質問主意書

第176回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四九号

ヒートアイランドにおける「嫌熱」から「活熱」・「利熱」への施策の転換に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年十月二十日

加藤 修一   


       参議院議長 西岡 武夫 殿



   ヒートアイランドにおける「嫌熱」から「活熱」・「利熱」への施策の転換に関する質問主意書

 二〇一〇年の北半球の夏は、極めて異常高温な夏であった。また同時に、南半球の冬は大寒波となり多数の死亡者が発生した。
 ロシアでは、森林火災の延焼面積が、北海道の二倍の面積に相当し、モスクワでは濃いスモッグ(ヘイズ)の影響で市民の健康が危ぶまれた。ロシアに続き、アマゾン、アフリカ、アジアでも異常気象により森林火災が連続して発生するなど、地球規模で極めて深刻な事態にあることを指摘する。とりわけ深刻なことは、泥炭層、炭化成分の多い土壌での燃焼で、その結果、膨大な二酸化炭素が発生した。
 中国大陸においては、三峡ダムが世紀の大放流をしなければならないほどの豪雨の連続で大水害が発生し、同様の大洪水は、バングラデシュにおいても発生した。
 そして、日本列島においても記録的な猛暑であった。各地で猛暑日の記録更新が相次ぎ、日本の最高気温の記録に頻繁に名前がでてくる館林市のある群馬県では、県下の高崎市、太田市、安中市、沼田市などの一二市を始め、その他町村においても厳しい暑さの連続であった。
 館林市は、四〇日を超える猛暑日になったと言われ、日本列島の猛暑による熱中症の大量発生は、各種統計を確認すると、大災害とも言うべきものである。
 これら猛暑都市を安全・安心な都市にする上で、対処療法的な対応では市民の健康、生命を守ることは困難な状況にある。従って、(1)熱中症への対応はもとより、(2)ヒートアイランド現象への機敏、かつ的確な対応、また、より根本的には(3)気候変動への対応が重要である。これらの三者の一体的、計画的なパッケージ政策が必要である。
 以上の基本的視点を、改めて重視・認識すべきことと同時に、関係府省庁及び関係府省庁連絡検討会が一層強力な暑熱対策を推進することを強く求めるものである。
 以上を踏まえて、質問主意書の本旨に入る。
 今後のヒートアイランド対策においては、排熱・廃熱を最大限抑えることが重要であり、さらに、風を資源と考えることで風力発電が活性化したように、排熱・廃熱も資源と捉えるべきである。
 そのためには、太陽熱や「都市熱」を資源と考え、暑熱に嫌悪を感じる「嫌熱」から、熱を活かす「活熱」へと発想を転換することが不可欠である。その上で、「嫌熱」から「活熱」・「利熱」の視点を明確にし、「活熱」のための新しい工夫・仕組みを導入し、「利熱」につなげる具体的な施策の展開が必要であると考える。
 そこで、以下質問する。

一 排熱・廃熱エネルギーの活用による利熱について

 排熱・廃熱、省エネ等の熱エネルギー管理の強化に向けた熱エネルギー利活用状況のチェック改善制度の創設、中小企業における排熱・廃熱対策の推進、熱などの未利用エネルギーのカスケード利用(多段階的利用)の促進、熱源の節減や排熱・廃熱の削減のためのLEDの普及・拡大、蓄熱技術の開発が必要であると考えるが、政府の見解を示されたい。

二 熱電発電の導入と実証実験について

 熱電素子による熱から直接発電する「熱電発電」の発電効率の向上のための研究開発投資を拡大するとともに、事業所等からの排熱・廃熱利用の普及・拡大を目指して、熱電発電による本格的な電気回収実証実験の取組を開始すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

三 再生可能エネルギーの普及・拡大について

 ソーラーシステム、太陽熱温水器、空気集熱器などの普及、地中熱システムや空気熱利用システムの普及・拡大、効率的な太陽熱発電の積極的推進、熱利用推進のための「熱エネルギー版」全量固定価格買い取り制度の創設等を含めた、熱政策を作り上げることについて、政府の見解を示されたい。

四 公共施設や工場等の事業所におけるESCO事業の積極的拡大について

 公明党がエネルギーや電気代の節約のためにつくった「環境配慮契約法」(議員立法)は、公共施設等を対象とするESCO事業(省エネルギーに関する包括的なサービスを提供する事業)の推進に役立っており、LED照明などの普及・拡大に大いに寄与するものであると考える。そこで、以下の点について政府の見解を示されたい。
1 地方公共団体を含めた公共施設等を対象とするESCO事業の、より一層の加速化を図るべきである。
2 ヒートアイランド化を抑制するため、工場等からの大量の排熱・廃熱などの熱漏れを利用したヒートポンプや、熱電発電によるエネルギーを冷暖房等に使用するなどのシステムを構築すべきである。
3 オフセット・クレジット制度(J-VER)と国内クレジット制度を本格運用させるとともに、将来的には、両制度の統合を行うべきである。また、行政が、ESCO事業の積極的拡大を図るために、「環境配慮契約法」の啓蒙を行うとともに、より一層のインセンティブが働くための規制緩和、費用支援などの関係制度の導入についても検討・推進すべきである。

五 地域発の改造EVや小型EV等の開発推進と加速的導入について

 舗装道路は高温に熱せられている上に、ガソリン車やディーゼル車から車外に排気されるエアコンの暖気とともに、エンジン部の排気弁のところで約一〇〇〇℃にもなる高温の排熱が大気中に排出されている。
 その結果生ずる道路沿いのヒートベルト(熱の帯)は、EV(電気自動車)の加速的普及・拡大によって解消すべきであり、新車EVに限らず地域発の改造EV、小型EVへの支援措置を行うべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。