質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六二号

高速道路料金政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月二十六日

江口 克彦   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   高速道路料金政策に関する質問主意書

 高速道路は、その建設費を借金で賄い、受益者負担の原則に基づいて料金設定が行われてきた。これまで日本の高速道路の通行料金は世界一高く、それが旧日本道路公団の経営の非効率性に起因するものだとして、民営化とともに高速道路料金の引き下げについて議論されてきた。
 しかし、現状を見ると、高速道路の債務処理とそれに伴う国民負担の議論よりも、高速道路料金の値下げばかりが先行して行われ、それに伴う混乱ばかりが生じているとしか思えない。
 特に、民主党の高速道路料金の無料化に対抗して、旧自公政権が、景気対策と称して国費による高速道路料金の値下げを行う高速道路利便増進事業を実施したが、これにより土日・祝日限定の「千円高速道路乗り放題」と称される普通自動車のETC休日特別割引の導入等がなされ、トラックやバスなどの自動車運送事業は、それによって発生する渋滞に巻き込まれ、鉄道、航空、フェリーなど競合する公共交通機関もそれぞれ事業損失を被っている。
 また、政府・与党は、高速道路料金の原則無料化を掲げてきたが、当初の予算要求より規模を大幅に縮小して社会実験と称する無料化を実施している。更に、高速道路利便増進事業を見直す法案を本年三月に提出し、四月には新たな割引制度を提案したが、与党内でも高速道路の料金水準や国民負担の在り方についてまとまりを見せていないため、何も決まっていない事態となっている。
 そこで、以下のとおり質問する。

一 政府は、ETC休日特別割引を一年半以上実施してきているが、一方、「高速道路の新たな料金割引の基本方針」において高速道路利便増進事業による割引を「多額の国費投入による一時的な人気取りであり、持続可能でない」と指摘している。政府自らこのような指摘を行うのであれば、高速道路利便増進事業が物流に与えている影響などを考慮すると、同事業の経済対策としての効果について、その評価を速やかに検証して公表すべきであると思われるが、政府の見解を示されたい。

二 政府は、国費を使った高速道路料金の大幅値下げについては、渋滞の発生や競合する公共交通機関を弱体化させるなど負の効果を伴うことを、これまでのETC休日特別割引の経験を通じて十分認識していると思われる。今後、国費を使った高速道路料金の無料化又は大幅値下げを実施するに当たっては、厳しい財政状況にも留意し、全車種・全時間帯を対象とする無料化又は値下げを実施するのではなく、営業用自動車の夜間通行のみを全国的に無料化するなど、実施によって物流・旅客輸送におけるコスト削減、輸送に携わる事業者及び労働者の負担の軽減、夜間における営業用自動車の高速道路への誘導などの経済又は環境対策として具体的な政策効果が見込まれるものに限定すべきであると思われるが、政府の見解を示されたい。

三 政府は、今後処理しなければならない高速道路に関する約三十兆円の有利子債務や、高速道路の新規建設とそれに伴う国民負担の現状等を明らかにし、それに対する負担者の範囲及びその負担水準、我が国の成長を持続可能とする高速道路料金の水準など、高速道路料金の在り方について科学的な検証を速やかに行うとともに、高速道路の原則無料化というスローガンだけではなく、改めて国民的な議論を行って、現実的な高速道路料金政策を打ち立てていく必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。