質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六七号

沖縄における遺骨収容・不発弾処理支援および戦争資料としての現場保存・公開に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十一月一日

秋野 公造   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   沖縄における遺骨収容・不発弾処理支援および戦争資料としての現場保存・公開に関する質問主意書

 戦後六十五年が経過した今なお、沖縄においては戦没者の遺骨収容と多数の不発弾処理は終わっていない。戦後既に長い時間が経過し、戦没者の遺骨に係る情報が減少する一方で、不発弾の腐食がさらに進むと信管が抜けなくなる可能性もあり、遺骨収容と不発弾処理の早期執行が必要である。そこで、以下のとおり質問する。

一 沖縄における戦没者の遺骨収容の位置づけについて

 菅総理大臣が平成十八年に提出した「戦没者遺骨収集に関する質問主意書」(第一六四回国会質問第一八三号)で指摘したとおり、遺骨収容は国家の責任である。同主意書の中で菅総理大臣は、「「遺骨のある場所の情報が寄せられれば収集する」と厚生労働省は言っている。受け身的な対応ではなく、政府として積極的に情報を収集し、捜索・回収する体制を整えるべきであると思う」と指摘しているが、この指摘についての政府の見解を示されたい。

二 沖縄における遺骨収容支援のあり方について

1 沖縄における遺骨収容については、厚生労働省職員が現地に出向くなどの対応を行っているが、どのような工程計画をもって行っているのか政府の見解を示されたい。
2 全島が戦場となった沖縄においても、少なくとも硫黄島における遺骨収容の取組と同様に民間への支援を併せて行うべきである。また、沖縄においては、壕が出土した場合に厚生労働省の委託を受けた業者が機械掘削などによる手法で遺骨収容を行っているが、遺骨とともに遺品も多数出土する場合には、本来、遺骨と遺品を同時に確認して身元確認につなげ、これらを遺族にわたせるようにすべきであり、そのためには、考古学的手法を用いた丹念で尊厳ある扱いで遺骨収容作業を進めるべきである。実際、ボランティア組織が実施している遺骨収容において、旧日本兵と見られる遺骨三体と姓が掘られた印鑑などが見つかっている。戦後六十五年が経過し、遺族がさらに高齢化することを考えると、一日も早い遺骨収容と身元確認が必要である。昨年十月に沖縄県那覇市が、国の「緊急雇用創出事業」を活用して遺骨収容をボランティア団体に業務委託した事例をもとに、国は、地元から雇用対策として人員を増員して遺骨収容の早期執行を行いたいとの要望があれば、雇用対策予算の枠を用い、遺骨収容作業を雇用支援の場としてとらえ、菅総理大臣が前記主意書で指摘したように積極的な取組を行うべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 沖縄の遺骨が残る壕の保存のあり方について

 沖縄県西原町に、ボランティア団体「ガマフヤー」(具志堅隆松代表)による遺骨収容作業により、五体の遺骨がほぼ完全な形で残っていることが判明した壕がある。壕の右側には四体の遺骨があり、その背中には砲弾が刺さり、うつぶせに寝かされていた。一体の遺骨の右手は不自然に折れ曲がることから、皮膚一枚でつながっていたのではないかということが想像された。もう一体の遺骨の指は湯飲みの中に位置し、お水を残して貰ったことが想像された。さらにもう一体の遺骨の頭骨は失われていた。壕の左側には一体の遺骨があり、その手足と頭骨は失われており、離れたところに鉄かぶとがあったことから、手榴弾にて自決されたことが想像された。また、遺骨がほぼ完全な形で残ったことから、お亡くなりになる前または直後に落盤が起きたことが想像された。
 私達戦後世代は、戦争の悲惨さに対する想像力の欠如を排し、平和を守るために沖縄戦等の歴史を正しく学ばねばならない。戦争の風化が叫ばれる今、文書や映像だけでない戦争資料を後世に残すことは重要である。この壕のように、遺骨と向き合い、戦場で亡くなるということがどんなに過酷で悲しいことであるかを語りかける場所は、戦争の悲惨さを学び、不戦を誓うことができる場所である。現在、この壕については、ボランティア団体「ガマフヤー」の要請を受けて、西原町が遺骨収容過程において壕を公開できるように仮設階段を設置しているところであるが、本来であれば、徴兵を行い、沖縄住民に犠牲を強いた国も、平和のために積極的に関与すべきである。今後、状況が整い、地元からの要望があれば、沖縄戦の悲劇を二度と繰り返さないために、この壕を戦争資料として保存し、公開することにより、平和を学び不戦を誓う場所とすべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 沖縄の不発弾対策について

 平成二十一年一月十四日に発生した糸満市不発弾爆発事故を踏まえ、国は「沖縄県不発弾等対策安全基金」を創設した。また、不発弾等処理交付金事業、磁気探査支援事業、民間工事により発見された不発弾等の処理に対する支援も行われている。しかし、沖縄県には多くの不発弾が存在しており、約二千二百トンが地中に埋まっているとの報告もある。年間の不発弾処理が約三十トンにとどまっている現状を踏まえると、このままでは最低でも約七十年かかることになる。そこで、不発弾等の処理を早期に執行できるように磁気探査の加速化・効率化を図るなど、不発弾対策の更なる推進が必要であると考えるが、政府の取組を示されたい。
 また、不発弾発見から処理までの間、土のうをかぶせるだけの放置状態にある不発弾の安全管理業務や自衛隊により不発弾処理の済んだ安全な不発弾を現場から保管庫まで運ぶ運搬業務などの業務については、雇用対策の観点も踏まえ、戦争被災者である沖縄県民による平和事業の取組とも協働しつつ、強化すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。