質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五七号

猛暑による農業・畜産業・水産業への影響と今後の対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月二十二日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   猛暑による農業・畜産業・水産業への影響と今後の対策に関する質問主意書

 二〇一〇年の北半球の夏は、極めて異常高温な夏であった。また同時に、南半球の冬は大寒波となり多数の死亡者が発生した。
 ロシアでは、森林火災の延焼面積が、北海道の二倍の面積に相当し、モスクワでは濃いスモッグ(ヘイズ)の影響で市民の健康が危ぶまれた。ロシアに続き、アマゾン、アフリカ、アジアでも異常気象により森林火災が連続して発生するなど、地球規模で極めて深刻な事態にあることを指摘する。とりわけ深刻なことは、泥炭層、炭化成分の多い土壌での燃焼で、その結果、膨大な二酸化炭素が発生した。
 中国大陸においては、三峡ダムが世紀の大放流をしなければならないほどの豪雨の連続で大水害が発生し、同様の大洪水は、バングラデシュにおいても発生した。
 そして、日本列島においても記録的な猛暑であった。各地で猛暑日の記録更新が相次ぎ、日本の最高気温の記録に頻繁に名前がでてくる館林市のある群馬県では、県下の高崎市、太田市、安中市、沼田市などの一二市を始め、その他町村においても厳しい暑さの連続であった。
 館林市は、四〇日を超える猛暑日になったと言われ、日本列島の猛暑による熱中症の大量発生は、各種統計を確認すると、大災害とも言うべきものである。
 これら猛暑都市を安全・安心な都市にする上で、対処療法的な対応では市民の健康、生命を守ることは困難な状況にある。従って、(1)熱中症への対応はもとより、(2)ヒートアイランド現象への機敏、かつ的確な対応、また、より根本的には(3)気候変動への対応が重要である。これらの三者の一体的、計画的なパッケージ政策が必要である。
 以上の基本的視点を、改めて重視・認識すべきことと同時に、関係府省庁及び関係府省庁連絡検討会が一層強力な暑熱対策を推進することを強く求めるものである。
 以上を踏まえて、質問主意書の本旨に入る。
 二〇一〇年の夏は、日本の平均気温が観測史上最も高い記録となる猛暑であった。とりわけ、八月は、月平均気温の平年差が+二・二五℃という高温となった。記録的な猛暑は、全国的に国民生活と、国民に食料を供給する農業、畜産業、水産業に深刻な影響を及ぼしている。農業においては、農作物の高温障害による品質の低下・収穫量の減少とそれに伴う野菜等の価格の高騰、畜産業においては、暑熱による乳用牛の死亡増及び乳量の低下、水産業においては、サンマ等の漁獲量の大幅な落込み等の影響が生じている。
 このように、地球温暖化が進行する状況の下で、今後も「猛暑」の年が頻出する可能性は高く、猛暑による農業・畜産業・水産業への影響を調査し、その対策を講じていくことは喫緊の課題である。
 そこで、以下質問する。

一 猛暑による農業・畜産業・水産業への影響と農林水産省による技術指導の効果等について

 近年の気温上昇が続く状況の下で、農業・畜産業・水産業にどのような影響が生じているのか。農林水産省では、平成二二年九月一六日に「暑熱による畜産関係被害状況」を取りまとめているが、今年の猛暑の下でどのような被害が発生したのか、その被害状況如何。
 また、こうした状況に対応するために、農林水産省は、被害が最小限にとどまるよう農業者等に対し適切な情報提供、指導等を行っていくことが重要であると考える。農林水産省は、本年八月一一日、九月一日、九月三日、九月七日、九月一六日に、台風の接近・通過に対する技術指導とともに、高温に対する技術指導の徹底についても通知を発出しているが、効果をあげることができたのか、その効果如何。
 さらに、生産面での支援について、農林水産省は、平成一九年六月に「品目別地球温暖化適応策レポート・工程表」を策定し、以降毎年、農業生産現場での高温障害による影響と適応策を取りまとめているが、その成果如何。

二 猛暑による生産現場の被害調査と共済制度の弾力的な運用などによる支援措置について

 生産現場においては、猛暑による収穫量の減少・品質の低下等に伴う収入の減少が懸念される。一方、気象災害や病害虫等による作物収量の減少を補てんするための制度として、農業災害補償法に基づく農業共済制度が存在する。今後、猛暑の年が頻出することも想定される状況下で、政府においては、早急に生産現場の実態を調査し、実情に応じて、同制度の弾力的な運用や農業者等への融資等、農業者等が次年度以後に安心して経営を行えるような支援を行う必要があると考えるが、政府の見解如何。

三 猛暑被害による加工業者等関連業者に対する支援について

 猛暑による収穫量・生産量の減少は、農・漁業者等のみならず、地域の農・畜・水産物加工業者等への影響も生じ、地域経済に与える影響が大きいことから、関連業者への支援も必要と考えるが、政府の見解如何。

四 異常気象に伴う農業共済制度、漁業共済制度における共済掛金率と補償率の検討について

 農業共済制度においては、現在の気候条件の下での事故発生率等に基づき、共済掛金率や補償率が定められている。しかし、地球規模での気候変動に伴い収量低下の発生確率が変わるなど、制度の前提条件が変わってくることから、同制度においても、そうした条件の変化に対応する仕組みを検討していく必要も生じてくると思われるが、政府の見解如何。
 また、漁業においても、漁業共済制度が存在するが、気候変動に伴う同制度への影響についてどう考えるか、政府の見解如何。

五 気候変動の下での農業水利施設の整備の在り方について

 今年の夏は、高温とともに、各地においていわゆるゲリラ豪雨等の集中豪雨が頻発し、国民生活、また、農業等に大きな被害をもたらした。IPCC第四次評価結果報告書に基づく整理結果では、二一世紀末までに我が国において大雨や猛暑日が増えるとも予測されており、今後、洪水・渇水等が生じる危険性は増大していくと思われる。
 こうした状況下においては、農畜産物の熱中症対策の強化が必要であり、農業用水の確保や農地の乾燥防止、畜舎内の散水や換気などのための、かんがい排水施設の重要性が増大している。
 しかし、現在、農業水利施設の老朽化が進行しており、補修・補強や更新等が必要な施設が増加する一方、平成二二年度予算においては農業農村整備事業予算が大幅に削減され、必要な補修等が行えない施設も生じている。気候変動の下での農業水利施設の整備の在り方について、政府の見解如何。

  右質問する。