質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七一号

障害者の就労支援に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月二日

横山 信一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   障害者の就労支援に関する質問主意書

 働くことは人間が誰でも持っている基本的欲求であり、障害のある方が地域で生活していくために、障害者本人の希望やニーズに応じた就労を実現することが重要である。平成十八年に施行された障害者自立支援法はその大きな柱の一つに就労支援の抜本的強化を掲げており、平成十九年には「福祉から雇用へ」推進五か年計画が策定され、工賃倍増五か年計画が進められているが、現在の経済状況の下で、一般就労への移行は必ずしも進んでおらず、工賃もむしろ減少している状況にある。
 そこで、障害者の就労を支援する観点から、以下質問する。

一 就労移行支援事業の利用者の一般就労への移行実績及び福祉施設から一般就労に移行した者の割合の推移を示されたい。もし最新の状況を把握していない場合には、早急に把握する必要があるのではないか。

二 就労移行支援事業については、二年間という標準利用期間が定められているが、この期限内に一般就労できなかった利用者は、採用が内定している等一般就労への具体的な見通しがある場合を除き、更新が認められず、他の就労継続支援事業等に移らざるを得ない状況にある。しかし、二年間で一般就労に移行することは、現下の雇用状況の下では非常に困難である。二年間という標準利用期間を見直し、障害の程度や種別にかかわらず余裕をもって一般就労に移行できる期間を設定すべきではないか。少なくとも、更新について、個々の状況に応じて柔軟に認められるようにするとともに、最大一年間とされる更新期間を延長すべきではないか。

三 新卒者に授産施設等での就労希望が多いにもかかわらず、定員増や新規の開設は認められず、利用調整会議で施設間調整を行っているのが現状である。働く場所に関する利用者の選択権を保障する観点から、授産施設等の開設要件等の緩和を図るべきではないか。

四 工賃倍増計画策定前と策定後の平均的工賃(全体及び施設種類別)の推移を示されたい。授産施設等の多くは、経営等の面で経験・ノウハウが豊富ではなく、アイディアは出ても製品開発に結びつかない、製品になっても市場で売れるものとはなりにくいと感じている。工賃倍増計画の達成状況及び実現見通しを示されたい。

五 多くの授産所では、利用者の重度化や高齢化に伴う支援の増大に対応しながら、工賃アップへの取組を迫られており、現行の人員体制の下での取組には限界を迎えつつある。生活支援と工賃アップを両立できる人員体制整備や報酬改善、施設体系の見直しを含め、抜本的な支援策が必要ではないか。また、工賃を障害者の所得政策として捉えるならば、むしろ障害基礎年金の引上げや最低賃金との差額の支給等の措置をとるべきではないか。

六 本年六月の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」(閣議決定)においては、いわゆる福祉的就労の在り方について、平成二十三年内に結論を得ることとされている。福祉的就労の見直しの基本的方向、論点を示されたい。また、旧体系の施設については平成二十三年度末までに新たな施設体系に移行することとされているが、福祉的就労の在り方そのものが議論されている中で、二十三年度中の移行を迫るのは矛盾があるのではないか。

七 政府は、平成二十二年度から複数の事業所が協働して受注や品質管理、販路開拓を行う「共同受注窓口」をブロックごとに整備することとしているが、現時点での整備状況はどうなっているか。ブロック単位ではなく、都道府県単位の整備をめざすべきではないか。

八 工賃アップのため業種転換を迫られる事業所もあるが、業種転換には多大なリスクが伴い、二の足を踏まざるを得ない状況がある。業種転換に対する助成金制度の創設を検討すべきではないか。

九 平成十九年の重点施策実施五か年計画では、国等における福祉施設等の受注機会の増大を掲げているが、国及び地方公共団体における福祉施設等からの優先調達等の取組状況を示されたい。また、こうした取組を民間企業にも広げる必要があるが、発注促進税制の効果をどう捉えているか。

十 一般就労への移行の推進のためには、それを支える人材の確保が重要である。障害福祉サービス等に係る報酬改定や福祉・介護人材の処遇改善事業助成金により福祉・介護職員の処遇の改善が図られたものの、依然として障害者関係施設の運営は大変厳しい状況にある。このため、職員の給与の頭打ち、非正規化など、福祉を支える現場が崩壊寸前の状況にさらされている。障害福祉サービスの次期報酬改定において、正当に評価した標準的人件費に見合った引上げを行うべきではないか。

十一 政府の「新しい公共」円卓会議においては、社会的企業を支える環境整備として社会事業法人の制度化等が検討されている。現在の検討状況、検討の見通しを示されたい。新たな事業形態の在り方については、利用者のニーズにあった質の高い福祉サービスを提供するという観点から、社会福祉関係事業者や識者を交えて慎重に議論すべきではないか。

  右質問する。