質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇四号

展覧会における美術品損害に対する補償制度の適用対象に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月十五日

竹谷 とし子   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   展覧会における美術品損害に対する補償制度の適用対象に関する質問主意書

 平成十三年九月十一日の米国同時多発テロの影響、また、美術品の市場価格の高騰により、美術品等の借受けに係る保険料が高騰し、我が国における、海外美術館収蔵品を借りての美術展の開催について、美術館等の負担が大きくなっている。
 日本とロシア以外のG八諸国においては、美術品等の借受けに関する国家補償制度があり、美術館等の負担が大きく軽減されているところである。
 このような状況にかんがみ、平成二十一年三月二十六日、文化庁に美術品等の貸借に係る諸課題に関する調査研究協力者会議が設置され、同年七月十四日に「美術品等の貸借に係る補償の在り方について(審議経過報告)」(以下「審議経過報告」という。)が公表された。これを受け、平成二十二年十月二十九日、「展覧会における美術品損害の補償に関する法律案」(以下「本法律案」という。)が国会に提出されたところである。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 本法律案第三条第二項において、補償制度の適用対象となる展覧会については、「国民が美術品を鑑賞する機会の拡大に資するものとして文部科学省令で定める規模、内容その他の要件に該当するものでなければならない。」と規定されている。「規模、内容その他の要件」の設定に当たっては、専門家、美術館関係者等の知見を反映すべきであると考えるが、政府はこの要件の設定について、どのように行うことを想定しているか。

二 本法律案第三条第二項の規定に基づいて定められる「要件」に該当するか否かの判断については、だれが判断し、どのような手続を想定しているか。

三 本法律案第三条第二項の規定に基づいて定められる「要件」に関し、展覧会を開催する美術館、博物館等の設立主体(国立、公立、私立など)について、政府は何らかの制約を設けることを想定しているのか。

四 審議経過報告では、その理念の一つとして「人々の美術品等の鑑賞機会の充実」を挙げ、その意義について「次代を担う子どもたちの豊かな人間性を育む上で、優れた芸術に直接触れ感動体験となる展覧会は情操教育の面でも大きな役割を果たすもの」としている。これを受け、本法律案第三条第二項では「国民が美術品を鑑賞する機会の拡大に資する」と規定されている。また、現在、日本の国立美術館、博物館においては、教育的な観点から高校生以下及び十八歳未満の者に対する常設展の入場料等が無料となっている。したがって、「規模、内容その他の要件」の設定に当たっては、教育的な観点から、高校生以下及び十八歳未満の者に対して入場料等の軽減を行うことを要件とするべきであると考えるが、政府にそのような考えはあるのか。

五 本法律案第三条第二項において、補償制度の適用対象となる展覧会については、「国民が美術品を鑑賞する機会の拡大に資するものとして文部科学省令で定める規模」でなければならないと規定されているが、一定規模以下であっても、学術的、文化的に価値があると認められる展覧会等については、補償制度の適用対象とすることは考えられるのか。また、損失補償下限額についても、このことを踏まえて設定されるべきであると考えるが、政府はどのように考えるのか。

  右質問する。