大臣は「一にも雇用、二にも雇用」と明言しているからには、中高年の長期失業者に対し、国は責任を持って緊急人材育成支援事業の恒久化とさらなるセーフティーネットの強化をするべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 若年者雇用対策について

1 若年者の雇用対策は重要である。スキルを身につけるべき時につけておかないと中高年での就職がさらに困難になり、最終的に失業手当や生活保護に依存しなくてはならない状況に追い込まれることを余儀なくされることも考えられる。若者が職業訓練を受けて就職した場合と、職業訓練を受けずに生活保護等を受けた場合の財政に与える影響の比較について、明らかにされたい。
2 若者への職業訓練などに向けた財政支出は、経済の担い手を育てるとともに、労働力不足を緩和し、国の財政負担を軽減するなど多くの効果があり、「将来への投資」ととらえて充実させるべきであり、二〇〇四年度から公明党もイギリスの政策などを参考に「若者自立・挑戦プラン」に予算措置を行った。そして、ジョブカフェ・ジョブカード、若者失業者などに一対一で対応する就職支援相談員、若者と社会の間に立って様々なアドバイスをするキャリアカウンセラーなど就職支援施策の整備を図ってきた。しかしながら、過去最低の就職内定率や依然としてデフレ脱却を図れない経済情勢を踏まえると、急増する若者失業者に対応するには、将来への投資として予算規模をより一層拡大すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
3 イギリスではブレア首相(当時)のもと、ニューディール政策が実施され効果を上げたと聞いている。日本の人口の約半分のイギリスにおいては、一九九八~二〇〇五年の間に百三十六万人が若年失業ニューディールに参加し、プログラムを終了した百二十三・九万人のうち五十・九万人が補助金なしの就労についたということである。わが国においても若者に対する支援策を魅力的なものにすべきであり、例えばイギリスは音楽家になるためのニューディールも実施したと聞いているが、政府の今後の取組について明らかにされたい。
4 今すぐに就職できないような若者に対する支援策であった若者自立塾が廃止されたが、これまで対象となっていた若者をどのように支援していくのか。今後の対応について、政府の取組を明らかにされたい。
5 ジョブカードは持続していくと聞いているが、厳しい経済情勢の中、さらなる制度の充実・強化が必要と考える。政府の見解を示されたい。
6 今後の公共訓練のあり方について、職業訓練の内容を社会から求められるようなものにするためには、医療介護、ITなどさらに成長が見込まれる分野に拡げ、人材の移動が円滑に行われるようにすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。