質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六六号

気候変動に対応した今後の農林水産業への取組に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月二十八日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   気候変動に対応した今後の農林水産業への取組に関する質問主意書

 二〇一〇年の北半球の夏は、極めて異常高温な夏であった。また同時に、南半球の冬は大寒波となり多数の死亡者が発生した。
 ロシアでは、森林火災の延焼面積が、北海道の二倍の面積に相当し、モスクワでは濃いスモッグ(ヘイズ)の影響で市民の健康が危ぶまれた。ロシアに続き、アマゾン、アフリカ、アジアでも異常気象により森林火災が連続して発生するなど、地球規模で極めて深刻な事態にあることを指摘する。とりわけ深刻なことは、泥炭層、炭化成分の多い土壌での燃焼で、その結果、膨大な二酸化炭素が発生した。
 中国大陸においては、三峡ダムが世紀の大放流をしなければならないほどの豪雨の連続で大水害が発生し、同様の大洪水は、バングラデシュにおいても発生した。
 そして、日本列島においても記録的な猛暑であった。各地で猛暑日の記録更新が相次ぎ、日本の最高気温の記録に頻繁に名前がでてくる館林市のある群馬県では、県下の高崎市、太田市、安中市、沼田市などの一二市を始め、その他町村においても厳しい暑さの連続であった。
 館林市は、四〇日を超える猛暑日になったと言われ、日本列島の猛暑による熱中症の大量発生は、各種統計を確認すると、大災害とも言うべきものである。
 これら猛暑都市を安全・安心な都市にする上で、対処療法的な対応では市民の健康、生命を守ることは困難な状況にある。従って、(1)熱中症への対応はもとより、(2)ヒートアイランド現象への機敏、かつ的確な対応、また、より根本的には(3)気候変動への対応が重要である。これらの三者の一体的、計画的なパッケージ政策が必要である。
 以上の基本的視点を、改めて重視・認識すべきことと同時に、関係府省庁及び関係府省庁連絡検討会が一層強力な暑熱対策を推進することを強く求めるものである。
 以上を踏まえて、質問主意書の本旨に入る。
 我が国における気温の上昇は、一九九〇年代以降から顕著になっており、一八九八年以後の夏の平均気温が高かった年の順番では、上位一〇位のうち一九九〇年以後の年が六割を占めるなど、近年、高温となる年が頻出している。また、IPCC第四次評価結果報告書に基づく整理結果では、我が国の平均気温は二一世紀末までに二〇世紀末と比べて最大で四・七℃上昇し、大雨や猛暑日が増えると予測されている。
 農林水産省においても、平成一九年六月二一日に「農林水産省地球温暖化対策総合戦略」を策定(平成二〇年七月二九日改定)するとともに、「品目別地球温暖化適応策レポート・工程表」を公表し、地球温暖化の農林水産業への影響に対応するための品種の開発や栽培体系の見直し等の地球温暖化適応策を講じてきている。
 そこで、以下質問する。

一 気温上昇に対応した品種の改良など農林水産業の現場における取組状況について

 多様な気象条件を有する我が国においては、稲、果樹、野菜等の農作物について、それぞれの地域の気象条件等に合わせた作物の選定、品種改良・品種の選定、栽培方法の確立が行われてきた。気候の変化に伴い、現在確立された体系では対応できない状況も生じてきていることから、気温上昇に対応した品種改良や、新たな栽培方法の研究及び農業者へそれを普及させることも必要になってくると思われる。政府及び農林水産業の現場における取組状況如何。

二 気候変動に適応した作物の転換等に対する支援及び今後の展望について

 適地適作の観点からいえば、将来的には各地域において気候変動に適応した新たな作物の導入の検討も必要となってくると思われるが、作物の転換等に当たっては、農業者に大きな負担が生じるものと思われる。今後の展望及び支援について政府の見解如何。

三 海洋環境の変化と資源管理及び漁具・漁法等の技術開発について

 地球温暖化の進行による海流の変化や海水温の上昇等、海洋環境の変化が危惧されている。我が国近海においても海水温の上昇が報告されている。海洋生物については、気候変動がどのような影響を及ぼすのかよく分かっていないところもあるが、今後、海水温の上昇によって回遊性の魚種の漁場が北上し、一〇〇年後にはサンマの漁場が日本近海ではほとんどなくなるとも予想されている。今後、日本近海で獲れる魚種が大きく変わってくることも想定されるが、そうした状況に対応した適切な資源管理を行っていく必要があるとともに、激しい気候変動に対応できるようにするための漁具・漁法等の技術開発も重要と考えるが、見解如何。

四 農林水産業分野における二酸化炭素削減への取組について

 猛暑対策として、農業・畜産業・水産業においても、地球温暖化防止に積極的に貢献していくことが必要であると考える。例えば、二酸化炭素削減のため、太陽光発電や太陽熱・地中熱等を活用した野菜等のハウス栽培の促進などを積極的に推進していくことも必要であると考える。
 農林水産省における施策として、農業分野においては、平成二一年度までは、農業生産地球温暖化総合対策事業が実施され、平成二二年度からは、生産環境総合対策事業のうち農業生産地球温暖化対策事業等が実施されている。これらの地球温暖化対策に関する事業についての政策評価及びこれを踏まえた上での今後の展開方針如何。

五 農業分野での熱利用の促進について

 ハウス栽培などの農業分野への空気熱・地中熱などを活用したヒートポンプの普及・拡大に対する助成措置の拡充を検討すべきと思うが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。