質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一七八号

外国資本等による不動産購入と安全保障に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月二日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   外国資本等による不動産購入と安全保障に関する質問主意書

 去る二月十九日に提出した「外国人土地法等の規制強化と国民共有の財産である国土資源(土・緑・水)等の保全及び我が国の安全保障に関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一七四第二四号)においては、「外国人等による不動産の取得の実態の詳細を把握することは困難」、「外国人土地法の改正を行う必要があるとは考えていない」、「土地の売買等に関し、新たな措置を講ずる特段の必要性があるとは考えていない」など、我が国の安全保障に関して極めて「消極的」な政府答弁であった。
 一方、十月十八日に提出した「外国人及び外国資本による不動産購入と我が国の安全保障に関する質問主意書」に対する答弁書(内閣参質一七六第四二号)においては、「外国人等による不動産の取得の制限については、諸事情を総合考慮した上での検討が必要であると考えている」、「外国人等による不動産の取得の現状については、都道府県等を通じた情報収集に努めているところである」、「諸外国の法制については、必要に応じ、調査を行ってまいりたい」など、一歩前進した政府答弁であった。
 そこで、以下質問する。

一 外国資本等による不動産取得の状況(中間報告)について

 二〇一〇年十一月二十四日付の北海道新聞の報道によれば、林業や木材産業以外の海外の企業や個人が道内で所有する私有林が、新たに二十四カ所三百五十七ヘクタールあることが分かったと、北海道道議会水産林務委員会で報告されたという。
 これで外国資本による道内の森林所有は、これまで道の調査で判明している分を含めると、水源涵養保安林や水土保全林を含む計三十三カ所八百二十ヘクタールに上り、その面積は東京ドーム約百八十個分にあたる。
 道の調査で新たに判明したのは、所有者は中国やシンガポール、オーストラリアなど十カ国の企業や個人で、地域は後志管内倶知安町や留寿都村、上川管内幌加内町など八町村、面積はマレーシアの企業が所有する倶知安町の八十三ヘクタールが最大で、次に広いのが中国の企業が所有する同町の七十八ヘクタールなどの点である。
 また、民間調査研究機関「東京財団」は、この五年ほどの間に山梨、三重、埼玉各県などで森林買収の動きがあったと報告しており、似たような森林買収の動きは、全国各地で少しずつ表面化している。
 林野庁は二〇〇八年六月、各都道府県を通じ、外国資本に森林が売却された事例の聞き取り調査を開始したと聞いているが、現時点で判明している状況について示されたい。

二 「外国人土地法」の改正を含む関係省庁の検討会などについて

 我が国の安全保障の視点から、国境離島や水源林など我が国の重要国土をどう保護するかについて改めて問いたい。
 このような問題については、外交的に後手に回らないようスピード感を持って対処すべきと思うが、「外国人土地法」の改正を含む関係省庁の検討会をいつ立ち上げ、外国資本等による不動産取得の実態に関する情報収集の結果を最終的にいつまでにまとめるのか、政府の方針を明快に示されたい。

三 防衛省関係施設などの隣接地の所有者実態調査について

 長崎県対馬では自衛隊隣接地における韓国資本による土地買収が問題になったほか、沖縄の離島での外国資本による土地買収がうわさされる一方で、尖閣問題や韓国領土への北朝鮮の砲撃事件を機に、国民の安全保障に対する危機意識は今までになく高まっている。
 そこで、防衛省関係施設など安全保障上重要な施設の隣接地の所有者実態調査を実施することが重要である。
 十一月二十六日の参議院予算委員会における、防衛省関係施設などの隣接地の所有者実態調査に関する私の質問に対し、北澤防衛大臣は「せっかくのご提言でもありますので、前向きに検討したいと思います。」と答弁した。
 是非検討すべきであり、いかなる検討をしようとするのか、検討のための組織をいつまでに立ち上げるのか、それぞれ明らかにされたい。

四 無人島等の土地所有者の全国実態調査について

 報道によれば、長崎県五島市が、尖閣諸島などの領土に対する脅威が強まっていることなどを念頭に外国資本の流入を警戒し、市内にある五十二の全ての無人島に関して外国資本が所有者となっていないかなどの確認作業を始めたという。
 しかし、民間同士の土地売買契約を規制する法的根拠がなく、情報収集しかできないこと、行政が静観せざるを得ないことなど、国境線を抱えた地方自治体等に当惑の声が上がっているとの声を聞く。
 政府は国境線に接する無人島等を優先して土地所有者の全国実態調査を実施すべきと思うが、見解如何。

  右質問する。