質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一七六号

既存自動車から電気自動車への改造の推進施策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十二月二日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   既存自動車から電気自動車への改造の推進施策に関する質問主意書

 ガソリン車などの既存自動車から電気自動車(EV)への改造(以下「改造EV」という。)が注目を集めている。
 改造EVは、既存自動車ストックを有効利用しつつ、CO2の排出削減や排ガス問題の解決を促進することができる。また、我が国の自動車業界にとっては、世界最先端のEV改造技術の開発や技術情報の共有・普及を通して、日本の自動車社会全体のEV化を円滑に進めることが期待できる。
 こうした数多くのメリットを勘案すれば、改造EV事業は、我が国の国力を傾注して積極的に推進されるべきと考える。
 一方、日本全国には自動車整備工場が十万社あるとのことだが、自動車の品質が良いことや、不景気も手伝ってか、今や一二か月定期点検整備の実施率は五〇%前後とのことである。地方の整備工場は、これは群馬県下においても同様であるが、瀕死の状態で元気がないのが実態である。このような状況下において、改造EV、時には地方発の小型EVへの事業展開に大きな期待が寄せられているところである。
 自動車産業の大企業が存在する群馬県太田市等においても、中堅の企業による改造EV、超小型EVの開発・普及の動きが急である。また、同市においては、産学官協同プロジェクトによるEV研究会において、超小型EVの開発の動きがあり、新しい地域発の事業として期待するところとなっている。しかし、課題もある。
 そこで改造EV事業の推進施策に関して、以下の提案と質問を行う。

一 改造EVに対する研究支援策の強化について

 中古車等のEVへの改造について、地球温暖化対策の推進やEV技術の向上と普及、輸出競争力の強化等の観点から、共通基盤となる技術の開発や普及に関し、特に研究者や企業等への研究支援策を政府として強力に展開すべきものと考えるが、見解如何。

二 改造EVに対する規格・基準の改正について

 政府は、改造EVの普及促進に当たって、安全性や信頼性を確保するための規格・基準の改正が必要と考えるか。また、新規立法や法律改正は必要と考えるか。政府の見解如何。
 さらに、何らかの規格・基準の改正を行う場合、その時期はいつ頃か。パブリックコメント等国民から意見を聴取する機会を設ける予定があるかを明らかにされたい。

三 改造EVに対する国土交通省の取組について

 国土交通省関東運輸局は、民間の電気自動車普及団体、自動車検査独立行政法人関東検査部、軽自動車検査協会東京主管事務所などと共同して、改造EVについて検討を行っている。検討の目的とメンバーを、明らかにされたい。
 また、検討結果の取扱いにつき、二の規格・基準の改正との関係性について、政府の見解如何。

四 改造EVの普及と自動車整備業界の役割、人材育成と支援策について

 改造EVの普及のためには、EVの整備・検査等を行う自動車整備業界の役割が従来以上に重要となる。点検・整備マニュアルが存在しない改造EVについても、改造を実施した者は点検・整備に関する必要な情報をユーザーに確実に提供しなければならない。一方、ユーザーの側も、適正な点検・整備によって改造EVが保安基準に沿うよう維持しなければならない。このための自動車整備業界の人材育成、自動車整備業界への支援が必要となると考えるが、政府の見解如何。

五 超小型EVの普及と二人乗りへの規制緩和について

 超小型EVは構造がシンプルであるため既存メーカー以外でも製造可能である。また、前記産学官協同プロジェクトによる超小型EVは、現行法規では、「原動機付き自転車」に分類される。
 従って、当該超小型EVは一人乗りに限定されるが、安全規格の確保のもとに、その利便性を考慮し、市中の短距離のコミューターとして、二人乗りへの規制緩和を行うことが必要と考えるが、政府の見解如何。

六 改造EVに対する国の取組の強化について

 改造EV一台の費用は約百万円、自動車整備工場一社で年間百台の改造を行うとして、全国の自動車整備工場十万社のうち一万社が改造に対応できるものとすると年間一兆円の産業が成立し得る。いち早く日本の改造EV事業が数千万台レベルの規模に到達できるようにすべきである。そうすることで、地方の元気づくりに貢献でき、地方の雇用維持にも直結する。
 また、スマートコミュニティ、スマートグリッドへの転換など種々の展開の中で、就中知的財産に関するマネジメントの先進的取組のチャンスが生まれるものと考えられる。
 さらに、改造EVあるいは小型EVについては、既に広範な動きが出てきており、このような動きを無視していると、海外からの同種の動きに我が国が翻弄されかねないことも十分知悉し、具体的な事業展開を進めるべきである。
 従って政府は、新車EVに限らず改造EVにも、補助金を含めた政策資源を配分できるようにすべきである。政府の見解如何。

七 改造EVに対するクレジット認証制度の導入と税制上の支援措置について

 我が国には、現在CO2排出を削減した場合のクレジットの売買の制度が存在する。それは、経済産業省の国内クレジット制度であり、環境省が進めるJ-VERである。この両者の統合が重要なことは今更言うまでもないが、従来のガソリン車等からのコンバージョンである改造EVも対象とすべきことは明確である。既往の走行キロ数などを一定のクレジットとして認証することが可能である。改造EVの事業展開が進展するようなクレジットの認証制度等の検討、新制度の導入等を行うべきである。政府の見解如何。
 また、改造EVが普及すれば、CO2の削減に貢献するばかりか、CO2以外の大気汚染物質も皆無となる。従って、これらの意味を踏まえて、自動車関係諸税について、現在の新車EVに対して実行中の減・免・無税などの措置を、改造EVに対しても適用すべきである。政府の見解如何。

八 改造EV及び小型EVの推進と総合特区制度について

 現在、政府においては、総合特区制度について議論されている。平成二三年度から事業が進むものと理解している。この制度は、規制の特例措置及び税制・財政・金融による総合支援を実施するものであり、改造EVについては、地域活性化総合特区での措置・支援が想定し得る。
 特に改造EVや小型EVについては、新車EVと同様に我が国の新しい戦略的な分野である。政府の新成長戦略の中身にもなる。よって、改造EV、小型EVについては、総合特区制度において特別枠を新設すべきである。これにより、環境未来都市事業にも貢献できる。政府の見解如何。

  右質問する。